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サイクルロードレース コラム 2026年5月27日

ヴィンゲゴー無双。マリア・ローザでの王者の再証明。ステージ4勝目で、ジロの総合争いに事実上とどめを刺す。|ジロ・デ・イタリア2026 レースレポート:第16ステージ

サイクルロードレースレポート by 宮本 あさか
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ジロ・デ・イタリア

4度目の独走で区間4勝目、ヴィンゲゴー

孤独で孤高なマリア・ローザ。ばら色のジャージに着替えてから初の山岳ステージで、改めてヨナス・ヴィンゲゴーハンセンが自らの優位性を見せつけた。今大会4度目の1級山頂フィニッシュへ向けて、4度目の独走を披露し、4度目のステージ勝利。2026年ジロ・デ・イタリアの頂点争いに、事実上とどめを刺した。一方でそれ以外は……表彰台争いも、トップ10争いも、副賞ジャージ争いも、5日後の最終日に向けさらに熱を帯びていく。

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「チームメイトも僕も、ものすごくモチベーション高くステージに臨んだ。絶対にマリア・ローザ姿で勝ちたかったから」(ヴィンゲゴー)

ヴィンゲゴーが勝ちにこだわった理由

2026年ジロが開幕するはるか前から、戦略的に狙っていたステージのひとつだった。2日前にはヴィスマ・リースアバイクのチーム全員で話し合い、獲りに行くと決めた。100%スイスで執り行われた今ステージで、なによりヴィンゲゴー本人が勝ちたかった。理由は複数あった。

「まず、以前、スイスのこの地方に滞在していたことがある。素敵な場所だし、僕にとってはスペシャルな土地。道もよく知っているし、知り合いも何人かいる」

「それから、チームのことを考えると、このステージが極めて短いことも大きい。もちろんエネルギーは使うけれど、距離が短い分、消費量は少なくて済む」

「しかも3週目の初日に失敗したとしても、まだ他の選択肢は残っている」(いずれもヴィンゲゴー)

ヴィスマはあらゆる逃げの試みに目を光らせた。休息日明け、しかも113kmの短距離走とあって、たくさんの飛び出しが相次いだ。黄色いジャージは、そのひとつひとつを丁寧に吟味しては、繰り返し握り潰した。

あまりにスピードが上がりすぎたせいで、メイン集団が大きく分裂し、マリア・ローザが後方に取り残される場面さえあった。それでもヴィスマは冷静に、リーダーを前方へと引き上げた。

スタートから30kmを過ぎ、1つ目の山岳を越えた頃、とうとう13人が逃げ出した。すかさずヴィスマはプロトン最前列で隊列を組み、高速でテンポを刻んだ。実力者揃いの先頭グループには、決して2分10秒以上の余裕を与えなかった。

常連逃げメンバーの副賞ジャージ争奪戦

ジロ・デ・イタリア

アタック合戦は上りで幾度となく形を変えた

終わってみれば、逃げの13人に許されたのは、副賞ジャージをめぐるポイント争いだけだった。ステージ中盤に組み込まれた22km×2周回には、各周回2つの山岳が設けられ、だからこそマリア・アッズーラ争いはいっそう白熱した。

第14ステージの逃げでこつこつ得点を積み上げ、山岳賞首位ヴィンゲゴーの代理として青いジャージを着ていたヤルディ・ファンデルリーは、この日はことごとく後手に回った。逃げには乗ったものの、同じく第14ステージから本気の収集モードに入っていたジュリオ・チッコーネに、序盤2つの山であっけなく蹴散らされた。

しかも2つ目の山頂を越えた直後、スピードの出る下りを利用して、チッコーネが邪魔者たちを千切りにかかる。ファンデルリーも置き去りにされた。しばらくは粘ったものの、いつしか後方へと消えていった。

チッコーネの強烈なセレクションを生き延びたのは、もはやクリス・ハーパー、ジョナタン・ナルバエス、エイネル・ルビオ、ディエゴ・ウリッシの4人だけ。そして続く2つの山も、チッコーネがきっちりと先頭通過を果たす。隙あらば首位をかすめ取ろうとうかがうルビオをも、敢然と退けた。

全部で5つある山岳のうち序盤4つで満点を獲得したチッコーネは、トータルを129ポイントに伸ばし、ランキングも2位に浮上した。2019年にはジロで、2023年にはツールで山岳賞を持ち帰ったピュアクライマーは、翌第17ステージ、今ジロでは初めて青いジャージでスタートラインに並ぶ。ちなみに首位ヴィンゲゴーとの差は82点。計算上ではいまだ最大300点の回収が可能だ。

周回を抜け出した先、残り38.3kmの中間ポイントでは、ポイント賞2位ナルバエスが当然のように首位通過。やはり第14ステージの逃げで、わずか1日とはいえポール・マニエからマリア・チクラミーノをむしり取った張本人は、ジャージまでの差を14点から2点へと改めて縮めた。

