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ラグビー コラム 2018年11月5日

たくさんの課題が露に ラグビー リポビタンDチャレンジカップ レビュー

村上晃一ラグビーコラム by 村上 晃一
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ラファエレ ティモシー

この試合で2本のトライを決めたラファエレ ティモシー

日本代表の現在地が浮き彫りになる戦いだった。11月3日、東京都調布市の味の素スタジアムは、43,751人の観衆を記録した。この数字は現在のカウント方法を開始した2004年度以降の日本代表戦で最多だった。ニュージーランド代表オールブラックスから5トライを奪ったのも初めて。69-31の38点差も過去の対戦の中でもっとも詰まった。しかし、2019年のラグビーワールドカップでベスト8入りを目標とするチームとして、10トライを奪われて喜んではいられない。たくさんの課題が露になった試合だった。

オールブラックスは、テストマッチの経験の浅いメンバーが多かったとはいえ、ラグビー王国屈指の才能集団であり、全員が優れたラグビー知識とスキルを持っている。いったん波に乗ればトライを畳みかけてくる。彼らに勝つには、ディフェンスでプレッシャーをかけ続け、ミスのない攻撃で得点するしかない。立ち上がりの日本代表は、その意気込みで前に出た。前半4分のLOアニセ サムエラのキックチャージからのトライは、起点になったブレイクダウン(ボール争奪局面)でリーチ マイケルが激しくプレッシャーをかけたからこそできたものだ。

しかし、その後の日本代表は、ブレイクダウン、スクラムでの反則でピンチを招き、ラインアウトからの連続攻撃でHOデイン・コールズにトライを許す。19分のSOリッチー・モウンガのトライは、SH流大、CTBラファエレ ティモシーの間を突破されたミスタックルだ。日本代表の前に出るディフェンスが機能するシーンもあったが、38分、CTBンガニ・ラウマペのトライは裏を取られた。相手の動きに対応してスペースを巧みに突くオールブラックスの各選手たちの判断、スキルが日本代表のディフェンスを翻弄しはじめる。

リーチキャプテンは「タックルした後、ボールキャリアーを離さないオールブラックスのプランに対応できなかった」と話した。日本代表の素早いテンポを警戒したオールブラックスがボールの出るスピードを少しでも遅らせるために執拗にボールに絡んできたのだが、強豪国は日本代表に対して同じようにプレーしてくるだろう。その中で素早いテンポでボールを出すため、ブレイクダウンのスキルを高めないといけないということだ。

アニセ サムエラ

日本代表FW8人で唯一190cmを越えているアニセ サムエラ

日本代表の現在のプレースタイルは、キックとパスを素早いテンポで織り交ぜてディフェンスのいないスペースを作り出し、そこを攻め落とすものだ。しかし、この日はキック戦略も単調で、正確性を欠いていた。スクラムはある程度安定させることができたが、ラインアウトは苦しんだ。後半5分には、相手ゴール前5mでマイボールラインアウトというチャンスがありながら、確保できず、次のラインアウトもミスし、45-19と引き離されている。もし、このラインアウトをトライに結びつけていれば、点差は、38-26になったかもしれない。ラインアウトについては、日本代表FW8人で、190cmを越えているのがサムエラだけなのに比べて、オールブラックスはHOコールズが184cmなのを除けば全員が190cmを超える長身揃いだった。ラインアウトも高さではなくスピードとスローイングの正確さで確保するしかない。このあたりの修正を急がなくてはワールドカップでの決勝トーナメント進出は不可能だ。

ディフェンスについても課題は多かった。タックルミスも多かったが、それよりも、相手の個人技が生きるスペースを与えていることが問題だろう。プレッシャーをかけられないキックがボールをプレゼントしているだけだし、激しく前に出るディフェンスをするのであれば、その裏のスペースを守る動きも磨かなくては簡単にトライされてしまう。後半は、ワイドにボールを展開されると足がついていかなくなっていた。リーチ マイケルキャプテンは「練習を厳しくやっていたつもりでしたが、もっと厳しくやらないといけないと感じました」と話したが、厳しさとは「ハード」という意味だけではなく、プレーの精度、質についても妥協なくレベルアップしなくてはいけないということだろう。一人一人が80分間、攻守に正確に働き続けなくては日本代表が世界のトップ8に勝つことはできないのだから。

福岡堅樹

ワイサケ・ナホロを抜き去った福岡堅樹

後半30分、交代出場の松田力也が福岡につなぎ、再びサポートしてラファエレのトライを引き出したプレーは素晴らしかったし、福岡がオールブラックスの快足WTBワイサケ・ナホロを抜き去ったのは、日本のファンには爽快だっただろう。あれだけのアタックができるのであれば、勝利をつかみ取るディフェンスの整備を急がなくてはいけない。今回は、松島幸太朗、野口竜司、レメキ ロマノ ラヴァら、バックスリー(WTB、FB)に負傷者が相次ぎ、オールブラックス戦に初キャップのヘンリー ジェイミー、追加招集の山中亮平が出場した。いきなりオールブラックスでは実力を出し切るのは難しい。しかし、短期決戦のワールドカップは負傷者が出る可能性が高い。バックアップメンバーも含めスコッド全体の底上げは不可欠だ。

村上晃一

村上 晃一

ラグビージャーナリスト。京都府立鴨沂高校→大阪体育大学。現役時代のポジションは、CTB/FB。86年度、西日本学生代表として東西対抗に出場。87年4月ベースボール・マガジン社入社、ラグビーマガジン編集部に勤務。90年6月より97年2月まで同誌編集長。出版局を経て98年6月退社し、フリーランスの編集者、記者として活動。

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