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サイクルロードレース コラム 2026年7月26日

最難関はカラパス逆転勝利。首位ポガチャルがデルトロのパリ表彰台を完璧アシスト|ツール・ド・フランス2026 レースレポート:第20ステージ

サイクルロードレースレポート by 山口 和幸
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ツール・ド・フランス

山岳賞を決めたカラパスがクイーンステージを制す

2026ツール・ド・フランスの第20ステージがル・ブール・ドワザン〜アルプ・デュエズ間の170.9kmで行われ、EFエデュケーション・イージーポストリチャル・カラパス(エクアドル)が独走勝利。総合1位のタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ・XRG)はアシスト役のイサーク・デルトロ(メキシコ)を引き連れて1分05秒遅れでゴールし、自身の5度目の総合優勝とともにデルトロの総合3位、ヤングライダー賞の獲得をほぼ確実にした。

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今大会のクイーンステージ、2日連続のアルプ・デュエズ

ツール・ド・フランス最大の山岳ステージは、累積標高差5600mを誇り、今回初めて大会最終日の前日に設定された。「鉄の十字架」という意味のラ・クロワ・ド・フェール峠を登った後、選手たちは屹立した山容のテレグラフ峠、そしてツール・ド・フランスの今大会最高地点であるガリビエ峠に挑む。その後、 2013年に下り坂としてのみ使用されたサレンヌ峠を経由して、2日連続でアルプ・デュエズにゴールする。

サレンヌ峠がカテゴリー超級の山岳ポイントとなっているので、この日のアルプ・デュエズゴールは山岳ポイントではない。終盤のコースはとてもユニークなもので、いつものアルプ・デュエズ最終左コーナーの隣に位置するロンポワン(環状交差点)に突入した後、アルプ・デュエズがゴールとなったときの関係車両下山路を使って残り4km地点まで下り、そこからは通常通りのルートであの有名なゴール地点を目指す。

前日は正規のルートでアルプ・デュエズに上り、ライバル選手に差をつけて今大会5勝目、大会通算26勝目を飾ったポガチャルはそのゴール後、「今日は私がステージ優勝を狙う日だった。明日はツール・ド・フランスで最も厳しい日。自分たちの計画、自分たちのペースで進みたい。団結して、チームとしてベストを尽くすだけだ。デルトロがこの美しい純白ジャージと表彰台を目指して戦えるように、全力を尽くしたい」とコメントしている。

ツール・ド・フランス

4つの巨大峠が待ち受ける

総合優勝争いはポガチャルが大きくリードしているが、山岳賞争いとヤングライダー賞争いはこの日が最大のポイントだ。山岳賞1位はカラパスが91点、2位ポガチャルが90点、3位ヴァランタン・パレパントル(フランス、スーダル・クイックステップ)が84点。ヤングライダー賞は1位デルトロ、24秒遅れでポール・セクサス(フランス、デカトロン・CMA CGM チーム)が逆転をねらう。デルトロとセクサスは総合成績でも3位と4位で、シャンゼリゼの表彰台に上るための激しい戦いを繰り広げるはずだ。

山岳賞、ポイント賞の大勢が徐々に判明

アルプ・デュエズ2日目は伝説の21カ所のヘアピンカーブを選手たちが走ることはないものの、第19ステージよりもさらに過酷だ。スタートの合図となる旗が振られるとすぐに、アタッカーが飛び出した。レッドブル・ボーラ・ハンスグローエのジャイ・ヒンドレー(オーストラリア)、チーム ヴィスマ・リースアバイクセップ・クス(米国)、カラパス、パレパントル、リドル・トレックフアン・アユソ(スペイン)ら14人が第1集団を形成。

山岳に入るとカラパスがアタックを仕掛け、パレパントルを制して山岳ポイントを獲得し、山岳賞ジャージの座を確固たるものにする。一方、ポイント賞トップのマッズ・ピーダスン(デンマーク、リドル・トレック)がメイン集団からアタックして下り坂で合流。サン=ジュリアン=モン=ドニ(66.5km地点)の中間スプリントポイントで25点を獲得し、マイヨ・ヴェールをほぼ手中に収める。

ツール・ド・フランス

全てを絞り出す素晴らしいたたかいが繰り広げられた

テレグラフ峠(カテゴリー1級、山頂は87.6km地点)とガリビエ峠(カテゴリー超級、110.5km地点)でカラパスは両方の山頂を制覇し、山岳賞をほぼ確実に手にする。今大会のツール・ド・フランス最高峰、2642mのガリビエ峠を越えた時点で、カラパスについていけたのはクス、ヒンドレー、アユソの4人だけだった。

後方ではポガチャルがペースを上げ、サレンヌ峠(156.5km地点)の麓で先頭集団から3分半遅れまで迫り、人数を減らした総合順位争いの集団を率いた。先頭ではクスは山頂から3km手前でカラパスとヒンドレーを引き離す。カラパスは山頂ではクスから18秒遅れ。ところがクスは下り坂で2度転倒。カラパスは残り6km地点でクスを追い抜く。

ツール・ド・フランス

ポガチャルはデルトロのペースに合わせて走行

メイン集団ではデルトロが加速し、純白ジャージと総合3位の最大のライバルであるセクサスを引き離す。残り3kmで総合2位のレムコ・エヴェネプール(ベルギー、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ)がアタック。ポガチャルはデルトロのペースに合わせてこれを追う。ゴールでは、カラパスがエヴェネプールに26秒差をつけてグランツール通算10勝目(ツール・ド・フランス3勝、ブエルタ・ア・エスパーニャ3勝、ジロ・デ・イタリア4勝)を挙げ、クスは31秒遅れの3位だった。

