人気ランキング

メルマガ

お好きなジャンルのコラムや
ニュース、番組情報をお届け!

メルマガ一覧へ

コラム一覧

サイクルロードレース コラム 2026年9月16日

【輪生相談】左手が痺れて来てしまいます。ハンドルの持ち方もあるでしょうが、良い対策があればよろしくお願いします

輪生相談 by 栗村 修
  • Line

 

長い時間乗っていると必ず左手が痺れて来てしまいます。その対策としてカーボンハンドルを中古で購入して使用してますが、それでも痺れはでます。
長年左肩だけ肩凝り持ちなのでそれも原因なのでしょうか、ハンドルの持ち方もあるでしょうが、良い対策があればよろしくお願いします。

(男性 会社員)

 

まず、手のしびれは、自転車のフォームだけが原因とは限りません。神経や血管など、医学的な問題が隠れている可能性もあります。症状が続いているのであれば、まずは医師の診察を受け、医学的な問題がないか確認することをおすすめします。

そのうえで、今回のご質問については「身体の左右差」という観点から考えてみます。

僕はこれまで、この連載でも何度か左右差をなくすことの重要性についてお話ししてきました。ロードバイクは基本的に左右対称の乗り物です。そのため、身体の左右非対称な動きが大きくなるほどパワーロスにつながる可能性があります。

ただ、左右差の改善とは、単純に「右と左を同じ形・位置にすればいい」というものではありません。

僕自身、ホビーレーサーとしてトレーニングに復帰して間もなく2年になりますが、最近になってようやく左右差が改善されてきたと感じています。それでも、まだ違和感は残っています。

思い返せば、僕が自転車競技を始めた頃もそうでした。15歳から自転車に乗り始めて、左右差をあまり感じずに走れるようになるまでには、20歳を過ぎるまでの5年以上かかりました。

その原因の一つは、15歳まで続けていたサッカーだったと思います。サッカーでは、ボールを蹴る脚と、それを支える脚で役割が違いますよね。身体をひねる方向もありますし、利き脚によって身体の使い方にも大きな差が生まれます。特に僕は右脚ばかりでボールを触っていましたからね。

つまり、筋力だけではなく、身体の歪みや左右の筋力差、さらには神経系の「器用さ」にも左右差ができていたわけですね。

現役時代には、それらの左右差はいったん改善されました。しかし、引退してから20年間ものブランクがあったことで、また左右差が大きくなってしまいました。そして現在、再び自転車に乗り始めて2年で、ようやく少しずつ身体を再調整できてきた、というのが実感です。

ですから、左右差というのは、一度フォームを直したからといって消えるものではありません。長年かけて身についた身体の使い方は、長い時間をかけてつくられています。それを変えるには、それなりの時間が必要なのです。

さて、今回の質問者さんは、左肩が凝り、左手にしびれが出るとのことでした。

こういう症状を聞くと、一般的には「身体が歪んでいるのではないか」と考えるでしょう。そして、整体などで身体の歪みを矯正する、というのが一つの方法ですよね。ただ、僕はもう一つの可能性も考えてみてほしいと思っています。それは、「身体の左右で、違う役割を与えているのではないか」ということです。

人間の身体には、利き腕や利き脚があります。さらにスポーツでは、「操作する側」と「支える側」という役割分担が生まれることがあります。たとえば野球のバッティングでは、左右の手は同じ動きをしているわけではありません。それぞれに異なる役割があります。

左右対称の運動であるはずの自転車でも、似たようなことが起きる可能性があります。

これはあくまで仮説ですが、質問者さんの場合、右手でハンドル操作を行い、左手を身体を支えるための「支点」として使っているのかもしれません。僕自身も、自転車に乗っていると、右脚が器用にペダルをまわし、左脚は回転運動のサポート役として、支点のような役割になっている感覚があります。強度が上がるとこの傾向は強くなるようです。

上半身でも同じように、右手で「操作」し、左手は「支える」という役割分担ができている可能性があります。

実際、ハンドリングというのは非常に繊細な操作です。両手に均等に体重を載せてしまうと、ハンドルを自由に操作しにくくなることがあります。そのため、無意識のうちに片方の手を操作、もう片方の手を支点として使っている人がいても不思議ではありません。

もし質問者さんがこのような身体の使い方をしているとすれば、長時間のライドでは左手により多くの荷重がかかることになります。それが左肩の凝りや、手のしびれにつながっている可能性も考えられます。

さらに重要なのは、左右差が上半身だけにあるとは限らないことです。

左右差によって左右の脚でペダリングの役割が違えば、サドルの上での骨盤の位置や角度にも違いが出ます。骨盤の左右差が、その上に乗っている背中や肩、腕の使い方に影響している可能性もあります。

つまり、「左手がしびれるから左手に問題がある」とは限らないのです。たとえば、右脚の使い方が違うとか、骨盤が少し傾いているといった左右差の結果として上半身がねじれて、左手に荷重が集中する。このように、身体全体の連鎖を想定する必要があります。

もちろん、実際に身体の歪みがあるならば、整体などで専門家に見てもらうことも有効でしょう。ただし、その前に一度、自分が自転車の上で「身体の左右をどう使っているのか」を観察してみてください。

長年かけて身についた身体の使い方を、いきなり左右対称にするのは簡単ではありません。まずは、ご自身が左右で自分の中に「右手は操作、左手は支点」というような役割分担がないかを確認してみると、自分のフォームについて新しい発見があるかもしれません。

ただし、一つ注意点があります。

ハンドル操作は、安全に直結する非常に繊細な動きですから、僕の仮説が当たっていたとしても、「今日から左右の役割を逆にしよう」と急に変更を試みるのはおすすめできません。落車につながる可能性があるからです。

試すのであれば、まずは公道ではなく、固定ローラーなど安全な環境で、自分の身体がどのように動いているのかを観察してみてください。

正面に鏡を置くのもおすすめです。肩の高さ、骨盤の傾き、頭の位置、左右の手にかかっている力などを、自分の目で確認してみるのです。

左右差をなくすことは、単に「左右の形・位置を同じにする」ことではありません。まず自分がどちらの身体をどのような役割で使っているのかを知ったうえで、必要であれば筋トレなども取り入れながら少しずつ修正していく。焦らず、自分の身体を観察するところから始めてください。

自分の身体がどのように動いているのかを観察し、少しずつ修正しみてください

文:栗村 修・佐藤 喬

※栗村さんにあなたの自転車に関する悩みを相談してみませんか?
ご質問の投稿はこちら

栗村 修

中学生のときにTVで観たツール・ド・フランスに魅せられロードレースの世界へ。 17歳で高校を中退し本場フランスへロードレース留学。その後ヨーロッパのプロチームと契約するなど29歳で現役を引退するまで内外で活躍した。 引退後は国内プロチームの監督を務める一方でJ SPORTSサイクルロードレース解説者としても精力的に活動。

  • Line

あわせて読みたい

J SPORTS IDを登録すれば、
すべての記事が読み放題

J SPORTS IDの登録(無料)はこちら

ジャンル一覧

J SPORTSで
サイクルロードレースを応援しよう!

サイクルロードレースの放送・配信ページへ