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言葉は切り取られる。もともと、そういうものだ。だから政治家の失言は「わたくしの表現の一部が誤解を与えたとしたら」なんて弁解も虚しく、ただ失言である。
スポーツの前線でも気をつけなくてはならない。1989年。プロ野球の日本シリーズ。巨人に3連勝の近鉄バファローズの加藤哲郎投手の記者に囲まれてのコメントを思い出す。
「巨人はロッテより弱い」
ちなみにロッテ・オリオンズは同年のリーグ最下位である。これが報じられるとジャイアンツに闘争心の火がついた。そこから4勝で逆転。球史に残る一幕である。これとて本人の正確な言い回しかを含めて前後に微妙な文脈はあった。
さてラグビーだ。昨年のフランスでのワールドカップ準々決勝で優勝候補筆頭格のアイルランドは、ここまで歩みは順調ではないニュージーランド代表オールブラックスに敗れた。24対28。痛恨の黒星であった。
あれから、ざっと7カ月。先日、南アフリカ代表スプリングボクスのロック、エベン・エツベスが『The Rugby Pod』で以下のごとく発言、ラグビーの盛んな国のニュースではしきりに引用された。
プールBでアイルランドに8対13と競り負けた直後、戦い終えた相手と握手をかわしていると「23人のうち12人が『決勝で会おう』と言った」。準々決勝でぶつかることとなる「オールブラックスを飛ばしたのに驚いた」(stuff.co.nz)。
歴史的にアイリッシュはどの領域であれ「不屈の挑戦者」の立場でおなじみだ。ラグビーもしかり。それが世界のトップにいよいよ接近するまで周到に力を伸ばし、なのに無意識の傲慢という魔の手は忍び寄った。
「この20~30年の国際ラグビーを支配してきた相手をすっ飛ばすなんて大きなミステイクだ。きっと彼らは勝てないだろうと思った。わたしたちはそんなことは口にしない。(準々決勝で)フランスを向こうの庭で打ち破るために調子を上げなくてはならないとわかっていたから」(同)
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