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モータースポーツ コラム 2026年7月23日

”絶対王者”が獅子奮迅。開幕2連勝の躍進

SUPER GT by 島村 元子
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不変の強さを見せるau TOM'S GR Supra

第3戦マレーシア大会が、不安定な中東情勢の影響で延期となったことで、今シーズンのSUPER GTはいつになく長いインターバルとなっている。8月初旬に控える第4戦富士を前に、開幕戦の岡山、そして第2戦富士での3時間レースの展開を踏まえながら、シーズン前半戦を振り返ってみたい。

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不変の強さを見せるau TOM'S GR Supra

SUPER GT史上初となるチーム4連覇目指して今シーズンを迎えたNo.36 au TOM'S GR Supra。開幕戦岡山で、坪井翔山下健太のコンビは予選2番手につけると、決勝ではドライバー交代後にトップを奪取。次第にペースアップして主導権を握り、終盤には後続を大きく引き離す強さをアピール。高レベルのレース運びで2024、2025年に続く開幕戦制覇をやってのけ、ライバルたちに絶対王者としての存在感を見せつけた。

一方、岡山で”打倒36号車”のタイトル候補としていち早く名乗りを上げたのが、No.38 KeePer CERUMO GR Supra大湯都史樹とルーキーの小林利徠斗が今シーズンから新たにコンビを結成。ともに個性的なキャラクターとして人気を集めるふたりがどんな相乗効果を見せるのか話題にもなっていたが、まず、小林がGT500クラス初のQ1を危なげなく通過。続くQ2では大湯が0.065秒の僅差で36号車の坪井のタイムを上回り、ポールポジションを獲得。ふたり揃って印象に残る走りを見せた。

ただ、迎えた決勝では、これまで幾度となくタフな戦いを制してきた36号車が底力を発揮。先述のとおり、申し分のないレース運びで戦略を完遂する。定評あるコース上での速さやタイヤコントロールに限らず、ピットインのタイミングやメカニックの素早い作業に至るまで、ありとあらゆる点において高い次元でレースをまとめあげると、後続の38号車に約20秒という大差をつけてトップチェッカー。秀でた総合力を体現したパフォーマンスだった。

続く第2戦富士でも、36号車の快進撃は続いた。軽いとはいえ、どのチームよりも重い40kgのサクセスウェイトを搭載するなかで予選2番手を獲得。まずはライバル勢に布石を打つ。一方、予選ではコンビ3年目を迎えた福住仁嶺大嶋和也がドライブするNo.14 ENEOS X PRIME GR Supraがポールポジションを獲得。決勝でも安定感ある走りでレースをリードした。14号車は開幕の岡山でも予選3番手からレースを進めており、決勝こそ4位に甘んじたが、速さとしては十分なレースペースがあった。そのリベンジとばかり、富士では36号車に対して大きなマージンを築いてレースを牽引。だが、レース後半、2度目のピットインを境に状況が一転する。36号車が先にピットインする”アンダーカット”を行なうと、得意とするスムーズなピット作業でコースに復帰。クリーンエアの中、クリアラップを重ねて14号車を逆転してみせたのだ。速さを強みに最後まで猛追を続けた14号車だったが、燃費走行からタイヤマネジメントといった36号車の緻密な戦略がまたしても炸裂。各車のポテンシャルが拮抗するなかでどう先手を打つか、たくさんの”引き出し”を持つチームならではの戦い方が明白になった戦いでもあった。

ちなみに、開幕戦を制した36号車が続く第2戦富士で好成績を残すのは、今シーズンに限ったことではない。昨シーズンも岡山での勝利後、富士で2位表彰台に上がっており、まさに試合巧者なのだ。14号車も優勝を逃したとはいえ、岡山4位、富士2位の結果によって現在ランキング2位につける。さらに岡山で奮闘した38号車がこれに続いており、2戦を終えてトヨタ勢がトップ3を独占。メーカー同士の戦いにおいては、現状トヨタ勢に勝機がありそうだ。では、そのライバルであるニッサン勢、ホンダ勢の序盤はどんな戦いだったのか。

ニッサン勢は、まず岡山で、”アツい”走りを信条とする平峰一貴ベルトラン・バゲットのふたりがステアリングを握るNo. 12 TRS IMPUL with SDG Zが、3位表彰台を獲得。富士では予選、決勝ともに千代勝正高星明誠を擁するNISMOのNo.23 MOTUL Niterra Zが3位に続いた。シーズン開幕を前に、3月末まで解禁されていた車両の空力開発を味方に、競争力が向上しているようだ。参戦台数は昨シーズンより1台減って3台とファンにとってはさみしい限りだが、長くニッサン系チームでステアリングを握ってきた松田次生氏が23号車のチーム監督に就任し、培ってきたノウハウを惜しみなくフィードバックしており、その成果にも注目が集まる。また、名取鉄平三宅淳詞の新コンビとなったNo.24 リアライズコーポレーション Zは、今シーズンからヨコハマタイヤに変わってブリヂストンタイヤへとスイッチ。着実に入賞を続けており、チームとしては表彰台争いを視野に入れ始めている。3台の足元が揃ったことでデータ共有もしやすくなり、さまざまな角度からのアプローチが叶いそうだ。

