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カルチュラル・スタディーズとは | 町田樹のスポーツアカデミア 【Dialogue:研究者、スポーツを斬る】 ~ポスト・スポーツの先を見据えて~
フィギュアスケートレポート by J SPORTS 編集部カルチュラル・スタディーズとは
M:先生は社会学の中でも、とりわけカルチュラル・スタディーズというところに軸足を置いて研究をされています。そのカルチュラル・スタディーズはどういう学問なんでしょうか?
Y:この学問はすごく面白くて、例えばイギリスって大英帝国で世界中に植民地があって、戦後、植民地が独立していく。植民地から独立していった国や地域の人たちが、今度はイギリスに移民をして、そこで職を得たり、新しく生活をしたりしていくということがはじまっていくのですが、そうすると、イギリス国内の中に多くのカリブ海からの移民であるとか、インドからの移民たちが来て、その二世などが勉強をしてイギリスで大学に通う。そこで社会学や文学、人文社会科学の勉強をして学者になっていく人たちも出てきています。そうすると、今まで社会学や人文社会科学の中で言われていた常識、理論、ものの考え方、そういうものが、実は「白人の男性たちの当たり前が反映されているんじゃないか」と言いはじめるわけですね。移民たちからするとその理論は「私たちにとっては当たり前じゃない」。カルチュラル・スタディーズは、黒人たちの生活、あるいは白人たちが作り上げた世界の常識にうまく入れない人たちにとっての社会みたいなものを描き出していくことにすごく長けた学問で、そこにさらに女性であるとかセクシャルマイノリティであるとか、そういった社会の主流から少し排除されていった人たちが、カルチュラル・スタディーズに集合していって、非常に多様な視線から社会を眺めていく。そういう学問の運動としてカルチュラル・スタディーズが出てきたわけですね。
M:なるほど。まさにスポーツの来歴からしてもカルチュラル・スタディーズとの相性は良かったのかもしれないですね。19世紀半ばにイギリスを発端として近代スポーツがどんどん流通して、近代スポーツは統一的なルールと統一的な環境で、世界中どんな人たちも同じ状況で身体活動をするというものですけれども、ある意味、西洋の文化に他の国の人たちも合わせて競技をしていく。その中でいろいろな摩擦や、その文化に適合できない部分、そういう問題もたくさん生じやすいというのがスポーツだと思うのですけれども、そもそもそこに気づかれて早い段階でカルチュラル・スタディーズの観点からスポーツを切ろうと考えておられたんですよね。
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