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「抜くところは自分たちで決める」
14年前の一言。大意はこうだ。あいたスペースを見つけてボールを運ぶのは、いわば「力のある側の論理」である。パスのスキル、足の速さ、ゲーム経験の蓄積で上回れば、めざす空間への到達で防御に先行できる。しかし、持たざるチームであるなら、仮に防御の人員が並んでいても、抜くと決めたら、その場で仕掛ける。ファーストレシーバーの背中から、そして内と外の「3つの選択肢」を常に持ちながら短いパスでゲインを切る。
この発言の4年後あたりから国内では広く知られる「シェイプ」にも近いが、横井理論はより簡素だ。「打つ手が多いと高校や大学では時間が足りなくなる。3択でよい」。そして「抜くところは自分たちで決める」根本思想は、現在のアイルランドやフランスのアタック原理に一脈通ずるような気がする。
「接点でボールを動かす」
14年前の提案。「外国人のオフロードはタックルの上に乗っかってボールをいかす。しかし小が大を相手にそれはできない。ならどうするか。下に当たってボールを動かすほかないでしょう」。これこそは現役時代の横井の得意のプレーだった。前傾のまま防御に接近、当たるか当たらないかのところで、低さにより空間をこしらえ、両腕の自由を確保、ボールを動かした。オフロードの先駆にして、未来形にして、「小」を救う知恵でもある。鋭い。接点でボールがわずかに動く。低い位置の手渡しでサポートが突破する。防御システムは機能しない。いまこそ追求すべき方法だ。
継承と創造
現在81歳。本年5月末日に著書が世に出た。『継承と創造』(ベースボール・マガジン社)。「20年余りのコーチング経験」により体系化された「私の考え」がたっぷり示されている。「身の丈に合ったラグビー」で身の丈を超える結果を残す。そんな道筋が惜しげもなく明かされる。ありがちな「いまトップ国ではこういう防御システムが主流」といった海外理論の紹介とは明確に一線を画す。
タイトルの「創造」の意味は深い。まず「ラグビーにおける判断とは、創造、クリエートではなく、選択、チョイスです」と言い切る。ひとつの「型」を持つことで創造は選択に簡略化される。
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