「自分自身でも何が起こっているのか信じられない瞬間があった。この日のステージ開始時は山岳賞ジャージのことしか考えていなかった。そして、最初の2つの峠を越えたところで、ステージ優勝を狙い始めた。本当に大変だった。相手はグランツール総合優勝経験のあるクスとヒンドレーの2人。特にセップは手強い相手。ずっと自分の限界まで追い込んでいた」とカラパス。

「下り坂では何が起こったのか分からなかった。ただひたすら走り続け、気づけば最後の登り坂に差し掛かっていた。信じられないほど厳しい登りで、エヴェネプールとクスがすぐ後ろに迫っているのは分かっていたので、勝利を確実にするためには相当な苦闘を強いられた。ここで、しかも特別なジャージを着て優勝できたのは本当に素晴らしいこと。ツール・ド・フランスでこれほど懸命に戦ってきたのだから、この勝利は当然だと思う」

夢のようなツール・ド・フランスだったという。開幕時に総合優勝争いに自分はは絡めないことは分かっていた。ただし自分が何をしたいのかは明確で、今回の2つのステージ優勝と山岳賞ジャージ獲得をターゲットにした。

「エクアドルの観客の応援のおかげで、このツール・ド・フランスは本当に素晴らしいものになった。今頃、エクアドルは歓喜に沸いていると思う」(カラパス)

デルトロのために走れたことは光栄だった

そしてポガチャルとデルトロはカラパスから1分05秒遅れでゴールラインを通過した。ポガチャルは、史上最多タイである5度目のツール・ド・フランス総合優勝をほぼ確実にした。そしてデルトロも、エヴェネプールに次ぐ総合3位で表彰台に上がる可能性が濃厚になった。

ツール・ド・フランス

喜びを分かち合いながらフィニッシュラインを超えるデルトロとポガチャル

「デルトロの表彰台獲得を助けたことが話題になるだろうが、そもそも私がこのマイヨ・ジョーヌを獲得できたのは彼のおかげだ。レースの最後の1時間半、デルトロのために走れたことは光栄だった。私は喜んで走ったし、他人のために働くことがどれほど大変なことかを実感した。彼と一緒にゴールラインを越えられたことは忘れられない思い出だ」とポガチャル。

「残すは最後のステージだけ。明日のコンディションを見て判断して、無理はしない。ワウト・ファンアールトがいないからシャンゼリゼで勝つためのライバルが一人減った。大きなリスクを負わずに済むなら、明日の勝利を目指したい」

そしてデルトロは、「今日ほど光栄に感じる日はない」とコメントした。
「信じられないような経験だった。プレッシャーは特権で、今日はそれを本当に感じた。自分が弱っていることを周囲に悟られないように、大丈夫だと言ってごまかそうとした。この白いジャージを着てパリに行けるのは素晴らしいことだ。これからはただこの瞬間を楽しみたい。苦しみはもう終わった。明日が最終日。流れに身を任せるだけだ」

ポイント賞を堅持したピーダスンは「私のキャリアにおける目標の一つが達成された」と喜んだ。
「素晴らしいツアーだった。今日で全てを終え、明日は残りのレースを終えるだけだなんて、本当に信じられない気持ちだ。もう不運とかパンクとか、そういうことを考える必要はない。今はパリでの勝利だけを目標にしている」

全23日間の日程で開催されるツール・ド・フランスもいよいよ26日が最終日。第21ステージ(距離132.5km)はトワリーをスタートし、パリ・シャンゼリゼにゴールする。2024パリ五輪と2025年の最終ステージと同様に、モンマルトルの丘に上る特別サーキットが設定されたが、今回はエトワール凱旋門から特別サーキットが離脱する新しいコースだ。

レースは41km地点でパリに入城。2024年までのように4周回はシャンゼリゼを往復する。1周回は6.8kmだが1周目だけわずかに距離が長い。5周目からはエトワール凱旋門からモンマルトルの丘を巡るおよそ10km(5周目だけわずかに距離が長い)のロングサーキットへ。これを3周回していつものゴールラインでフィナーレを迎える。

ツール・ド・フランス

山岳賞ジャージで走るカラパス

2025年よりもモンマルトルの丘からゴールまでの距離が15kmと長くなったので、スプリンターが勝利する可能性も残る。気象状況や路面状況により、2025年と同様にパリサーキットの部分が総合成績に反映されないケースも想定され、そういった意味でも最終日前日の総合成績が変動する可能性は極めて少ない。

文:山口和幸

※コースの説明は変更前のもの
山火事の影響で治安部隊をそちらに優先させるため、コースが133 kmから89 kmへ短縮になりました。 パリのフィニッシュラインよりスタート、シャンゼリゼ周回コースは2周回多く走ります。 スタート時間は日本時間の深夜0:50予定、放送時間が変更になる可能性があります。

山口 和幸

ツール・ド・フランス取材歴30年超のスポーツジャーナリスト。自転車をはじめ、卓球・陸上・ボート競技などを追い、東京中日スポーツ、ダイヤモンド・オンライン、LINEニュース、Pressportsなどで執筆。日本国内で行われる自転車の国際大会では広報を歴任。著書に『シマノ~世界を制した自転車パーツ~堺の町工場が世界標準となるまで』(光文社)、講談社現代新書『ツール・ド・フランス』。青山学院大学文学部フランス文学科卒。

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