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決めれば同点。延長にもつれ込む。6月4日の太陽生命ウィメンズセブンズシリーズ秩父宮大会の決勝。日本体育大学は昨年度総合2位のながとブルーエンジェルスを向こうに粘りに粘って土壇場のトライで22-24、スコアを挙げたばかりの殊勲者、新野由里菜がゴールを狙う。
惜しい。ポスト全体を人間に見立てると右肩のポールに当たって、それた。
学生チームのしつこい防御や柔らかくて鋭いアタックはさえていた。写真家でもある古賀千尋監督の手腕は確かだ。つい判官びいきのつもりになって、だから無情のHポールがちよっと憎かった。
そして、昔、ロンドンの飛行場で東京便の長旅に備えて買った書籍を思い出した。
『Rugby's Strangest Matches』(2000年、ジョン・グリフィス著)。ラグビーのへんてこな逸話が満載の一冊だ。その一篇。邦訳すると「私たちのクロスバーはどこへ?」。1958年の実話である。
同1月18日のトゥイッケナム競技場。ウェールズ代表のFB、テリー・デイヴィスはイングランド戦の終了寸前、3-3からの勝ち越しPGを狙った。距離はざっと50ヤード(46m弱)と記録されている。
惜しい。ポストに当たって外れた。ここまでは65年後の日本体育大学ラグビー部女子にも起こる事態だ。ただし、この後、語り継がれるストーリーが始まる。
ウェールズのファンで名騎手として鳴らしたフレッド・マサイアスと、その婚約者の兄弟ら3人は、試合当日の夜、正確には翌日未明、トゥイッケナムへの侵入を図る。目的はひとつ。やつを伐り落とす。旋錠を突破、入場ゲートを乗り越え、無人のグラウンドへ向かった。ボールがぶつかったポール寄りの木製クロスバーへよじ登り「20分の作業」を経て、3フィート(91cm強)ほどをまんまと持ち帰った。
おかしなことは終わらない。ウェールズへの帰路。コッツウォルズの街道沿いのカフェで休憩しているとと、なんと、そこにゴールを外したテリー・デイヴィス本人が入ってくるではないか。やはり自動車で帰宅の途中だった。故郷のクラブの元フッカーであった騎手はさっそく「戦利品」にサインを求めた。
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