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ラグビー コラム 2026年6月1日

それぞれのスタイルとプライドが組み合った80分。スピアーズ、ワイルドナイツを僅かに上回り決勝へ。

ラグビーレポート by 田村一博
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国内最高峰リーグのファイナリストを決めるに相応しい内容の試合だった。

当事者たちの誰もが、「タフな試合になるとわかっていた」と振り返った80分は26-24。5月31日、秩父宮ラグビー場に1万8695人を集めて激突した埼玉ワイルドナイツ×クボタスピアーズ船橋・東京ベイは、レギュラーシーズン3位だった後者が、2位の前者に競り勝った。

レギュラーシーズンの第11節(3月14日)に戦ったときは32-30とワイルドナイツが勝利した。その日から2か月。同じ好天下の試合も、16度前後だった3月中旬の気温は30度近くになり、選手たちはその点で苦しんだかもしれない。
激しく攻防が入れ替わる運動量の多い展開に、足が攣る選手たちも少なくなかった。

試合開始直後からブレイクダウンの激しいやり合いが印象的だった。
ワイルドナイツがFLベン・ガンターの剛腕スティールから攻撃に転じる。スピアーズは、そこから攻め入った相手の勢いをHOマルコム・マークスが止める。倒れた相手に襲いかかり自由を奪った。

前半は10-7とスピアーズがリードした。10分にFBショーン・スティーブンソンがロングPGを決めて先制。17分に反則からPKで自陣深い位置に入られ、ラインアウト→モールから押し切られる。3-7とされた。

一進一退の時間が過ぎる中でスピアーズは追加点を挙げた。前半36分に挙げたWTBハラトア・ヴァイレアのトライは、数的有利な状況を的確に突く攻撃からだった。
自陣でのブレイクダウンで相手反則を誘い、速攻からのキックでワイルドナイツ陣に入る。プレッシャーをかけて好位置でのラインアウトから、(イエローカードで)1人少ない相手防御ラインの間のスペースを攻略した。コンバージョンキックも決まって10-7となった。

ハーフタイムに「これこそプレーオフのラグビー。腕相撲のよう」と言ったのは、スピアーズのフラン・ルディケ ヘッドコーチ(以下、HC)。後半に向け、「瞬間瞬間をものにできるか」が大事とし、「エリア取りなども含め、自分たちのやりたいラグビーをしたい」と話した。

ジャパンラグビー リーグワン2025-26(5月31日)

【D1 プレーオフトーナメント 準決勝-2 ハイライト】埼玉ワイルドナイツ vs. クボタスピアーズ船橋・東京ベイ

ワイルドナイツの金沢篤HCも競り合う展開について「想定通り」と語り、ブレイクダウンについて言及。ボールキャリアーの姿勢、サポートの質をさらに高めたいと、前半の内容を受けての展望を口にした。

怪我などのアクシデントでスピアーズのHOマークス、ワイルドナイツのSO山沢拓也が退いて始まった後半も、強度の高い攻防が続いた。
その中でゲームブレーカーとなったのはスピアーズのCTBリカス・プレトリアスだった。SOバーナード・フォーリーのPGで後半10分に13-7としたあとだった。

シーズン終盤から好調をキープ。準々決勝、この日の前半と、キレのあるプレーでチームに勢いを与えていた13番は後半16分、自陣で相手キックを受けたところから始まったアタックで勝負に出る。ディフェンダーを抜き去り、左サイドを駆け上がるWTB木田晴斗にラストパスを放る。その後のコンバージョンキックも決まり、20-7とした。

ワイルドナイツもその5分後に途中出場の好ランナー、WTBモーリス・マークスがラインブレイクからトライを奪ったが(後半21分)、悔やまれるのは、そのトライ後のコンバージョンキックを決められなかったことだ。
ゴールポストほぼ正面。キッカーの齊藤誉哉はコンバージョンキックをトライラインから約7メートルの地点で蹴った。猛然とチャージに出たヴァイレアにチャージダウンされて2点の加点がならなかった。

後半27分、スピアーズのFL末永健雄が相手反則を誘ったボールへの仕掛けを見てほしい。激しいと言うより職人技。ワールドクラスのCTBダミアン・デアレンデが首をかしげた。オレンジのジャージーはその時PGで3点加点。その2分後にもPGを重ねて26-12とした。

そんなスコアの動きになったのだから、最終的に2点差で決着がついた試合になったとはいえ、齊藤がコンバージョンキックを決められなかったことがワイルドナイツの敗戦につながったとは言い難い。
しかし残り18分時点で6点差としていたら、選手たちのメンタル面は違っていたかもしれない。予定していたより早くピッチに出たであろう齊藤は、いい動きを見せていた。この先の成長につながる経験になるはずだ。

14点のビハインド。残り時間が少なくなってからのワイルドナイツの集中力は高かった。
スクラムでFKを得て速攻。相手反則を誘ってPKで敵陣深くへ。トライライン前の攻防でTMOの結果トライキャンセルとなるプレーもあったが、プレッシャーをかけ続けて右サイドでトライを取り切ったのは後半38分。ブレイクダウンで相手を排除しておいて、最後はPR木原優作がインゴールに入った。

残り2分で自陣から攻めた攻撃でもボールを大きく動かし、WTBマークスでビッグゲイン。相手を崩して最後はSO齊藤がインゴールへ入り、コンバージョンキックも成功。2点差に迫ったワイルドナイツは、後半40分が経過したことを知らせるホーンの中、ピッチ中央でスクラムを組む好機も得たが、左への1次攻撃でWTBマークスがスピアーズのFBスティーブンソンに押し出された。
大歓声の中での激戦は、鬼の形相で襲いかかったオレンジの15番の咆哮で終了した。

勝者も敗者も、仲間たちを誇りに思う80分だった。スタイルにこそ違いはあっても、両者のチーム力にはほとんど差がなかった。
強いて挙げれば、コンテストキックに対してのアクションで勝者が上回っていた。

文: 田村 一博

田村一博

前ラグビーマガジン編集長。鹿児島県立鹿児島中央高校→早稲田大学。早大GWラグビークラブでラグビーを始める。ポジションはHO。1989年、ベースボール・マガジン社に入社。ラグビーマガジン編集部に配属される。1993年から4年間の週刊ベースボール編集部勤務を経て、1997年からラグビーマガジン編集長に就く。2024年1月に退任し、現在は編集者、ライターとして活動。

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