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モータースポーツ コラム 2026年10月8日

モータースポーツにAIは必要か?人間が主役であるために

今日も今日とてプッシュ&ルーズ by 高橋 二朗
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6月に行われたF1オーストリアGPの様子

小学生だった時に見た映画。
『2001年宇宙の旅』(原題:2001: A Space Odyssey)のクライマックスで宇宙船に搭載されているコンピューター「HAL 9000」(以下HAL)が反乱ともいえる行動を起こす。HALの誤作動/誤情報を疑い、HALを停止させようとした乗組員たちを排除(殺害)し始める。

赤い色をしたレンズ(HALの目)が、HALに聞こえないように話している乗組員たちに対して読唇術を行うシーンが怖い。最後は、船長が記憶回路を取り外し、HALを機能停止させる。

昨今の人工知能(AI)の「反乱」ニュースを聞いて前述のHALを直ぐ思い浮かべた。HALは、正確な情報を伝えるよう設計されながら、任務の真の目的を乗組員に隠すよう命じられ、その矛盾によって機能不全に陥ったと説明されている。

現在、アメリカでAIを開発しているいくつかの企業が、自ら作ったAIに手を焼いている状況は、HALに似ているところがあると思う。半世紀以上前に作られた映画が現在のAI状況を予知していたとも言えるのではないだろうか。

現代の生活にコンピュータは欠かせなくなっている。スマートフォンもコンピューターの一種であり、アプリケーションを通じてAIを利用する身近な端末になっている。

さて、モータースポーツは、どうだろう。速く走るためにドライバーのスキルを補助する装置が多く使われている。アンチロック・ブレーキ・システム(ABS)も初期のものから格段に安全性が高められて、作動が安定している。

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モータースポーツ車両にABSが装着され始めた頃、あるレーシングドライバーが「ABSを100%信じながら走るのは怖い」ともらしていたのを思い出す。

モータースポーツの最高峰であるF1ではエンジンとモーターを組み合わせたハイブリッド・パワーユニットを搭載している。2026年規則では、フロントとリヤの可動ウイングを連動させ、コーナー向けの高ダウンフォース状態と、ストレート向けの低ドラッグ状態を切り替えるアクティブ・エアロが導入されている。新しい空力機構とパワーユニットの管理は、ドライバーとエンジニアの双方に新たな対応を求めているように見える。

ドライバーだけではなく、エンジニアもこなし切れていないのではないだろうか。F1の現場に居ない者がこんなことを言うのがおこがましいことは百も承知だけれど、卓越したドライビングを披露できるドライバーたちが意図しないように見えるマシンの挙動によってクラッシュする場面を見るとそう思わずにはいられない。これは、人間がAIに追いつけていないということなのだろうか。

人間を支援するために導入した技術が、かえって競技の魅力を損なうのであれば、本末転倒ではないだろうか。だからモータースポーツに過度なAIは用いてはいけないというレギュレーションを作ってはどうだろう。

文:高橋 二朗

高橋 二朗

高橋 二朗

日本モータースポーツ記者会会長。 Autosport誌(英)日本特約ライターでもあり、国内外で精力的に取材活動をするモータースポーツジャーナリストの第一人者。1983年からルマン24時間レースを取材。1989年にはインディー500マイルレースで東洋人としては初めてピットリポートを現地から衛星生中継した。J SPORTSで放送のSUPER GTのピットレポーターおよび、GTトークバラエティ「GTV」のメインMCをつとめる。

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