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フランスが残ればパリはラグビーの街のままであった。数万のアイルランド人にも花の都に居座る資格はあった。イングランドのキックまたキックが雨中のセミファイルに光を放ち、退屈の先に未知のときめきが訪れることを世界のファンに教えた。純白の胸に薔薇の勇士たちも決勝に臨んでかまわなかった。
でも、これでよかった。どのみち魅力に富んだ開催国が消えたのだから、あとは「巨人」に託そう。この土曜、現地の10月28日、日本時間の翌午前4時。南アフリカとニュージーランドがラグビーの王の座をかけてぶつかる。
バトル・オブ・ザ・ジャイアンツ。1960年のオールブラックスの南アフリカ遠征を描いた書籍のタイトルである。歴史の審判を堪えた好敵手の激突。その最新エディションが2023年のワールドカップのファイナルで実現する。
必見。なんとありきたりな言葉だろう。しかし、そうなのだ。いまここにいる最高のラグビー選手は、現在と未来の名誉のみならず、ヒストリーを守るために戦い抜く。力と技に大義がからまるのだから、つまらないわけがない。
スプリングボクスはスプリングボクスらしく肉弾戦を仕掛け、なおオールブラックスのようにキャッチとパスの妙を発揮、外側のフィールドも駆けるだろう。オールブラックスはいつものごとく全方位のスキルを駆使、キックをさながら手渡しのパスとさせて、しかしスクラムやモールのレスリングでも引かない。
ラグビーワールドカップ2023 特集ページ
1921年。南アフリカはニュージーランドへ遠征、8月13日、ダニーデンのカリスブルック競技場で史上初のテストマッチを行なった。13-5。黒いジャージィが勝った。手元のニュージーランドのテストマッチ史『THE VISITORS』などによると、正式にゲートをくぐった観衆は2万5千、ほかに1万人がグラウンドを見渡せる外部で観戦している。
南アフリカのFWの平均体重は93kg。ロックのベイビー・ミシャウは193cmで108kgと当時としてはまさに大男であった。ニュージーランドの同平均は86kgである。「パワー」の前者、「機動力」の後者の図式はいまも変わらない。スプリングボクスの右WTB、A・J・ファン・ヒールデンは440ヤード(402.336m)ハードルの国内チャンピオンで1920年のアントワープ五輪の代表でもあった。際立つアスリートの存在も後年と重なる。
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