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スミルノワ(右)が初めてW杯表彰台に立ったのは’20季のトレンブラント大会でのこと(3位)。今季の開幕戦でも3位だった
セミファイナルは、ラザレンコとソフィアン・ギャニョン(CAN)、スミルノワとゴロドボという、あまりに意外すぎるカードに。ギャニョンは'19シーズンに8位を2度記録した実績があるが、この2シーズンはW杯欠場が続いていた21歳の選手だ。その想定外対決の勝利者は、ほぼブレない落ち着いたターンを見せたラザレンコとスノルノワ……つまり、ロシアのワンツーフィニッシュが決まったのである。スモールファイナルでギャニョンに勝利したボルドゴが3位。地元勢の連日メダル獲得となった。
若いロシア選手同士のビッグファイナルでは、ラザレンコは2度のエア後にミスがあり、スノルノワが19歳の初優勝を決めた。そのパフォーマンスは、“ワールドチャンピオン”の名に相応しいものだった。ちなみに、ロシアの選手が世界タイトルを獲得するのは、’95シーズンにW杯総合優勝の直後に事故死した“伝説の鉄人”セルゲイ・シュプレツォフ以来、四半世紀ぶりのことになる。
スミルノワは2002年、ラザレンコは2003年、ボルドゴは2005年……表彰台に立ったのは全員が21世紀生まれの選手だった。おそらくこの大会は「あの世界選手権が時代の変わり目だった」とのちのモーグル界で語られることになるだろう。この日のラフォンの失敗はたまたまで、彼女の力が衰えたとは思えないが、北京五輪に向けて女子モーグルは次のフェイズに突入したことだけは間違いない。この3名に2004年生まれの川村あんり、カイ・オーエンズらが“ポストラフォン”を争う展開は、確実に女子モーグルのコンペシーンを面白くする!
絶対王者が2冠。未だ全盛期であることを証明、堀島に突きつけられた厳しい現実
一方、男子DMは、「堀島がキングズベリーを倒し、前日の雪辱を果たせるか?」というのが大きな見どころだった。そして、両者の対決はセミファイナルで実現した。勝てば優勝の可能性が大きく広がる堀島は攻めに攻めた。ところが、ミドルセクションでスピードコントロールができずに大転倒で万事休す。
もう一方のブロックでは、実力者のマット・グラハム(AUS)と、直近のW杯ディアバレー大会DMで5位に入ったブレンダン・ケリー(CAN)が戦い、グラハムが圧倒した。
男子ビッグファイナルは、キングズベリーとグラハム、つまり平昌五輪の金メダリストと銀メダリストの対決となった。このバトルは、ボトムセクションまでは甲乙つけがたい展開であり、世界選手権の決勝らしいハイレベルな内容だった。ところが、ゴール直前でグラハムがまさかの転倒。あと一歩のところで栄冠を逃してしまう。
一方、スモールファイナルでは堀島が勝利し3位を手にした。堀島はレース後に、「昨日の成績だけでは(日本に)帰れないという気持ちがあった。DMの3位になったことで、お土産ができたのかなと思っている」といった旨の発言をしている。それは、彼が重いプレッシャーのなかで戦っていることを端的に表しているといえるだろう。
今回の世界選手権の結果は、堀島が勝たなければならない相手の怪物ぶりを改めて実感させられるものだった。W杯総合優勝、五輪金メダルという目標達成に向けて、堀島の過酷な戦いは続いていく……。
なお3月14日に同じくアルマティで開催のW杯最終戦の結果を踏まえた、今シーズンの総括は次回の当コラムでお届けしたい。
完成度を上げた1440で勝負をかける構想だった堀島は、従来よりも短い板で世界選手権に挑んでいた。DMの結果で希望を五輪につないだ
●世界選手権女子デュアルモーグルTOP3
1 アナススタシア・スミルノワ(RSF)
2 ヴィクトリア・ラザレンコ(RSF)
3 アナスタシヤ・ゴロドボ(KAZ)
●世界選手権男子デュアルモーグルTOP3
1 ミカエル・キングズベリー(CAN)
2 マット・グラハム(AUS)
3 堀島行真(JPN)
文:Bravoski(ブラボースキー)
STEEP
スキー・スノーボードの本質を追いかけるWEBメディア。90年代からフリースタイルスキーを追う編集部による、モーグルW杯の見どころを紹介。サイトでは様々な情報を更新中。https://steep.jp/
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