人気ランキング
コラム一覧
栗村さんこんにちはいつもユニークな解説で楽しくレースを観させていただいてます。
WTレースを見ていて疑問に思ったことがあります。レース中、逃げを追いかけたり、集団の先頭で風を受け続けたり、明らかに一番きつい役割を担っている選手がいます。ただ、そうした選手がどれだけ働いても、チームとして結果が出ないレースも少なくありません。観ている側としては「あれだけ頑張ったのに、このレースは失敗なのか?」と感じてしまいます。
チームの中では、こうした“勝ちには直接つながらなかった仕事”はどのように評価されているのでしょうか? また、「結果が出なくても評価される仕事」「結果が出ても評価が上がらない仕事」があるとしたら、その違いも知りたいです。
(男性 会社員)
アシスト選手の仕事は、中継映像で確認したり、チームメイトから話を聞いたり、あるいは他チームの選手のコメントやパワーデータなどから評価できます。いっぽうで、そういった方法に限界があるのも事実です。評価には、どうしても主観的な要素がつきまといますしね。
最終局面までエースの近くに居続けたのに、エースから「役立たず」と言われてしまう選手もいれば、テレビ画面にはほぼ映らなかったのに、チームメイトから高い評価を受ける選手もいます。
ただ、大事なのは、映像だけでは判断できない点です。アシスト選手が長時間、プロトンの先頭を引くのは、わかりやすく評価できますよね。これはこれで極めて大事な仕事ですが、実際には強度・スキルの双方で、「アシスト業務」の中では難易度が低い作業の一つでもあります。いっぽうで、「カメラに映らない」仕事ができるのが真に優秀なアシスト、という考え方もできます。たとえば、集団内で適切な位置にポジショニングし、厳しい勝負所でエースを良い場所に引っ張り上げる仕事などです。
ただし、アシスト選手も人間であり、自分の成績を狙ったり、完走してポイントを獲得したいという思いがあったりもするので、つい体力を温存しがちです。映像的には「仕事してるよ」とアピールしていても、実は足を残して走っている……というケースも、なかにはあります。
そうした走りは、カメラ越しには把握しづらいものです。エースに評価される真の自己犠牲は、実際に同じ集団で走らなければ見えてこないものです。
質問者さんが気にされている、「勝ちにつながったかどうか」は、アシストの評価という観点では、実はあまり重要ではありません。勝っても負けても、特定のアシスト行為への評価は変わらないんです。それよりも、ちゃんとエースのために自分を犠牲にしているかが重要です。エースが負けても、ちゃんと仕事をこなせていれば評価されますし、その逆もしかりです。
もちろん、アシスト選手の収入源の一つである賞金については、エースが好成績を収めなければ“分け前”も増えません。この点は、アシスト選手の評価というよりも、むしろアシスト選手側がエースに不満を持つ要因となりえます。まあ、「勝てば官軍、負ければ賊軍」という言葉があるように、結果さえ出ていれば細かいことは問われにくい傾向は、どの世界にも見られますけれどね。
アシスト選手という存在は、いわば「従業員」なんです。「上」(監督やエース)からの指示に従って、言われた仕事ができれば、結果はともかく、評価されます。しかし、エースは違います。エースはいわば高給を得ている幹部ですから、結果がすべてです。どれだけ頑張っても、勝てなければそれまでです。しかもエースの活躍はアシスト選手の雇用状況や年収も左右しますから、プレッシャーはハンパありません。
アシストが評価される難易度と、エースが評価される難易度とでは、比較にならないくらい後者が上です。エースを担える強さがありつつも、アシストにとどまる選手が少なくないのも、そのあたりが理由でしょう。
なお、個人的には、「アシストスコア」のようにアシスト能力の定量化・可視化が進めば、ロードレースの楽しみ方の幅はさらに広がるのではないかと思っています。
エースの活躍はアシスト選手の雇用状況をも左右する故、プレッシャーはハンパではない
文:栗村 修・佐藤 喬
※栗村さんにあなたの自転車に関する悩みを相談してみませんか?
ご質問の投稿はこちら
栗村 修
中学生のときにTVで観たツール・ド・フランスに魅せられロードレースの世界へ。 17歳で高校を中退し本場フランスへロードレース留学。その後ヨーロッパのプロチームと契約するなど29歳で現役を引退するまで内外で活躍した。 引退後は国内プロチームの監督を務める一方でJ SPORTSサイクルロードレース解説者としても精力的に活動。
あわせて読みたい
J SPORTS IDを登録すれば、
すべての記事が読み放題
ジャンル一覧
人気ランキング(オンデマンド番組)
-
4月12日 午後5:45〜
-
4月5日 午後4:55〜
-
4月13日 午後3:00〜
-
130年の歴史、石畳の道を越えて永遠へ 前編 「クラシックの女王」パリ~ルーベ ドキュメンタリー ~The REAL~
4月11日 午後5:30〜
-
4月12日 深夜12:00〜
-
【デイリーハイライト】Cycle*2026 ロンド・ファン・フラーンデレン
4月6日 午後3:00〜
-
3月21日 午後10:00〜
-
【デイリーハイライト】Cycle*2026 パリ~ルーベ ファム
4月12日 午後3:00〜
J SPORTSで
サイクルロードレースを応援しよう!