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「自転車に乗り始めてからそこそこ経つのですが、恥ずかしながらダンシングが上手くできません…。時折頑張って腰を浮かせるものの、疲れるだけの変な立ち漕ぎをいつも繰り返しています。
シッティングならゼーハーで登り切れるいつもの峠も、腰を上げると、ゼーハーが早く始まり→途中でゼーゼーハーハーに変わって→堪え切れなくなって腰を下ろし→結局ゼーゼーハーハーのまま到着といった具合です。
タイムに関してはあまり変わらないか遅くなっているくらいで、変な立ち漕ぎをして疲れるだけの人になってしまっています(なので、ダンシングは疲れる、という思いが強く、"休むダンシング"という言葉を聞いても全くピンときませんorz)。
レースでは、局面に応じて腰を浮かせ、スイッチが切り替わったかのように攻撃に移る選手たちのカッコいい姿を多く観てきました。
メリハリをつけたカッコいいダンシングで坂をグイグイ登りたいのですが…。ダンシングでの体の動かし方を覚えるのに、良い意識付けや練習方法等があれば教えて頂けないでしょうか?」
(男性 会社員)
ダンシングについては、「がんばって腰を上げる→疲れてしまう→シッティングに戻る→がんばって腰を上げる……」という負のスパイラルに陥っている方は少なくなさそうです。しかし、言うまでもなく選手たちは疲れるためにダンシングをしているわけではないですよね。
ダンシングには大きく分けて、加速するための「攻めのダンシング」と、質問者さんがお知りになりたい「休むダンシング」の二つがあります。現役時代の僕も、シッティングからダンシングに移行すると、同じペースを維持していても、少なくとも数十秒間くらいは心拍数を落とすこともできました。つまり、ダンシングはやり方次第では休むことができるんです。
シッティングのほうが運動効率は高いものの、同じ姿勢で同じ筋肉を使い続けるよりも、定期的にダンシングを取り入れて走り方を変えることで、使う筋肉を分散させて一部の筋肉を休ませることができます。また、リラックス効果も期待でき、さらに高いレベルでは乳酸クリアランスの促進も狙えるようになります。
ところが、20年以上にわたってロードバイクから離れていた僕が50代になって再び乗り始めたところ、ロードバイクに乗ること自体はスムーズに順応できたのですが、ダンシングはなかなか昔の感覚を取り戻せませんでした。難易度が高いということです。なぜでしょうか。それは、ダンシングを身に着けるためには「出力」と「バランス」の両方が必要だからです。
まず出力。インナー×ローでダンシングすると、スカスカとペダルが回ってしまい、上手くいかないはずです。それは、ダンシングはシッティングとは違い、自分の体重を利用しながら、ペダルを踏むトルクの反発を利用してバランスとリズムをとる行為だからです。だから、そもそも、ある程度の出力(踏力)を発揮できるフィジカルが必要な走り方ともいえます。
長い階段を上るとき、太ももに十分な筋力があれば、一段飛ばしの「低ケイデンス」で上ったほうが楽な感覚がないでしょうか? 一方、同じ速度でも、一段飛ばしをせずにすべての段をステップしていくと、かえって疲れてしまうことがあります。これと同じ感覚です。
次に、バランス。ダンシングは、サドルが支点となるシッティングとは大きく異なり、両手・両足の四点だけで身体を支える難しい行為です。高度なバランス感覚とリズムが求められます。
話を戻すと、なかなかダンシングの感覚を取り戻せなかった復帰後の僕も、乗り続けてフィジカルがある程度強くなってくると、ダンシングの感覚も回復してきました。やはり「踏める力」が求められるんですね。さらにそこに、複雑な身体の使い方を思い出す時間も必要でした。ただ、今も現役のころと同レベルとはいきません。かつてとはフレームのジオメトリや剛性が大きく変わったのもあるかもしれませんね。あとは、今風の幅の狭いハンドル(さらに、やはり今風にブラケットを内側へ絞っています)と短いクランクの組み合わせも影響している可能性はあります。
さて、ダンシングのためには「出力≒フィジカル」とバランスの両方が必要なことがわかりましたが、フィジカルは一朝一夕で身に付くものではありませんから、もう少し短期的に改善をしたい、という方も多いでしょう。その場合は、「バランス」感覚のほうを集中的に磨くことも可能です。
ダンシングでのバランス感覚をさらに細分化すると、重心の位置とペダリングのリズム、そしてこれらに見合った適切なギア選択がポイントになりそうです。
ダンシングをするシチュエーションでは、普通は勾配がありますから、重心の位置が変化します。それを敏感に察知し、うまくBBの真上に重心を置き続けることが、ダンシングの大切なポイントの一つです。
そして、ハンドルは軽く握る感覚に留めて、体重を、脚を通してペダルに真上からすとんとかけるイメージでバイクを前に進めます。重力に仕事をさせるわけです。ハンドルは、無理に押したり引いたりするのではなく、自然に左右に振られる感じでしょうか。
これら一連の動作を、リズミカルに、そして意識しなくても自然にできるようにしてください。僕の場合、シッティング時のケイデンスが90〜100rpmであれば、休むためのダンシングに切り替えるると70〜80rpm程度まで下がります。つまり、ギアを1〜2枚重くするイメージです。ただし、フィジカルが不足していると、「ギア負け」や「体重負け」してしまい、この段階でつまずいてしまう可能性があります。
まずは、疲れずに1〜3分程度ダンシングを継続できるようになることを目標にするとよいでしょう。ダンシングはシッティングの延長線上にはなく、まったく別の運動と認識してください。
普段から「楽だから」という理由でシッティングばかりしていては、ダンシングは上達しません。極端な例えをすれば、普段の練習ではベンチプレスばかりしている人が、大会でいきなりスクワットに挑戦するようなものです。ダンシングには、ダンシングならではの筋力とテクニック、そしてバランス感覚が必要です。ダンシングが苦手な人々には、多かれ少なかれ「やらず嫌い」という面があるかもしれません。
無理をせず、時間をかけて、意識的に練習へ取り入れてみてください。
ダンシングにはダンシングならではの筋力、テクニック、バランス感覚が求められる
文:栗村 修・佐藤 喬
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栗村 修
中学生のときにTVで観たツール・ド・フランスに魅せられロードレースの世界へ。 17歳で高校を中退し本場フランスへロードレース留学。その後ヨーロッパのプロチームと契約するなど29歳で現役を引退するまで内外で活躍した。 引退後は国内プロチームの監督を務める一方でJ SPORTSサイクルロードレース解説者としても精力的に活動。
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