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ラグビー コラム 2022年8月22日

大学王者・帝京大、21点差を逆転 地力つける早大との接戦を制す

村上晃一ラグビーコラム by 村上 晃一
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早稲田大学 vs. 帝京大学

全国からラグビーチームが集う夏合宿の聖地・菅平高原では、8月後半、大学の上位チームの練習試合が多数行われている。8月21日、サニアパークのDグラウンドでは、昨季の大学王者・帝京大と3シーズンぶりの優勝を狙う早大が対戦した。高原の強い日差しが降り注ぐフィールドは30度を超える体感も気温は26度。ときおり太陽が陰ると心地よい風が吹き抜けた。

午後1時、早大ボールのキックオフをCTB松下怜央(4年)が蹴り込む。ボールを確保して前進を図った帝京大に対して激しくタックル。このポイントから帝京大SO高本幹也(4年)がタッチキックのモーションに入ると、早大LO池本大喜(4年)が思い切ってプレッシャーをかけてボールをチャージ。インゴール方向に転々とするボールを追いかけて押さえた。SO伊藤大祐(3年)がゴールを決めて、7-0と早大が先制する。

帝京大もSO高本がディフェンス背後に短いキックを蹴り、FL奥井章仁(3年)が拾って攻め込むなど反撃に出るが、ハンドリングエラー、反則でチャンスをものにできない。逆に早大は前半7分、帝京大陣中盤のラインアウトからの攻撃でLO前田知暉(4年)が好走。スペースを作ってWTB槇瑛人(4年)を走らせ、右タッチライン際を快走した槇が内側にサポートしたSH宮尾昌典(2年)にパスを返し、宮尾がインゴールへ躍り込む。ゴールも決まって14-0。さらに早大は14分、ラインアウトからモールを押し込み、HO佐藤健次(2年)がサイド突破でトライし、21-0と突き放した。

6月の対戦時には帝京大の攻撃を止めることができなかった早大が、個々のコンタクトで互角以上に戦い、3連続トライ。たしかな成長を感じる序盤の15分だった。しかし、その勢いは続かなかった。「3トライをとられて、気持ちを入れなおしました」(帝京大SO高本)。立ち上がりは動きが硬かった帝京大が、ここから反撃に出る。

3トライ目を取られた直後のキックオフを高本が高く蹴り上げると、走り込んだCTB二村莞司(4年)がキャッチ。これを起点にした攻撃でHO當眞蓮(2年)がトライをあげる。21-7とした帝京大は、27分、ラインアウトからモールを一気に押し込み、21-14と差を詰めると、35分、FL青木恵斗(2年)が豪快に突進してゴールに迫り、奥井、高本、當眞がつないで、CTB松山千大キャプテン(4年)がトライ。高本がゴールも決めて、21-21の同点として試合を振り出しに戻した。

早稲田大学 相良昌彦キャプテン

後半は帝京大のペースになるかと思われたが、早大もスクラムで圧力をかけて反則を誘うなど一歩も引かない。後半10分、スクラムからのNO8相良昌彦キャプテン(4年)の突進で攻め込み、SH宮尾のパスに走り込んだCTB松下が3人のタックルをかわしながらトライ。28-21とリードする。その後も早大はブレイクダウンにプレッシャーをかけて帝京大の攻撃を寸断したが、18分、スクラムで圧力を受けてボール出しが乱れ、帝京大NO8延原秀飛(3年)にトライを奪われてしまった。スコアは、28-28の同点となる。

その後も一進一退の攻防が続き、急に雨が振り出したこともあってスコアは停滞する。残り時間わずかとなった後半37分、早大陣に深く入った帝京大がラインアウトから攻め、SO高本がディフェンス背後にショートパントを上げてトライを狙う。早大WTB岡ザキ(山に竒)颯馬(3年)が反応し、高本が自らキャッチしたボールに手をかけたが、こぼれたボールをSH李錦寿(2年)が押さえてトライ。ゴールも決まって35-28。これが決勝点となった。世代屈指のSO高本は良く伸びる左足のキックで陣地を進め、キックパスなど多彩な攻撃選択で早大のディフェンスを乱し、チームを勝利に導いた。

「楽しかったです」と、開口一番に報道陣に語ったのは帝京大の松山キャプテンだ。「試合の入りは上手くいかないこともあると想定していたので、うまく切り替えられました」。指揮官は長年チームを率いた岩出雅之監督から相馬朋和監督になり、練習はさらにハードになったという。大学選手権連覇を狙うにふさわしい実力を示した帝京大と、攻守ともに力強い成長を感じさせた早大。秋以降の戦いが楽しみになる試合内容だった。

文:村上 晃一

村上晃一

村上 晃一

ラグビージャーナリスト。京都府立鴨沂高校→大阪体育大学。現役時代のポジションは、CTB/FB。86年度、西日本学生代表として東西対抗に出場。87年4月ベースボール・マガジン社入社、ラグビーマガジン編集部に勤務。90年6月より97年2月まで同誌編集長。出版局を経て98年6月退社し、フリーランスの編集者、記者として活動。

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