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ファイナル直前、多くのラグビー関係者の見解はほぼ「神戸有利」で一致していた。コベルコ神戸スティーラーズ(神戸S)の攻撃力が上回るだろうという見方である。しかも、レギュラーシーズン1位通過の神戸Sはプレーオフトーナメントに準決勝から登場しており、準々決勝から登場のクボタスピアーズ船橋・東京ベイ(S東京ベイ)より1試合少ない。負傷者も少なく、有利な材料も多かった。
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2026年6月7日(日)、MUFGスタジアム(国立競技場)には、50,451人の観衆が詰めかけた。ときおり小雨が降っては止む繰り返しだったが、強い雨は降らず、風もほぼ試合に影響のない程度だった。試合前のコイントスは、S東京ベイのマキシ ファウルアが勝ち、キックオフを選んだ。午後3時7分、SOバーナード・フォーリーのキックオフで激闘の幕は上がった。
大方の予想を覆し、序盤はS東京ベイが圧倒的に攻める。前半2分、S東京ベイがトライエリアに迫ったが、ここは神戸SのFLアーディ・サベアが相手を抱えてトライエリアに引き入れ、ボールを押さえさせず、トライライン・ドロップアウトを勝ち取る。前半15分までは、S東京ベイが攻め、神戸Sが守る展開が続いた。
前半16分、フォーリーのPGでS東京ベイが先制。19分、神戸SもSO李承信がPGを返したが、22分、S東京ベイはフォーリーのPGで6-3とリードすると、直後のキックオフでボールを受けたFBショーン・スティーブンソンが自陣の22mライン内から神戸S陣22mラインを越えるところまで蹴り返し、50:22(フィフティ・トゥウェンティートゥー)でマイボールのラインアウトを勝ち取る。
このラインアウトから攻めたS東京ベイは、右タッチライン際でWTB根塚洸雅が防御背後に蹴ったボールを確保し、トライラインに迫る。トライかと思われたが、神戸SのNO8ティエナン・コストリーが根塚の上体を抱えるタックルでトライを防ぐ。「下にタックルされていたら手を伸ばせたのですが、上体を抱えられたので」と根塚。ここは止まったが、その後の攻撃でPR為房慶次朗がトライを奪う。難しいゴールをフォーリーが決めて、13-3とした。
ジャパンラグビー リーグワン2025-26 決勝(6月7日)
【D1 プレーオフトーナメント ハイライト】コベルコ神戸スティーラーズ vs. クボタスピアーズ船橋・東京ベイ
しかし、神戸Sも反撃し、相手陣深く入ると、FB上ノ坊駿介が防御背後へキック。イノケ・ブルアが低い姿勢でボールを拾うとそのままインゴールへ滑り込む。「タッチライン際で外に出ない練習はしていた」(ブルア)と、トライラインぎりぎりにボールは届いた。前半終了間際に李がPGを決めて、13-13で前半を折り返す。「前半のディフェンスは素晴らしかった。プレッシャーを受け続ける中で、同点で乗り切れたのは、チームのキャラクターを見せられたと思います」(デイブ・レニーHC)
後半も両チームの勝利への意地と積み上げてきたスキル、フィジカル、フィットネスがぶつかり合う白熱の攻防が続いた。地面に転がるイーブンボールにも複数の選手が反応して飛び込む。後半3分、李のPGで神戸Sがリードを奪うと、8分、S東京ベイのスティーブンソンが約50mのロングPGを狙う。しかし、これはゴールポストに嫌われた。10分、神戸Sは自陣から李の防御背後へのキックでチャンスを作る。その後のボール争奪戦でS東京ベイが反則を犯し、李がPGを決めて、19-13の6点差となる。
S東京ベイのフラン・ルディケHCが「ビッグモーメント」と言ったシーンは、前半15分だった。神戸S陣内深くのスクラムでPKを勝ち取ったとき、S東京ベイはPGを狙わず、タッチキックを選択。ラインアウトからトライを狙った。しかし、ラインアウトからのモールは神戸Sのディフェンスに2つに割られてしまい、倒れされたところを、神戸SのPR高尾時流にボールを奪われ、PKを取られてしまう。ここでなんらかのスコアができていれば試合の流れは変わったかもしれない。だた、高尾はガッツポーズなどせず、S東京ベイの選手たちもすぐに次のプレーに備えた。一瞬たりとも隙を見せられないこの試合の緊張感が観る者の胸を締め付けた。
後半26分、攻め込んだ神戸SはPKを得たがPGを狙わずトライを取りに行った。しかし、S東京ベイの堅い守りを崩せず、1チャンスで逆転可能な6点差のまま試合は終盤へ。5万人超の観衆が固唾をのんで見守る中、勝敗がどちらに転んでもおかしくない展開が続いた。神戸SがPKを勝ち取ったのは、後半39分のことだ。李がこのPGを決めて、22-13となり、勝敗は決した。プレーヤー・オブ・ザ・マッチはブロディ・レタリック。会心の笑顔で表彰を受けた。
勝った神戸SのレニーHCは「スピアーズは素晴らしいチームです。しっかり勝ち切ることができて嬉しい」と、ほっとした表情を見せた。後半はボール保持率で65%と大きく上回り、タックルミスも2回とプレーの精度も上がった。コンディションの良さもあったが、総合力でわずかに上回る勝利だった。攻守に粘り強くプレーしたFLティエナン・コストリーは綺麗な日本語でこう説明した。「毎年成長して優勝できたのは、正しいリーダーシップ、正しいコーチングのおかげだと思います」。
敗れたS東京ベイのルディケHCは試合後の記者会見で、マルコム・マークスなど負傷者が多く、苦しかったのではないかという質問を受けたが潔く答えた。「言い訳はしません。代わった選手がいいプレーをしました。プレーオフ、ファイナルではチャンスにトライがとれるかどうかが勝敗を分けます。後悔はありません」。笑顔で両チームの健闘を称えた。互いのリスペクトを感じる、語り継がれるファイナルだった。
文:村上 晃一
村上 晃一
ラグビージャーナリスト。京都府立鴨沂高校→大阪体育大学。現役時代のポジションは、CTB/FB。86年度、西日本学生代表として東西対抗に出場。87年4月ベースボール・マガジン社入社、ラグビーマガジン編集部に勤務。90年6月より97年2月まで同誌編集長。出版局を経て98年6月退社し、フリーランスの編集者、記者として活動。
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