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モータースポーツ コラム 2026年8月28日

平常心で掴んだGT500初ポール。決戦での悔しさをバネに次こそ勝利を 野村勇斗(No.17 Astemo HRC PRELUDE-GT)

SUPER GT by 島村 元子
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写真左が野村勇斗、右はチームメイトの塚越広大。

8月22、23日に三重・鈴鹿サーキットで開催されたSUPER GT第5戦。暦の上では決勝日に処暑を迎えたが、現地は連日厳しい暑さとなり、灼熱の日差しが照りつけた。まず、タフなコンディションで行なわれた予選で、No.17 Astemo HRC PRELUDE-GT塚越広大野村勇斗)がGT500クラスのトップタイムをマーク。チームにシーズン初ポールポジションをもたらしたのは、ルーキーの野村だった。

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予選を前にした朝の公式練習では、アクシデントが続いた。トラブルを起こした車両が撒いたオイルなどを除去するため、コース上では処理剤を使った清掃作業が立て続けに行なわれ、どのチームも予選、決勝に向けた走行メニューを消化するのが難しい状況だった。そのなかで、17号車はまず塚越がGT300クラスとの混走枠でステアリングを握り、セッション後半はGT500クラス専有走行を含めて野村が担当した。

公式練習では、開幕戦から一貫して塚越→野村のオーダーで走行。GT500クラス専有走行になると、野村がアタックシミュレーションを行なう。ニュータイヤのフィーリングを掴んでもらうことも兼ねているようだが、第2戦、第4戦の富士ではこのタイミングでトップタイムをマークし、注目を集めていた。とはいえ、予選ではもっぱらQ1を担当。ところが、今回はQ2出走の大役が回ってきた。公式練習の序盤で赤旗が続いたことも影響するが、任された本人は、初のQ2担当でも落ち着いて臨むことができたという。

「ずっとQ1を担当していたので、いきなりQ2と言われて『ちょっと緊張するかな』と思ったんですが、クルマ自体の調子が良かったので、『もしかしたらポール争いができるかも』と、楽しみになりました」。果たして“いつもどおり”の走りをした野村は、チェッカー直後、トップに立ったNo.64 Modulo HRC PRELUDE-GT大草りきイゴール・オオムラ・フラガ)を0.077秒という僅差で上回り、見事ポールポジションを獲得。およそ30年ぶりとなる最年少ポールポジション記録の更新もしてみせた。さぞかし大喜びかと思いきや、予選後の囲み取材では淡々とアタックを振り返っており、さほどうれしくないのかとその姿に不意を突かれた。

「そんなことないです!(笑)。速いドライバーが走るなかで1位を獲れたので(クルマを降りてからも)ずーっとうれしかったですよ。ただ、あの時点ではまだ現実味がなくて……。時間が経って実感が湧いてきた感じでした」。前回の富士大会から好調なホンダ勢からは、太田格之進(No.8 #8 ARTA MUGEN HRC PRELUDE-GT)や佐藤蓮(No.16 #16 ARTA MUGEN HRC PRELUDE-GT)もQ2に出走。実力ある先輩たちと同じ土俵で掴み取ったポールポジションは、本人にとって大きな自信につながる成果になった。

野村が所属するリアルレーシングは、ドライバー出身の金石勝智氏がチーム代表兼監督として指揮を執る。また、コンビを組む塚越は、SUPER GTにデビュー以来ずっとチームドライバーを務めており、チームにはどことなくアットホームな雰囲気が漂う。野村もそれを肌で感じているようだ。「まず、チームがいろいろと僕に合わせて(考えて)くれるんです。今年からGT500車両に乗る僕に対し、金石監督はマイレージ(走行実績)がすごく大事になると考えてくれているので、シーズン前のテストのときから何度もニュータイヤを履かせてもらっているし、キャリア豊富な塚越さんからもいろんなことを教えてもらっています。とてもいい環境でレースができていると思います」。心地よい環境のなか、“期待の新星”はのびのびと戦いに挑んでいるようだ。

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決勝日の朝を迎えると、レースが待ち遠しかったという野村。別段、気持ちが高ぶることもなかった。かなりの強心臓の持ち主かと思いきや、「いえ、普通に緊張するほうです。でも、最近はだいぶ慣れてきた感じかも。シーズン序盤に比べ、メンタル的には少し落ち着いて予選や決勝に挑めているような気がします」とホンネがちらり。開幕戦から連続でスタートドライバーを担当していることもあってか、今回のスタートでもまったく緊張はなく、一番気にしていたのは決勝前の「暑さ」だったという。「グリッドにクルマをつけたあと、普段は一旦ピットに戻れるんですが、今回は取材が多くて。なかなか休憩できなかったことが、いつもと違うところでした。うれしいことでしたけど、暑かったですね(笑)」。

とにもかくにも、野村は集中力を切らすことなくパレードラップからのフォーメーションラップを無難にこなし、ホールショットを奪った。だが、GT300クラスのバックマーカーが出始めると2位に浮上した16号車野尻智紀からの猛攻に遭う。「300クラスのクルマが絡むようになって、一気に差が詰まりました。自分としては(300クラス車両を)抜くのにタイムロスしていなかったので、うしろに付かれてビックリしました。でも、鈴鹿では追いついたとしてもそこから抜くのが難しいので、『ミスしなければ大丈夫』という気持ちで落ち着いて走れました」。トップを譲ることなく、野村は18周終わりでルーティンのピットイン。塚越へとバトンを託した。

レース後半、一進一退の勝負となり、速さに勝る16号車が先行。17号車は2番手で周回を重ねる。最終盤は、130Rでのアクシデント発生によるセーフティカーランとなり、そのままチェッカー。17号車は惜しくも2位で戦いを終えた。待望のシーズン初表彰台であり、野村にとっても初のGT500での表彰台となったが、やはり破顔とはいかなかった。「表彰台に上がれたのはうれしいですが、ポールからのスタートでしたし、チームはまだ一度も鈴鹿で優勝したことがなかったので勝ちたかった」と、喜びと無念が入り混じる結果に悔しさがにじみ出ていた。一方で、クルマにはまだまだ“伸びしろ”があることを感じ取れたと言い、次戦SUGOに向けても前向きだ。「ランキングの上位勢との差が詰まりました。SUGOもまだチャンスがあると思うので、優勝争いをして、次こそはしっかり勝ちきれるようにがんばりたいです」。

ステップアップカテゴリーに参戦中、結果が出ず苦しんでいたときに散髪に出かけ、優勝。それ以後、上り調子になった。今もゲン担ぎのようにレースウィーク前には散髪に出かけている。SUGOでも身だしなみを整え、レースに臨むことだろう。鈴鹿での流れと勢いを活かし、さらなる高みを目指すことになる。

文:島村元子

島村元子

島村 元子

日本モータースポーツ記者会所属、大阪府出身。モータースポーツとの出会いはオートバイレース。大学在籍中に自動車関係の広告代理店でアルバイトを始め、サンデーレースを取材したのが原点となり次第に活動の場を広げる。現在はSUPER GT、スーパーフォーミュラを中心に、ル・マン24時間レースでも現地取材を行う。

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