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サイクルロードレース コラム 2026年6月2日

「良いコンディションでツールに臨めると確認している」 ヨナス・ヴィンゲゴーハンセンの新たなレースアプローチは奏功するか|ジロ・デ・イタリア2026

サイクルロードレースレポート by 福光 俊介
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ジロ・デ・イタリア

ジロでの勝利を家族と喜ぶヴィンゲゴー

3週間に及んだ長き戦いを終えたジロ・デ・イタリア。大会前の予想通り、ヨナス・ヴィンゲゴーハンセンチーム ヴィスマ・リースアバイク)が個人総合争いでライバルを圧倒。悲願のマリア・ローザを手にし、史上8人目となる全グランツール制覇者となった。

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数々の勝利をつかんできたヴィンゲゴーにとって、ジロはグランツールで唯一残されていたタイトルでもあった。マリア・ローザの獲得が最大のミッションであったわけだが、同時に新たな取り組みでもあったという。すべては、7月のため……。グランツール2冠「ダブル・ツール」への期待が膨らむ彼の、新たな取り組みとは果たして。

シーズン1つ目のグランツールで調子を上げ、2つ目でピークへ持っていく

初のジロ出場で、初の個人総合優勝。過去に2回ツール・ド・フランス制し、昨年はブエルタ・ア・エスパーニャを勝っているヴィンゲゴーの力であれば、急峻な山々が待ち構えていたジロだって乗り越えられるであろうことは、レースを追う者なら誰もが感じていたはずだ。もちろん、簡単な戦いではないし、このジロ期間中には一時的に体調を崩していたとヴィンゲゴー自身が明かしている。それでも、3週間をトータルに戦い抜くあたりは、やはりさすがとしか言いようがない。

すべてのグランツールを制し、最終目的地ローマでは愛する家族の出迎えを受けた王者は、人目をはばからず涙を流した。「いますぐ引退を決意しても、完璧なキャリアだったと満足できるはずだ」との言葉は、偽りのない彼の想いである。

とはいえ、ヴィンゲゴー、さらにはチーム ヴィスマ・リースアバイクの大いなるプランはまだ完結していない。

もっとも、ヴィンゲゴーが初のジロ出場を決めた最大の要因は、7月に控えるツール・ド・フランスに向けたアプローチとトレーニングプログラムが大きく関係しているのだという。

昨年までは、3月または4月上旬までレース活動を行ったのち、数日間の休養を経て高地トレーニングを行っていた。6月に入ると前哨戦のクリテリウム・デュ・ドーフィネ(今年からツール・オーヴェルニュ・ローヌ・アルプに名称変更)を走り、ツール本番を迎えていた。

ジロ・デ・イタリア

表彰式も家族とともに

チーム ヴィスマ・リースアバイクでスポーツディレクターを務めるマルク・リーフ氏は、「ヨナスはツールにだけ集中をしていた。準備さえうまくいけば、本番での成功が得られると信じていたんだ。私たちも同意見で、ここ5年間はそうしてきた」と話す。

潮目が変わったのは、昨年のブエルタ制覇だった。ツールではタデイ・ポガチャルUAEチームエミレーツ・XRG)に敗れたが、ほぼ休む間もなくブエルタへ向かうと快勝。スペインで得た手ごたえは、「シーズン1つ目のグランツールでコンディションが上ると、その2つ目でピークに達する」というものだった。

もちろん、それはどの選手にも当てはまることではないだろう。なにしろ、1大会あたり3週間・21ステージを走っているのである。スパンとして1カ月あるかどうかの連戦でそのようなコンディショニングが成せるのは、ヴィンゲゴーくらいしかいないのではないか。もはや超人の域である。

ヴィンゲゴー「最高の状態じゃなきゃポガチャルとは戦えない」

それでも、ヴィンゲゴー本人も、リーフ氏をはじめとする首脳陣も、ジロからツールへの流れはうまくいくものと確信しているよう。「昨年までのこの時期と比べれば、はるかに状態が良い」とリーフ氏はヴィンゲゴーのコンディションを評価する。

ヴィンゲゴー自身も、「きっと成功するよ」と明るい。「結果は時間が経てば分かるだろうね。とにかく、最高の状態じゃなきゃタデイ(ポガチャル)とは戦えないんだ。今までのやり方から変化が必要だった。それがいまなんだ」と強い意志を示す。

一方で、彼らは冷静さを失ってはいない。「まずはやってみて、結果を見て今後について考えたい。正しい方向に向かっていると信じてはいるけど、この取り組み自体が初めてなんだ」とリーフ氏が言えば、ヴィンゲゴーも同調する。

ジロ・デ・イタリア

チームが一丸となってダブル・ツールへ挑む

「シーズン1つ目のグランツールで自分の体がどう反応するかはよく分かっている。ジロのコンディションが維持できれば、ツールでもかなり良い走りができると思う」

ジロを走り終えたヴィンゲゴーはローマで数日間家族と過ごしたのち、休養を経てフレンチアルプスでツールメンバーとのトレーニングキャンプに臨む。デンマーク国王からの祝賀会の提案を断り、ここからはツール一本でコンセントレーションを高めていく。

壮大ともいえる、新しいアプローチが実るのか。彼らはもとより、レースを観る者にとっても大きな楽しみとなる。

文:福光 俊介

福光 俊介

ふくみつしゅんすけ。サイクルライター、コラムニスト。幼少期に目にしたサイクルロードレースに魅せられ、2012年から執筆を開始。ロードのほか、シクロクロス、トラック、MTB、競輪など国内外のレースを幅広く取材する。ブログ「suke's cycling world」では、世界各国のレースやイベントを独自の視点で解説・分析を行う

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