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サイクルロードレース コラム 2026年6月3日

【輪生相談】国内でのプロとアマに明確な力量差がない現実を、栗村さんはどうお考えですか?

輪生相談 by 栗村 修
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質問はプロとアマチュアの差です。国内ロードでは、プロとアマが混走しており、アマのほうが優秀な成績を残すことがよくあります。底辺プロとトップアマでは力量がほとんど拮抗しており、多くの場合、底辺プロよりもトップアマのほうが強豪です。 全日本TTではフルタイムワーカーがプロを負かして優勝することがありました。
私もずっとレースを走っていますが、「競技専念でこのレベルか」「機材供給を受けてこの走りか」と思うことがあります。「プロはアシストをしているから」と言いますが、実際にレースで一緒に走ってみると、それは言い訳にすぎず、明らかな「力不足」です。「プロへの配慮や敬意」をおもんぱかって言わないだけだと思っています。プロ選手への神格化は分からないでもないですが、現実の国内ロードレースは「フルタイムワーカーでも全日本チャンプを狙える」というレベルです。
プロとアマに明確な力量差がない現実を、栗村さんはどうお考えですか? プロチームに属しているだけで実際は職業競技者ではなく、なんらかの仕事をしながら走らなければならない環境が問題だとお考えですか?

(男性 その他)

 

プロ・アマの定義は「業界」によってさまざまですが、一般論としては、「プロライセンス保有、もしくは、プロチームとの契約書など、明らかにプロと明記された資格を持っている」「競技で生計を立てている、もしくは対価を受け取っている」「競技の指導を行っている(レッスンプロなど)」などであれば、プロを名乗っても違和感がないでしょう。

もう一つ、これらとは別に非常にシンプルな定義を記しておくと、「アマチュアでトップクラスの成績を残してからプロへ昇格した」という、ある意味で当たり前の構造です。これは重要なポイントなので、念頭におきながら読んでいってください。

さて、世界のロードレースでのプロの定義ですが、ご存じのように、大きく4つのチームカテゴリーが存在しています。それは、上から
①UCIワールドチーム(明らかにプロ)
②UCIプロチーム(明らかにプロ)
③UCIコンチネンタルチーム(プロを名乗って良いことにはなっているがグレー)
④クラブチーム(明らかにアマチュア)
というものです。

一昔前までは①と②のチームに所属している選手が「プロ選手」と定義されていましたが、近年は③のコンチネンタルチームでもプロを名乗るチームは増えています。

つまり、ロードレースでは、選手の実力やリザルトなどでプロかどうかを定義しているのではなくて、所属しているチームによって判別しているのです。ですから、ロードレースでのリザルトがなくても、たとえばUAEが契約してくれれば、その選手はその瞬間からプロ選手になります。

実際、①と②のチームを見渡すと、ごく少数ではありますが、プロらしいリザルトを持っていない選手はいます。しかし、「マーケティング」や「スポンサー関連」など、チーム側の事情がある程度は透けて見える場合がほとんどです。

さて、日本では、選手の人数に対してコンチネンタルチームの数が多い、という特徴があります。さらに、一定レベルに達した若い選手が少ないのも事実です。ところが、コンチネンタルチームとして活動するためには、最低10名以上の選手登録が必要です。そのため、実力が十分に伴っていない若手選手を登録するケースもあります。

また、先に書いたように、海外では「勝つことで上のカテゴリーへ進む」という構造が明確ですが、日本ではそのヒエラルキーが曖昧です。たとえば、インカレで勝つこととJBCFで勝つことでは、どちらにより価値や重みがあるのでしょうか。

要するに、日本のロードレース界は、競技としての厚みや成熟度が十分ではなく、評価基準も明確ではないため、本来あるべきヒエラルキー構造を築けていないのです。その結果、実力が十分に伴わない「プロ」が生まれてしまっています。

一方、日本のホビーレーサーは、海外のホビーレーサーと比べてもそん色ない実力を備えています。特に、ヒルクライムレースのレベルの高さ(層の厚さ)はなかなかですね。日本の条件に合っているからでしょう。

ただ、レース数が多く、チームプレイがあり、一年中合宿や遠征を繰り返し、走りたくない時もケガをしていてもレースを走らなければいけない専業選手は、やってみればわかりますが、アマチュアとの間には、見えない高い壁があります。プロの苦しさは、単純なリザルトだけでは見えてこない部分が多々あります。

実際、これまでにも優秀な社会人レーサーが専業選手に挑戦したものの、思うような結果を残せなかった例を数多く見てきました。その後、再び社会人レーサーに戻ったことで輝きを取り戻したケースもあります。

質問者さんのご指摘はまったくその通りなのですが、「仕事をしているから不利」「フルタイムで競技に打ち込めば当然強くなる」というほど単純な話ではないのも事実です。

また、機材についても、チーム支給品より、自分で選んで購入した機材のほうが楽しく、結果として速く走れるというジレンマもあります。こうした感覚は、専業選手を経験してみないと、なかなか理解しにくい部分かもしれません。

そんな中で、「国内プロ」や「元プロ」といった言葉が、SNS上で独り歩きしている印象があります。おそらく当事者たちは、SNSで求められるインパクトを意識し、深く定義を考えずに「プロ」を名乗っているのだと思うのですが、そのことが、質問者さんのように違和感を抱く人を増やしている側面もあるのでしょう。

結局のところ、誰かが意図的に嘘をついているわけではなく、構造の未熟さが、こうした混乱を生んでいることが主な原因だと思います。ちなみに僕としては、「プロ」の定義については、UCIプロチーム以上に所属している(いた)選手を、「プロ・元プロ」と表現するのが、最も実態に即していると感じています。

海外では「勝つことで上のカテゴリーへ進む」というヒエラルキー構造が明確だが、日本ではその構造を築けていない

文:栗村 修・佐藤 喬

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栗村 修

中学生のときにTVで観たツール・ド・フランスに魅せられロードレースの世界へ。 17歳で高校を中退し本場フランスへロードレース留学。その後ヨーロッパのプロチームと契約するなど29歳で現役を引退するまで内外で活躍した。 引退後は国内プロチームの監督を務める一方でJ SPORTSサイクルロードレース解説者としても精力的に活動。

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