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もう無駄に、悔しい、苦しい思いをしなくていいようにーー。坂本花織、苦難を乗り越えて掴んだ金メダル | ISU世界フィギュアスケート選手権2023 女子シングル レビュー
フィギュアスケートレポート by J SPORTS 編集部もしかしたら、よりパーソナルな目標に意識を向けることで、坂本は自分の演技だけに集中しようと心がけたのかもしれない。北京冬季五輪で銅メダルを獲得した後、昨世界選に向けて「優勝しなければおかしいよ」とコーチに発破をかけられ、モンペリエではむしろ今年以上にメンタル面ではきつかったという。今シーズン序盤は、世界チャンピオンとして、「勝たなければならない」との重圧に苦しんだ。それでも全日本選手権で好プログラムを2本揃え、壁は乗り越えた。
今大会だって、やっぱりすごく緊張を感じた……と、坂本は大会後の優勝インタビューで打ち明けた。久しぶりの、日本開催で、たくさんの人が応援にやってきた。嬉しさの一方で、22歳の坂本が、重圧を感じないわけがなかった。
伸びやかに、しなやかに、坂本はFS「エラスティック・ハート」を演じた。冒頭の大きく柔らかい2回転アクセルは、GOEは+4と+5がずらりと並ぶ、まさに至福の出来だった。その後も一切「力み」のないジャンプを、流れるように次々と決めていく。すべてが順調に進んだ。演技後半に入り、3回転フリップ+3回転トーループのコンビネーションが、1本目パンクで1Fになってしまうまでは。
4年前とまったく同じミス。しかし、4年前と違ったのは、坂本には4年分の「経験」があったこと。驚異的な速さでリカバリーし、しかも完璧な3Tをつけた。得点表にはもちろん、失敗を意味する記号など一切つかなかったし、むしろGOE加点さえ得たほど!
その後も、まるでなにごともなかったかのように、坂本はすべてのエレメンツをしっかりこなした。最後のスピンでレベルを3に落とした以外は、ほぼ完璧に仕上げた。
FSだけなら2位の145.37点だった。トータルでは、シーズンベストの224.61点。得点が発表された瞬間、坂本は泣き崩れた。3.71差での逃げ切り優勝。1F=基礎点0.55点(後半のため1.1倍)だけで諦めず、3Tをつけることで基礎点5.17点に引き上げたからこそ、成し遂げられた2連覇だった。
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