そして、今シーズンからプレリュードGTを新たに投入したホンダ勢だが、欲しい結果がまだ残せずにいる。岡山では、ルーキーの野村勇斗とベテラン塚越広大の新コンビとなったNo.17 Astemo HRC PRELUDE-GTが予選4番手とホンダ勢として最高位を獲得。開幕戦での初表彰台が期待された。しかし、決勝では総体的にレースペースでライバルたちに先を越され、野尻智紀佐藤蓮の新コンビによるNo.16 #16 ARTA MUGEN HRC PRELUDE-GTの6位がベストリザルトに。第2戦富士は3時間レースの長丁場ゆえ、上位浮上のチャンスもあったはずだが、いずれの車両も中団グループでの走行に甘んじた。トヨタやニッサンが既存のクルマで戦いを続けるのに対し、ホンダは新型車ゆえにまだまだセットアップの引き出しが少ないことから、序盤戦の苦戦が目立ってしまったようだ。だが、第3戦セパンが延期されて生まれた時間を”追い風”に、HRC(ホンダ・レーシング)によるクルマ作りも進んでいるはず。クルマとタイヤのマッチングはじめ、コースごとの戦い方の準備が着々と進んでいると期待したい。

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混戦極めるGT300クラス

多彩なメーカーが参戦するGT300クラス。国内外の車両がこぞって集結するSUPER GTならではの魅力を映し出している。異なる車種だけでなくタイヤメーカーも違えば、車両の特性を活かすための戦略もそれぞれ。それゆえ、先読みが難しいレース展開にもなる。とはいえ、まだサクセスウェイトの影響が少ないせいか、シンプルにクルマのポテンシャルを活かした戦いを成功させているチームが好結果を残しているようだ。

開幕戦では、予選トップ3が決勝でも安定した速さとノーミスでレースを運び、そのままの順位で表彰台へ。なかでも、藤井誠暢とチャーリー・ファグがドライブするNo.777 D'station Vantage GT3が見せたポール・トゥ・ウィンは、後続車の戦意を削ぐほど圧倒的だった。一方、チームとして力を出し尽くした堤優威と卜部和久によるNo.2 HYPER WATER INGING GR86 GTの2位に続き、表彰台へ上がったのはNo.31 apr LC500h GT。小高一斗とのコンビで3位を手にした小山美姫は、SUPER GTに参戦する日本人女性として初表彰台獲得となった。続く富士には、第3ドライバーとしてチャーリー・ブルツが加勢。熟成が進む車両を小高が絶妙にセットアップし、小山さらにブルツがそのポテンシャルを引き出す走りで3位をもぎ取った。

その富士では、今シーズンからニューエンジンを搭載したNo.61 SUBARU BRZ R&D SPORTがファン待望のポールポジションを獲得。だが、決勝では車両トラブルが発生し、結果を残せずに終わっている。また、予選3番手のNo.52 Green Brave GR Supra GTにおいては、レース中のフルコースイエロー(FCY)に翻弄される形で表彰台を逃すことに。そんななか、31号車は上位陣の後退を尻目に安定感を活かした戦いで2戦連続の3位表彰台。ランキング争いでも777号車に続いて2番手につけるなど、序盤戦の注目株となっている。

なお、富士で勝利をさらったのは、No.56 リアライズ日産メカニックチャレンジGT-R。GT500クラスでも優勝経験豊富なジョアオ・パオロ・デ・オリベイラが、木村偉織と新たにコンビを組み、予選6位から粛々とポジションアップ。予選の一発の速さより、決勝でのレースペースに重きを置いた戦略を強みにして逆転優勝を実現させている。シーズン中盤以降はサクセスウェイトを意識した戦いが待ち受けるが、”賢く勝ち切るレース”を知るチームでもあるだけに、今後の活躍が気になるところだ。さらに、昨シーズンのチャンピオンであるNo.65 LEON PYRAMID AMGにも同等のことが言えるだろう。65号車は富士で今シーズン初の2位表彰台に上がったが、蒲生尚弥と菅波冬悟は優勝だけでなく”確実”な戦いを得意とする。キャラクターがそれぞれ異なる車両同士の戦いは、ライバルの動きを警戒するだけでなく、自分たちの強みをしっかりと引き出すことが求められる。

まだ2戦を終えた時点で、絶対的な本命を語るには時期尚早のGT300クラス。今後、さらなる混戦が待ち受けていると言えるだろう。まずは、第4戦富士の戦いの行方を見守りたい。

文:島村元子

島村元子

島村 元子

日本モータースポーツ記者会所属、大阪府出身。モータースポーツとの出会いはオートバイレース。大学在籍中に自動車関係の広告代理店でアルバイトを始め、サンデーレースを取材したのが原点となり次第に活動の場を広げる。現在はSUPER GT、スーパーフォーミュラを中心に、ル・マン24時間レースでも現地取材を行う。

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