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ボルタ・ア・カタルーニャを見ていても、レムコ・エヴェネプールとヴィンゲゴーの間には、登坂能力にまだ差があるように思われます。レムコほどの脚力と体重の軽さであのTT力があれば数年あればヒルクライムでもトップの一角にすぐ追いつくと思っていましたがそうなっていないのはどのような理由があるとお考えでしょうか?
(男性 会社員)
近年のチャンピオンたちの戦いは見応えがあって楽しいですね。さて、意外と見落とされがちなライバル関係でもあるエヴェネプールとヴィンゲゴーですが、まずは基本的な情報を押さえてみましょう。
まずはエヴェネプールですが、身長は171cm、体重は63kgほどのようです。空力のよいフォームと、長時間の独走が武器ですね。スプリント力やインターバル耐性もなかなかのものです。
いっぽうのウィンゲゴーですが、身長は175cm、体重は58kgほどです。やはり数十分間にわたり高い出力を発揮できるのが強みで、さらに体重の軽さによるパワーウェイトレシオの高さを武器として、特に長い上りに強い選手です。意外とスプリント力もあり、インターバルにも強いのも見逃せません。
他にも細かい違いは多いですが、もっとも重要なのは、体重差です。対ヴィンゲゴーでは、エヴェネプールの体重が5kgも重いのは、長い上りで大きなハンデになります。逆に、その分、絶対的なパワーはエヴェネプールの方が上だと思うので、二人のリザルトの差の大半は、この体重差で説明ができると考えています。
二人とも、意外とスプリントやインターバルにも強いのは共通しています。仮にですが、レムコがもっと体重を落として長い上りに適応し、ウィンゲゴーが筋肉を増やして平地に適応したら、似たような選手になるかもしれません。
ただ、もしそれが可能だとしても、二人の前にはポガチャルという怪物が立ちはだかっているわけです。そのことを考えると、両者とも強みを伸ばす方を選んでいるのかもしれません。エヴェネプールが万全に準備した状態での長い上りのパフォーマンスは、ポガチャル、ヴィンゲゴーに次ぐレベルですから、決して弱いわけではありません。
それと、そもそもの話として、世界トップ選手である二人は、すでにギリギリの状態まで肉体を最適化しているわけです。一般人ならば、体重を減らすことは脂肪を落とすことで実現できますが、エヴェネプールの身体にはすでに余計な脂肪は全然ないでしょう。となると、体重を落とすことは筋肉も落とすことにも繋がり、パワー低下も覚悟しなくてはなりません。果たしてそこに価値があるのか?と彼は考えるかもしれませんね。
要するに、二人とも、やれることはある程度やってきて、今があるということです。プロとしてどのフィールドで戦い、いかに結果を残していくのか。世界最高峰の才能が、自らの武器を極限まで磨き上げていく中で、「前向きな撤退」がなされるのです。そうした選手たちが、自らの強みと弱点を踏まて戦うからこそ、見ていて面白いのです。
ところで、肉体的には案外共通点も多い二人ですが、メンタルは対照的です。瞬間湯沸かし器のエヴェネプールと、心配性のウィンゲゴー。サイクルロードレースの魅力のひとつは人間ドラマなので、このふたりの対決はなかなか味わい深いものがあります。
ちなみに個人的な感想としては、エヴェネプールvsヴィンゲゴーの対決では、ウィンゲゴーに引っ張られるのか、「陰キャレムコ」になる印象があります。一方、ポガチャルと競う時は「陽キャレムコ」になりますね。そういうところも彼の魅力の一つです。
世界最高峰の才能が自らの武器を極限まで磨き上げ戦っている(左からヴィンゲゴー、ポガチャル、エヴェネプール)
文:栗村 修・佐藤 喬
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栗村 修
中学生のときにTVで観たツール・ド・フランスに魅せられロードレースの世界へ。 17歳で高校を中退し本場フランスへロードレース留学。その後ヨーロッパのプロチームと契約するなど29歳で現役を引退するまで内外で活躍した。 引退後は国内プロチームの監督を務める一方でJ SPORTSサイクルロードレース解説者としても精力的に活動。
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