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サイクル ロードレース コラム 2025年7月5日

【ツール開幕直前!タデイ・ポガチャル徹底分析vol.8】最強ポガチャルに挑む二人の「ライバル」。ヴィンゲゴーとファンデルプールからの挑戦状

サイクルロードレースレポート by 宮本 あさか
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ポガチャル最大のライバルであるヴィンゲゴー

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あまりにも強い。呆れるほどに強い。あらゆるレースで、あらゆる地形で、今シーズンのタデイ・ポガチャルは最強の証明を繰り返してきた。もはや、ポガチャル相手に誰も勝利を望むことなどできないどころか、わずかなサスペンスを演出できる者さえも、まるで存在しないかのようだ。孤高にして、孤独なチャンピオン。

"最強"に立ちはだかる最大のライバル

幸いにもポガチャルには、特別な領域を分け合える、数少ない好敵手がいる。その1人が、間違いなく、ヨナス・ヴィンゲゴーだ。

「彼と戦うのはいつだって楽しい。僕は最強の選手と戦うのが好きで、まさに彼こそが最強だから……タデイの走るレースで勝てたときは、よりいっそう喜びは大きくなる」

過去4年間、パリの総合表彰台の上から2つの席をポガチャルとともに独占してきたヴィンゲゴーは、2025年ツール・ド・フランスへ向けた高地合宿中にこう語った。

「向こうも同じように感じていてくれるといいけど。とにかく、タデイのようなライバルを持てることが嬉しいんだ」

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初めてライバルとしての存在感を示したのは、2021年ツール第11ステージ。プリモシュ・ログリッチの山岳アシストとして大会入りしながらも、そのエースの落車リタイアを受け、いまだ控えめだった当時24歳は、突如として「自分の走り」をする機会に恵まれた。そして、モン・ヴァントゥの頂きに向けて思い切って加速し、マイヨ・ジョーヌ姿のポガチャルを引き離しにかかった。

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あの日以来、フランスのあらゆる高山で、2人は幾度となく火花を散らしてきた。翌年はアルプスの高山で、ヴィンゲゴーがポガチャルからイエロージャージをむしり取り、ピレネーのオタカムで、完全にポガチャルの息の根を止めた。2023年大会を最終的に決定付けたのは、たしかにコル・ド・ラ・ロズかもしれない。ただ、やはり、大会最初の山頂フィニッシュで早々とヴィンゲゴーが頂点に立ち、さらに前日の山岳タイムトライアルで敵を完膚なきまでに叩きのめしたからこその、ポガチャル大失速だった。

ポガチャルとヴィンゲゴーはここ4年間ツールの1位、2位を独占

昨夏もまた、終わってみれば、2人の世界だった。5月のジロ・デ・イタリアで華々しい総合優勝を飾り、意気揚々とツールに乗り込んできたポガチャルと、4月のバスク一周で大落車の犠牲となり、「スタートラインに立てたことだけでも、僕にとっては勝利」と涙ぐんだヴィンゲゴーが、第11ステージの山頂フィニッシュで、ハンドルを投げあった――。

「タデイのような強い選手がいるからこそ、もっと強くなりたい、もっとうまく走りたい、というモチベーションがわいてくる。彼のおかげで、僕は自分の最大限を引き出すことができている」

もうひとつのライバル対決

5年連続のポガチャルvsヴィンゲゴー頂上決戦が、2025年ツールの第2週、ピレネーで本格的に勃発するのだとしたら、いつもより長い第1週目には、もうひとつのライバル対決が見られるかもしれない。それは春クラシックの再燃。マチュー・ファンデルプールとの真剣勝負である。

ワンデーシーンを共に席巻しているファンデルプールとの戦いにも注目

2人はここ数年のワンデーシーンを席巻してきた。世界選手権は2年連続で一緒に表彰台に立ち――2023年はマチューが、2024年はポガチャルが制した――、昨年のロンド・ファン・フラーンデレン以来、5大モニュメントの栄光は完全に両者の独占状態。しかも、この春は、パリ〜ルーベの石畳の上でさえ、凄まじい一騎打ちを繰り広げた。

「タデイを倒すのは不可能ではないが、とてつもなく難しいこと。110%の調子で臨まなければならない。彼こそが世界最強の選手なのだから」

ただし、勝てるものならなんでも勝ちたい食いしん坊ポガチャルと、自らにふさわしいレースだけを確実に勝ちに行く究極の美食家ファンデルプールが、ツール・ド・フランスで競り合う姿は、残念ながら、これまでほとんど見られなかった。2021年第2ステージのミュール・ド・ブルターニュで、初出場ファンデルプールが初区間勝利と初マイヨ・ジョーヌを目指して2度のアタックを打ち、そこにポガチャルが反応したのが、現時点では唯一とも言える。

あの年以来、ファンデルプールが朋友ヤスペル・フィリプセンの補佐役に専念してきたせいでもある。今年もアルペシン・ドゥクーニンクは、フィリプセン+カーデン・グローヴスという、スプリントに特化したチームでツールに挑む。だからこそ、開催委員会は意図的に、2025年ツールの第1週目にファンデルプールの脚質にふさわしいステージを4つ用意した。すなわちポガチャル向けという意味でもある。特に今年の第7ステージは、あのミュール・ド・ブルターニュで終わるのだ!

文:宮本 あさか

宮本あさか

宮本 あさか

みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。

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