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サイクルロードレース コラム 2026年7月29日

「5勝クラブ」入り達成のポガチャル 次なる目標とメルクスやイノーからの真の評価は|ツール・ド・フランス2026

サイクルロードレースレポート by 福光 俊介
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ツール・ド・フランス

エトワール凱旋門を回るポガチャル

「振り返ろうにも何から話したら良いのか分からない。それくらい自分のしたことが信じられない」

ツール・ド・フランス2026を制したタデイ・ポガチャルUAEチームエミレーツ・XRG)は完璧なまでの勝利に、偽らざる気持ちをそう語った。詳しくは各ステージのレポートを参照いただくとして、全21ステージ中17ステージでマイヨ・ジョーヌを着用、実質は第2ステージからレースを支配していたようなものだった。ツールを勝つたびに「今まで一番強い勝ち方だった」と思わされてきたが、今回は一段とその印象が強い。完全なる勝利を果たし、次なる目標はどこへ据えることになるのだろうか。「5勝クラブ」の先輩たちが口にした真の評価とともに、“タデイ・ポガチャルの未来”を想像してみたい。

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総合優勝記録73時間56分26秒は平均時速換算で史上最速

ポガチャルのツール2026制覇は、記録づくめとなった。

まず何よりも、5度目の個人総合優勝。大会前から繰り返し「5勝クラブ入り」を煽ってきた筆者だが、実際にその通りになると感動を覚える。同時に、「絶対にここでは終わるわけがない。ポガチャルにはまだまだ先がある」とも思わされる。彼自身、まだまだ走り続けることを示しているし(UAEチームエミレーツ・XRGとは2030年まで契約を結んでいる)、ツールへの情熱だって1ミリも薄れていない。史上最多となる6度目、さらには7度目……とトライをしていくことだろう。

走行記録でも驚きのデータが算出されている。ポガチャルの個人総合優勝記録73時間56分26秒は、平均時速に換算すると43.227km/h。これは、昨年マークした42.728km/hをはるかに上回る史上最速記録。今大会は第11ステージを平均50.91km/hで走ったり、ポガチャル自身が第19ステージのアルプ・デュエズで最速登坂記録をマークしたりと、新次元のスピードがフォーカスされる3週間でもあった。

コースの変更や短縮があり、最終的な総距離は3197km。コースの特性や天候なども関係するので一概に決めつけることは難しいが、それでもやはり高速化を象徴する大会だったと捉えることができるだろう。ちなみに、ポガチャルがツール初優勝した2020年の平均時速は39.868km/h。今日に至るまでのスピードの進化は著しい。2027年大会では、今年以上の高速化が進んでいるかもしれない。

ポガチャルの本当のすごさは「人々を惹きつける人間性」

2026年大会の個人総合優勝によってポガチャルは、ジャック・アンクティル、エディ・メルクス、ベルナール・イノー、ミゲル・インドゥラインと並び、「5勝クラブ」の仲間入りを果たした。

ツール・ド・フランス

5勝クラブ入りをしたポガチャル

フランスでも“club de cinq”(クルッブ・ド・サンク=フランス語で5勝クラブを意味する)のフレーズは大会の進行とともにメディアで多く見かけるように。ポガチャルの活躍を報じるうえで欠かせないひと言になった。

ついに大物たちと肩を並べたポガチャルだけれど、「5勝クラブ」の先輩たちは彼をもはや別物と口をそろえる。

メルクス氏は「同一シーズンにすべてのグランツールを制する初めての選手になるだろう」と断言。「まずは2026年大会の優勝を称えなければならないが、彼自身がすでに違う高みに目を向けているのではないか。われわれを越えるツール6度の制覇だけでは満足しないだろうし、年齢的にもこれからまだまだ強くなる」と評価。

イノー氏も同様で、「彼は完全に別次元」と脱帽。「メルクスや私と並んだことが何よりもうれしい。ただ、これで終わることはまずありえない。私と比較してどうか……なんて話をすること自体がナンセンス」と続ける。

ツール・ド・フランス

シャンゼリゼ通りを走るポガチャル

また、イノー氏はポガチャルの本当のすごさを「人々を巻き込む人間性にある」と評する。その強さで世界を驚かせるとともに、レース内外でのサービス精神やユーモラスなキャラクターが観る者を惹きつけているとする。「最後の数キロだけを見て誰が勝ったか把握していたような人たちが、レースの最初から最後まで観るようになった。それは“ポガチャルが今日も何かをするのではないか……”と期待をするからだ。そんな選手は今までいなかった。彼は新時代のヒーローなんだ」。

ブエルタ出走の可否は数日中に

スペシャルなタイトルも、評価も、欲しいままにするポガチャルだけど、実際のところ次なる目標はどこに据えることになるだろう。

ツール2026を走り終えた直後、「早い段階で次の目標を設定しなければならない」と口にしたポガチャル。その場では具体的なレース名についての言及は避けたが、代理人のアレックス・カレラ氏やチーム首脳陣のコメントから少しずつ可能性のあるものが分かってきている。

ツール・ド・フランス

チームメートと表彰台へ

順調にいけば出走が確実なのが、9月下旬のUCI世界選手権大会。ロードレースでは3連覇がかかっていて、マイヨ・アルカンシエル防衛が大きな目標になることはチーム首脳陣が認めている。

また、カレラ氏によれば8月22日開幕のブエルタ・ア・エスパーニャへの出場も検討中だとしている。2026年大会の開幕地はモナコで、ポガチャルが拠点を置く地でもある。スポーツに篤いモナコ国王・アルベール2世がポガチャルのブエルタ出場を熱望していて、直々にラブコールを送っているとか。遅くとも8月初旬には出走の可否を決定するとしており、本当に出場するとなれば、ツールとの2冠が現実目標になる。

昨年の今頃は「ゆっくりしたい」と述べていたポガチャルだけれど、今年は一転して急ぎの決断が求められる状況に。ツール後の催しやや自身の名を冠したサイクリングイベントに顔を出しながら、先々のスケジュールを固めていくことになる。

文:福光 俊介

福光 俊介

ふくみつしゅんすけ。サイクルライター、コラムニスト。幼少期に目にしたサイクルロードレースに魅せられ、2012年から執筆を開始。ロードのほか、シクロクロス、トラック、MTB、競輪など国内外のレースを幅広く取材する。ブログ「suke's cycling world」では、世界各国のレースやイベントを独自の視点で解説・分析を行う

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