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サイクルロードレース コラム 2026年6月17日

【輪生相談】落車した際の身体や自転車のダメージが大きすぎて、何のためにやってるんだろうと思えてきます

輪生相談 by 栗村 修
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先日落車をしてしまい肋骨を骨折しました。幸い入院や手術も必要なく自然治癒で治すという診断でした。2年前にも落車をして左手を骨折し、その時は手術を要する骨折でした。自転車は自分でコインチェックで調べてみたところ、どうもフォーク内部にクラックが発生してるようで、この状態だと危なくて乗る気になれません。
高価なロードバイクを簡単に壊れたからと言ってすぐに買い替えってわけにもいかないです。
健康のため、ストレス発散のためにサイクリングをしていますが、落車した際の身体や自転車のダメージが大きすぎて、何のためにやってるんだろうと思えてきます。栗村さんなら、どうお考えかを聞かせていただけますか? よろしくお願いします。

(男性 会社員)

 

質問者さんは、とても健全な感覚をお持ちだと思います。「何のためにやっているのだろう」と感じるのは、ごく自然なことです。むしろ、自転車を趣味として継続するうえでのケガのリスクや高額な支出に問題意識を持たないほうが、長く続けるなかでどこかの段階で行き詰まる可能性が高いとも言えるでしょう。

僕が現役引退間際のころは、とにかく、ロードバイクに乗るのが怖くなっていました。練習でもレースでも、毎日のように「今日は転ばないかな」「無事に帰ってこられますように」と考えていたことを覚えています。

あれから20年以上の歳月が経ち、ホビーレーサーとして復帰して1年半が経過しましたが、やはり最近も、外で自転車に乗ると同じことを考えてしまいます。しかし、これらは人として正常な反応であり、むしろこういった恐怖感を持っていたほうが良いとも感じています。

日々、ロードバイク関連の情報に触れ続けていると、プロ・アマ競技者、趣味のサイクリスト問わず、事故や落車、ケガの情報が嫌でも目に入ってきます。防御力がほとんどない薄いウェアと軽いヘルメットだけで、細いタイヤの二輪車に乗ってオートバイ並みのスピードで走る、場合によってはレースをするという行為は、よくよく考えると「普通」ではありませんね。

もちろん、「普通でない」ことは必ずしも悪いことではありません。ただ、生命や身体の危険と楽しさを天秤にかけるという、重大な決断をしていることには自覚的になったほうがいいでしょう。

その上で申し上げると、まず、複数回の骨折を経験されている質問者さんは、対策が必要でしょう。人には向き・不向きがあり、プロ選手であっても、落車が少ない選手もいれば、多い選手もいます。

その上でやれることは大きく分けて2つ。転ばないようにすることと、万が一転んでもケガをしないようにすることです。

前者には、メンタル面とテクニック面の二つがあります。

まずメンタル面で重要なのは、常に慎重であることです。言い換えれば、「正しく怖がれる」ことです。

実は、公道を走るときもレースを走るときも、無理をせず安全を最優先にしていれば、多くの落車は防げます。UCIが実施した落車に関する調査でも、落車事故の大半は「選手自身の不注意」に起因するという結果が示されています。油断や脇見、過信、無理な走りを避けるだけでも、転倒リスクは大きく低下するはずです。実際、何十年もスポーツバイクに乗り続けながら、大きなケガを経験しないまま過ごしている人もたくさんいます。

次にテクニック面です。

まずは基本的な操作技術を身につけるために、スクールへ参加してみることをおすすめします。「ロードバイク スクール」で検索すれば、多くの選択肢が見つかるはずです。また、余裕があればオフロード系の種目に挑戦してみるのもよいでしょう。オフロードでは転倒を経験する機会が多いため、自然と受け身の技術が身につくという利点があります。加えて、転倒の多くは低速域で発生し、路面も土や芝生であることが多いため、重大なケガにつながるリスクは比較的低くなります。もっとも、転び方によっては骨折などのケガを負う可能性は十分にあります。そのため、オフロード系に取り組む場合も、最初は指導者のもとで基本を学ぶことをおすすめします。こちらも「MTB スクール」などで検索すると見つけやすいでしょう。

そして、後者のケガ対策として有効なのが、プロテクターの着用です。実はロードバイク向けのプロテクターは徐々に開発が進んでいるものの、市販品はまだほとんどありません。ただし、オートバイ用やマウンテンバイク用のプロテクターの中には、ロードバイクでも流用できる製品がいくつかあります。詳しくは、以前の輪生相談でも取り上げたサイト「ロードレースとプロテクター」を参考にしてみてください。僕自身も、先日参加した富士ヒルでは、下山時にオートバイ用品メーカーのコミネ製プロテクターを着用して下りました。

また、機材面については、カーボンフレームの取り扱いに不安を感じるのであれば、アルミフレームという選択肢もあります。有名メーカーの高性能なアルミロードフレーム+105仕様の完成車でも、20万円台で購入することも可能です(フロントフォークはカーボン製であることが多いですね)。性能面も十分以上で、正直、僕が現役時代に乗っていたハイエンドロードバイクと比べても遜色ないレベルと言ってよいでしょう。

いずれにしても、質問者さんの違和感は正常です。これは人の命に関わる問題もあるので、僕としても全力で引き止めるつもりはありません。安全面に不安があり、納得して続けられないのであれば、一度ロードバイクから距離を置いてみるのも立派な選択だと思います。そして、安全に関する技術や意識がもう少し進歩したら、戻ってきてくださいね。

防御力がほとんどない装備でロードバイクを走らせるという行為には恐怖感を持っていたほうが良い

文:栗村 修・佐藤 喬

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栗村 修

中学生のときにTVで観たツール・ド・フランスに魅せられロードレースの世界へ。 17歳で高校を中退し本場フランスへロードレース留学。その後ヨーロッパのプロチームと契約するなど29歳で現役を引退するまで内外で活躍した。 引退後は国内プロチームの監督を務める一方でJ SPORTSサイクルロードレース解説者としても精力的に活動。

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