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七分咲きの桜が東大阪市花園ラグビー場にやって来たラグビーファンを迎えた。温かな日差しが降り注いだ3月27日(土)、4連勝の王者・神戸製鋼コベルコスティーラーズに2勝2敗のヤマハ発動機ジュビロが挑んだ。観客は6,267人。午後1時、神戸製鋼SOヘイデン・パーカーのキックオフで注目の一戦は幕を開けた。
アタアタ・モエアキオラ(神戸製鋼)
開始2分、ヤマハ発動機は陣地を挽回するキックで、キッカーの前にいる選手がオフサイドの位置から走り出すペナルティーを犯す。このPGをヘイデン・パーカーが決めて神戸製鋼が先制する。先にトライをとったのも神戸製鋼だった。11分、FB山中亮平がヤマハ発動機陣10mライン付近からカウンターアタックを仕掛け、左タッチライン際でCTBアタアタ・モエアキオラがWTB山下楽平にパスをつなぐ。山下は一気に加速して前進すると、ゴールライン方向に短いパントキックを蹴り上げた。これにFLトム・フランクリンが反応して走り込み、転々とするボールをキャッチしてインゴールに躍り込む。パーカーのゴールも決まって、8-0とリード。
前半19分、ヤマハ発動機FBサム・グリーンにPGを決められたが、25分、ヤマハ発動機ゴール前のスクラムからの攻撃でモエアキオラが3人のタックルを弾いてトライし、15-3。32分にはヤマハ発動機陣22mライン付近で相手ボールのラインアウトをPR山下裕史がキャッチして攻め込み、PR中島イシレリの突進のあと、SO日和佐篤、モエラキオラが左方向へパスをつなぎ、最後は山下楽平が左コーナーに走り込んだ。神戸製鋼は、前半にもう1トライを追加し、27-3とリードを広げて前半を折り返す。
この日のヤマハ発動機は、ここまでの4試合ですべてリザーブスタートだった、PR岡本慎太郎、西村颯平の2人を先発させた。「前半はボールを持ってアタックしたかったので、ワークレートの高い2人にした」と、堀川隆延監督は説明した。しかし、神戸製鋼ディフェンスのプレッシャーの前でボールを継続支配できず、前半はノートライに終わる。また、スクラムでも前半なかばからは圧力を受けた。流れを変えようと、後半開始時にベテランの両PR山本幸輝、伊藤平一郎を投入し、スクラムで神戸製鋼の反則を誘う。その後、神戸製鋼は中島が危険なタックルでイエローカードを受け、10分間の一時退場となる。これに乗じて攻勢に出たヤマハ発動機は、SO清原祥がインゴールをキックし、CTB石塚弘章がこれを追ってインゴールへ飛び込む。映像判定の末、トライが認められ、27-10と迫る。
【ハイライト】ヤマハ発動機 vs.神戸製鋼|トップリーグ2021 第5節
14人の時間帯を最小限の失点で切り抜けた神戸製鋼は、「チャンスがあればボールを使って勝負するプランだった」(ヘイデン・パーカー)と、簡単にキックでボールを手放さず、ディフェンスの動きを見極めて空いたスペースにボールを動かした。圧巻だったのは、後半11分からの3連続トライだ。まずはゴールラインを背負うピンチをしのぎ、インゴールからボールを展開。モエラキオラのグラバーキック(ゴロキック)を山下楽平が走り込んでキャッチしてゴールラインに迫り、分厚いサポートでレタリックがトライ。
14分、ヤマハ発動機のハンドリングエラーのボールを確保したヘイデン・パーカーからボールは最後尾のFB山中亮平へ。山中はキックするのを我慢してレタリックにパス。レタリックは大きなストライドで前進すると、サポートしたCTBラファエレ ティモシーにオフロードパスを送る。ラファエレはディフェンスの背後にキックを使って追いかけ、ボールを拾ってWTBベン・スミスにパス。スミスから再び山中がパスを受けてポスト左にトライをあげた。その直後、スミスが自らのキックを片手で拾い上げてチャンスを作り、山下裕史の軽やかなステップからのパスも加えて、最後はラファエレがトライする。どのトライも、各選手がディフェンスのいないスペースを探し、ミスなくディフェンスを崩し切った。
ヤマハ発動機もNO8クワッガ・スミス、交代出場の中井健人がトライを返して意地を見せたが、最終スコアは、53-22と差が開いた。堀川監督は「プレッシャーゲームでは思うようなプレーができない」と話しつつ、それだけに選手が成長できる試合だったのではないかと前向きに語った。
神戸製鋼は5連勝。日和佐篤キャプテンは、「相手のいないスペースにしっかりボールを運べた」と手応えを口にした。マン・オブ・ザ・マッチは、インサイドCTBを務めたアタアタ・モエアキオラ。パワフルな突進で2トライしたほか、正確なキックでWTB山下楽平の独走を導き出すなど硬軟織り交ぜて攻撃の軸になった。神戸製鋼は第6節(4月4日)、パナソニック ワイルドナイツとの全勝対決に臨む。ヤマハ発動機は、4月3日、赤い旋風を巻き起こしているNTTドコモレッドハリケーンズとの戦いだ。
文:村上 晃一
村上 晃一
ラグビージャーナリスト。京都府立鴨沂高校→大阪体育大学。現役時代のポジションは、CTB/FB。86年度、西日本学生代表として東西対抗に出場。87年4月ベースボール・マガジン社入社、ラグビーマガジン編集部に勤務。90年6月より97年2月まで同誌編集長。出版局を経て98年6月退社し、フリーランスの編集者、記者として活動。
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