表彰台の残り2席を、3人が争う

背後からの圧力はあまりにも大きすぎた。チッコーネ、ハーパー、ナルバエス、ルビオ、ウリッシ──ジロ区間勝利経験者だけで構成された5人に、逃げ切りの望みは一切与えられなかった。

ジロ・デ・イタリア

スイスの山岳地帯が戦いの舞台

1年前の第20ステージで30km超の独走を実らせたハーパーだけは、それでも最後まで抵抗を続けた。全長11.7kmの最終登坂には、50秒差でひとり飛び込んだ。しかし山が近づくにつれて、延々と引き続けてきたヴィスマに加えて、総合3位フェリックス・ガル擁するデカトロン・CMA CGM チームが牽引を担う。さらに山道に入ると、総合5位ジャイ・ヒンドレーのレッドブル・ボーラ・ハンスグローエもスピードを上げた。フィニッシュまで9.5km、ハーパーの奮闘には強制的に終止符が打たれた。

ヴィスマのアシスト陣が極限まで絞り込み、ダヴィデ・ピガンゾーリが作業の仕上げを終えると、残り6.6kmでヴィンゲゴーが加速を切った。反応を見せたのはやはりガルだけ。しかし7日目も9日目も、14日目もそうだったように、すぐにサドルに腰を下ろすと、マイペースな登坂に切り替えた。

ヒンドレーは、しばらくはネットカンパニー・イネオスの2人と行動をともにする。2021年ジロ総合覇者エガン・ベルナルが、総合4位テイメン・アレンスマンのために牽引を続けたこともあり、やがてガルへの合流を果たした。

最終的には山頂スプリントを仕掛けたガルが、2位でフィニッシュ。ヒンドレーは3位に滑り込み、きっちりボーナスタイムを確保した。つまりヴィンゲゴー→ガルのワンツーフィニッシュは今大会4度目で、ヴィンゲゴー→ガル→ヒンドレーは3度目。1大会で3度、同じ3人が同じ着順でステージトップ3に入るのは、ジロ史上初めての記録だという。

ガルはついに総合でも2位に浮上した。ただし表彰台は、いまだ確定とはほど遠い。上との距離はすでに4分03秒と大きい一方で、下を見れば、57秒以内に2人が控えている。やはり総合順位をひとつ上げた3位アレンスマンに対するリードは、わずか24秒。その33秒後にはヒンドレーが続く。

また第13ステージの終わりに、9日間着続けたマリア・ローザを脱いだアルフォンソ・エウラリオは、さらに総合順位を2位から5位へ落とした。純白のジャージこそ守ったが、新人賞争いはここからが正念場。ヴィンゲゴーの最終発射台ピガンゾーリが、この日だけで差を1分半縮め、2分17秒差に迫っている。

マリア・ローザのその先へ

ジロ・デ・イタリア

ヴィンゲゴーの加速は一度だけでライバルを引き剥がした

季節外れの暑さも、休息日明けの気だるさも、ヴィンゲゴーにはまるで関係なかった。残り6.6kmでペダルを一度だけ力強く踏み込むと、あとはフィニッシュの山頂まで、悠々と駆け上がった。マリア・ローザ着用で、未来の総合覇者としての記録写真は、あっさりと撮り終えた。

今大会ここまで4度の1級山頂フィニッシュを、すべて独走勝利で飾ったことになる。自身9度目のグランツール参戦で、初めてのステージ4勝。2年前のジロ総合覇者であり、過去5年間ツール・ド・フランスの総合トップ2の座を分け合ってきた最大のライバル、タデイ・ポガチャルの区間6勝まで、するとあと2つ。

「今後はローマも含めて全ステージで優勝を目指そうかな(笑)。本音を言えば、過去の記録についてはほとんど気にしていない。もちろんあと1ステージは勝ちたいと思ってる。ただチームメイトのダヴィデ(ピガンゾーリ)やセップ(クス)が勝ってくれたら嬉しいし、ダヴィデのマリア・ビアンカ姿も見たい。彼は僕のために全力を尽くしてくれたから、もしも僕が彼を助けられたら、きっと誇らしい気持ちになれると思うんだ」(ヴィンゲゴー)

むしろ総合2位以下に4分以上の大差をつけ、マリア・ローザをほぼ手中に収めた今、その視線はもう7月のフランスへと向いているのかもしれない。ローマでの祝祭は、ヴィンゲゴーにとっては、夏へと続く旅の通過点に過ぎない。

ちなみに2024年にポガチャルは生まれて初めて年間グランツール2大会を戦い、ジロとツールの同一年制覇「ダブルツール」を成し遂げた。対するヴィンゲゴーは2023年ツール総合優勝→ブエルタ総合2位、2025年ツール総合2位→ブエルタ総合優勝と、ハイレベルでのグランツール連戦には慣れている。

「このジロの期間中に、何らかの形で進化を遂げたというか、少しステップアップできたような感覚がある。だから今のところは、ツールに向けて、極めて順調に進んでいると思ってる」(ヴィンゲゴー)

文:宮本あさか

宮本あさか

宮本 あさか

みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。

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