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圧倒的な強さを見せたDOCOMO TEAM DANDELION RACING
モビリティリゾートもてぎで行われた2025全日本スーパーフォーミュラ選手権。例年とは異なる4月開催ということで、いつもとコンディション異なるもてぎで主役に立つのは誰なのかに注目が集まったが…終わってみれば、DOCOMOTEAMDANDELIONRACINGがワンツーフィニッシュを飾った。
まず、第3戦で主役になったのは牧野任祐。午前中の予選でポールポジションを獲得すると、気温30℃と真夏日のコンディションとなった決勝レースでは後半までピットストップを遅らせる作戦を敢行。自身のピットアウト直後は、先にピットストップを済ませていた太田格之進の先行を許すも、すぐに追いついて逆転。昨年に負けず劣らずのサイド・バイ・サイドバトルを披露した。最終的に2.6秒の差をつけて今季2度目のトップチェッカーを受けた。
牧野任祐(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)
レース後のパルクフェルメでは、今までにないほど落ち着いた感じで、とにかく笑顔が印象的だった牧野。それもそのはずで、彼は昨年の最終戦もてぎで“喜べない勝利”を経験した。
この時も太田とトップ争いを演じ、自身が持っていたオーバーテイクシステムをほぼ使い切って勝負に挑んだものの扉をこじ開けることはできず。本人も「今回は負け」と思っていたところで、太田の車両
がトラブルでスピンを喫したことで、自身に勝利が舞い込んできた。
<詳細はこちら>
リザルトとは、時に“残酷な現実”を突きつけるもの~スーパーフォーミュラ第5戦~
https://news.jsports.co.jp/motorsports/article/20190310227618/
あれから約8ヶ月。今度は2台がゴールまでマシンを運び、正々堂々と戦った結果で勝利を掴み取っただけに、牧野はいつになく勝利の味を加味しているように見えた。
しかし、あの時と違うのは“もてぎ大会が2レース開催”ということだ。
レースが終わって記者会見を終えると、トップ3ドライバーたちはグランドスタンド裏のオフィシャルステージでトークショーに参加するのだが、そこで「なんで明日があんねん!」と自らツッコんでいた牧野。そう、翌日の第4戦は全く違うストーリーが待ち構えていた。
土曜日とは打って変わって曇り空となり、路面温度は前日比で10度も下がった第4戦。午前中の予選では、このコンディション変化を味方につけた山下健太(KONDORACING)がライバルに0.5秒の差をつけてポールポジションを獲得。ただ、決勝になるとダンディライアン優勢という流れは変わらなかった。
山下健太(KONDO RACING)
今年から日曜日のレースではピットストップウインドウ制限がなくなり、1周目からタイヤ交換義務を消化できることとなった。その新ルールを利用して、鈴鹿での開幕大会では何台かが1周目ストップを試みたが、結果はうまくいかず。今回は路面温度も比較的高いということで何周かは様子見になるのかと思われたが、スタート直後に平良響(KDDITGMGPTGR-DC)がコースオフを喫したことでセーフティーカー(SC)が導入。ここで半分以上の車両がピットストップを済ませた。ダンディライアン勢はここで戦略が分かれ、SC導入時点で前にいた太田がピットイン、後方の牧野はステイアウト(コース上に留まる作戦)を選ぶことに。レース再開後は牧野が後続に対してリードを築いていく走りをみせたが、後ろでペースコントロールしていた太田が最終的に逆転し、今季2勝目をマーク。牧野も最後まで追い上げたが、4.6秒差の2位となった。
1周目にセーフティーカーが導入された時、現行ルールでは有利不利が生じるという話は別の機会にじっくりするとして…。いずれにしても、予選から牧野の前にいた太田が勝機を掴んで行ったことは確か。彼も昨年8月のもてぎ大会で悔し涙を流していただけに、心から安堵した表情をしていたのが印象的だった。
太田格之進(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)
この2人の快進撃により、DOCOMOTEAMDANDELIONRACINGは2012年以来となるチームワンツーフィニッシュを記録。しかも2日連続というのは快挙である。
これによりドライバーズポイントでは太田が61ポイント、牧野が60ポイントでトップ2を独占。3番手の岩佐歩夢(TEAMMUGEN)が41ポイントということを考えると“頭ひとつ抜け出た”と言っても過言ではないだろう。さらにチームポイントでは、第4戦を終えた段階にもかかわらずDOCOMOTEAMDANDELIONRACINGが111ポイントと早くも3桁大台に到達。2番点のTEAMMUGENが52ポイントということで、この段階でダブルスコアの差をつけていることを考えると、彼らの快進撃がいかに凄いかが分かる。
改めて、2012年以来のワンツーフィニッシュに村岡潔チームプリンシパルは「本当に最高の2人をホンダさんから預からせてもらって……やっぱり、この2人がチャンピオンを獲れるようにしてあげたい。その後にチームタイトルが付いていれば嬉しいです。まずはドライバーズタイトルを獲ってほしいですね」と第3戦後の記者会見でコメント。昨年はチームタイトルを獲得できたが、まずはこの2人のどちらかにドライバーズタイトルを獲ってほしいという想いが伝わってきた。
村岡潔チームプリンシパル
終わってみれば、ダンディライアンが完全に主役に躍り出たもてぎ大会。ある意味で、清々しすぎるくらいの2日連続ワンツーフィニッシュだった。
そして、筆者個人としては今回の2連戦で“もうひとつのハッピーエンド”があったような気がする。
昨年、太田がゴール直前でストップした後、グランドスタンドで号泣していた彼のファンである5歳の男の子が映し出された。そこから縁がつながり、次のレースでは8歳の兄とともにピットに招待されたことが話題となったのを覚えているだろうか。
実は、そのご家族も今回もてぎで現地観戦にかけつけており「土曜も日曜も会いましたよ!」と太田。日曜日の第4戦で優勝を飾ると兄弟揃って笑顔で応援タオルを持つ姿が公式映像に映し出されていた。
まさに8ヶ月越しのリベンジを果たしたダンディライアン勢。今後の快進撃から、ますます目が離せない。
文:吉田 知弘
吉田 知弘
幼少の頃から父親の影響でF1をはじめ国内外のモータースポーツに興味を持ち始め、その魅力を多くの人に伝えるべく、モータースポーツジャーナリストになることを決断。大学卒業後から執筆活動をスタートし、2011年からレース現場での取材を開始。現在ではスーパーGT、スーパーフォーミュラ、スーパー耐久、全日本F3選手権など国内レースを中心に年間20戦以上を現地取材。webメディアを中心にニュース記事やインタビュー記事、コラム等を掲載している。日本モータースポーツ記者会会員。石川県出身 1984年生まれ
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