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リッチー・モウンガ(東芝ブレイブルーパス東京)
5月24日(土)、くもり空の秩父宮ラグビー場には、16,253人の観衆が集った。リーグワン2024-25プレーオフトーナメント準決勝で相対したのは、リーグ戦1位通過の東芝ブレイブルーパス東京(BL東京)と、リーグ戦5位で準々決勝では4位の静岡ブルーレヴズを下したコベルコ神戸スティーラーズ(神戸S)だった。
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試合前、キャプテン同士のコイントスで勝ったBL東京のリーチ マイケルキャプテンは陣地を選択。午後2時5分、試合は神戸SのSOブリン・ガットランドのキックオフで始まった。先手を取って仕掛けたのは神戸Sだった。BL東京のSOリッチー・モウンガが神戸S陣にキックを蹴り込むと、神戸SのFB李承信が果敢にカウンターアタックを仕掛け、ここからの連続攻撃で、BL東京がタックルした相手から手を離さない反則を犯し、ガットランドが先制PGを決める。
佐々木剛(東芝ブレイブルーパス東京)
BL東京がトライを奪ったのは、前半15分のことだった。11分に神戸SのCTBマイケル・リトルが自陣から抜け出して一気にBL東京陣へ。ここでモウンガが戻りながらパスの間に入り、ボールは地面を転々とする。これを拾ったFB松永拓朗が前に出ると、モウンガが約60mのロングキックを神戸Sトライライン直前の右コーナーに蹴り込み、観客席を大いに沸かせた。自陣から相手陣22mラインの奥にバウンドさせてボールを出せば、マイボールのラインアウトで始めることができる。このラインアウトからBL東京はモールを押し込み、FL佐々木剛がトライ。ここは映像判定となり、ラインアウトの中でノックフォワードがあったとしてトライはキャンセルとなる。
しかし、BL東京はその後のスクラムで集中力を保ち、神戸SのNO8サウマキアマナキがボールをいったん持ち出したところで、佐々木がタックル。ボールを奪い、CTBロブ・トンプソンのトライにつなげた。その後は互角の攻防が繰り広げられ、25分には神戸SのWTB植田和磨が右コーナーにトライしたかに見えたが、SO杉山優平、LOワーナー・ディアンズのタックルでボールが手からこぼれ、チャンスを逸した。
ジャパンラグビー リーグワン2024-25 D1(5月24日)
【プレーオフトーナメント 準決勝 ハイライト動画】東芝ブレイブルーパス東京 vs. コベルコ神戸スティーラーズ
試合の流れがBL東京に大きく傾いたのは後半立ち上がりの攻防だった。まずはキックオフを受けた神戸Sが攻め、左タッチライン際を抜け出そうというところで、タックラーを邪魔したとしてオブストラクションの反則。一転BL東京のチャンスとなり、トライライン直前で再び神戸Sが反則を犯し、BL東京はゴール真正面のPGを狙わずにスクラムを選択する。中央のスクラムかディフェンス側は守りにくいものだ。ここからの攻撃で最後はリーチのパスを右タッチライン際でキャッチしたWTB桑山聖生がトライ。モウンガのゴールも決まって、14-3となり、精神的にもBL東京が優位に立った。
反撃に出ようとした神戸Sの勢いを止めたのは、CTBセタ・タマニバルの負傷交代で入った眞野泰地だった。「最近、プレー時間が少ないのでエネルギーがありあまっています。(出場したら)力を出しきります」と話していた通り、ガットランドの突進を止めるタックルを決めると、すぐに立ち上がり、今度はリトルを力強く押し戻してターンオーバーを勝ち取る。そして、クイックスローから攻めた神戸SのCTBラファエレ ティモシーにも素早く間合いを詰めてタックルし、ノックフォワードを誘った。約40秒で3度のタックルというハードワークだった。
その後、BL東京は後半9分にモウンガがPGを追加し、17-3。後半35分、交代出場のHO橋本大吾、40分には神戸Sのミスボールを拾ったトンプソンがトライを重ねて、BL東京が31-3で勝利した。「悔しい、の一言。勢いにのまれて終始圧倒された」。神戸SのベテランSH日和佐篤の言葉だ。拮抗している時間も長く、神戸Sにもチャンスがあっただけにノートライで抑えられたのは悔しいだろう。しかし、終了間際にトライを奪われ、勝敗は動かないシーンで、モウンガのゴールキックに反応してチャージに出たブロディ・レタリックに意地とプライドがにじんだ。神戸Sは5月31日の3位決定戦に回るが、そこでも観客を感動させる戦いを期待したい。
一方、勝ったBL東京のリーチ マイケルキャプテンは「スコアでもプレッシャーをかけて、神戸がアタックしなくてはいけない状況を作ることができた」と話し、実際のディフェンス面だけでは、メンタル面でもプレッシャーをかけ続けることができたと勝因を語った。試合後、選手の囲み取材で報道陣を驚かせたのは佐々木剛だった。試合が終わるまで自分のトライがキャンセルされたことを知らなかったというのだ。にわかには信じられない話だが、「コーチから『最近、相手の反則をアピールするなど、自分のプレーに集中していないのではないか』と言われて、自分のプレーだけにフォーカスしていたので」と説明した。トライキャンセル後のスクラムも、スクラムで自分のすべきことだけに集中したからこその好タックルだったわけだ。ゲームの先を読んで動くモウンガがいて、眞野や佐々木のような選手もいる。BL東京の強さの一端を垣間見た思いだった。
文: 村上晃一
村上 晃一
ラグビージャーナリスト。京都府立鴨沂高校→大阪体育大学。現役時代のポジションは、CTB/FB。86年度、西日本学生代表として東西対抗に出場。87年4月ベースボール・マガジン社入社、ラグビーマガジン編集部に勤務。90年6月より97年2月まで同誌編集長。出版局を経て98年6月退社し、フリーランスの編集者、記者として活動。
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