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突き刺さるような慶大のタックルが早大を苦しめ、接戦になる。慶大が明大を破った試合を見ると、そんな予想をしたくなる。実際にスコア上は接戦になったのだが、主導権は終始早大が握っていたように見えた。慶大の「突き刺さるタックル」をほぼ封じていたからだ。
関東大学対抗戦Aグループ第6節、97回目の早慶戦は、11月23日、秩父宮ラグビー場に9,531人の観衆を集めて行われた。コロナ禍でキャパシティの50%という制限のなかでは最大限の観客だった。制限がなければ2万人超の満員だっただろう。両チームの入場に激励の拍手が送られる。声援が禁止される中で思いのこもった拍手だった。
11/23 慶應義塾大学 vs. 早稲田大学
午後2時、早大SO吉村紘のキックオフ。その後の攻防で慶大FL山本凱が早大CTB平井亮佑に激しくタックル。平井も簡単には倒れない。前半5分、早大SH小西泰聖がラックサイドを抜け出して慶大陣深く攻め入るが、慶大CTB鬼木崇が反応良く追いかけて倒し、FB山田響がジャッカルで反則を誘う。10分、山田のPGで慶大が3点を先取した。
慶大はNO8高武俊輔がタックルを決め、LO相部開哉がジャッカルに入るなど粘りのディフェンスで早大の攻撃をしのぐ。18分、早大はPR小林賢太が相手キックをチャージしてチャンスを作る。21分、慶大ゴール前の左ラインアウトからモールを組み、右に攻めたあと、左ショートサイドにSO吉村が走り込むと、タックルをかわしてトライ。3-5と逆転した。
34分、早大はWTB槇瑛人が右コーナーにトライをあげた。このトライはSO吉村のハイパントをキャッチした慶大FB山田を倒してターンオーバーし、1年生FL村田陣悟の突進でチャンスを広げたもの。早大は「慶應よりも先に仕掛ける」(丸尾崇真キャプテン)という言葉通り、攻守にアグレッシブだった。慶大の前に出るタックルを受けないよう、パスを後ろに下げる攻撃は選択せず、FW前5人の選手、CTB平井らが力強く前に出てコンタクトし、機を見て展開すると、CTB長田智希、FB河瀬諒介らスピードある選手が外側に膨らみながらパスを受け、タックルを外に振り切った。慶大も粘り強いタックル、ジャッカルで対抗するが、早大の工夫された動きに突き刺さるタックルができず、流れを変えることはできなかった。
【ハイライト】慶應義塾大学 vs. 早稲田大学|ラグビー 関東大学対抗戦2020
15-6と早大リードで迎えた後半19分、慶大はSH上村龍舞のキックチャージでチャンスを作り、早大ゴール前のラインアウトからモールを押し込み、最後はNO8高武がトライ、15-11と4点差に迫る。早大の勝利を決定づけたのは、26分の早大FB河瀬のトライだった。慶大陣深く攻め入り、フィールド中央でFW陣が何度も突進してタックルを受けながら攻撃を継続。最後はフィールドの右半分のスペースを使って、河瀬がタッチライン方向に走りながらパスを受け、慶大が誇るタックラーのCTB三木亮弥をスピードで振り切り、外側からタックルに来たWTB佐々木隼を弾き飛ばしてインゴール右中間に飛び込んだ。吉村のゴールも決まって、22-11。早大が慶大のディフェンスをコントロールして奪ったトライで勝敗は決した。
その後も緊張感ある攻防が続いたが、両チーム追加点は奪えず。早大は後半33分、大物ルーキー伊藤大祐が吉村に代わってSOに入り、堂々たるプレーぶり。ハイパントをキャッチした直後にタックルを受けたかに見えたが、後ろに一歩下がってはたき落として突進。昨季の高校王者・桐蔭学園を引っ張ったプレーメイカーの非凡な才能を垣間見せた。早大も多くのチャンスを失い、得点こそ伸びなかったが、「突き刺さるタックル」を封じることには成功していた。負傷者が次々に復帰しながら白星を重ねる早大の大学選手権連覇へのプロセスは、今のところ順調と言えそうだ。
「お互いの持ち味を出した早慶戦らしい一戦だったと思います。慶應のディフェンスを想定して準備したことで我慢できました。まだまだ成長過程なので、いい準備をして(12月6日の)明治戦に持てる力をぶつけたいです」(早大・相良南海男監督)
敗れた慶大の相部キャプテンは、チャンスでモールを押せず、ラインアウトもミスがあったことについて報道陣に問われ、「モールはシンプルに推進力が足りませんでした。早稲田のラインアウトのディフェンスも良いのですが、こちらの精度が低かったと思います」と自らに矢印を向けた。
早大は6勝0敗となり、2季ぶりの対抗戦優勝に王手をかけた。12月6日、5勝1敗の明大と対戦する。慶大は4勝2敗となり、12月6日、同じく4勝2敗の帝京大と対戦する。
文:村上晃一
村上 晃一
ラグビージャーナリスト。京都府立鴨沂高校→大阪体育大学。現役時代のポジションは、CTB/FB。86年度、西日本学生代表として東西対抗に出場。87年4月ベースボール・マガジン社入社、ラグビーマガジン編集部に勤務。90年6月より97年2月まで同誌編集長。出版局を経て98年6月退社し、フリーランスの編集者、記者として活動。
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