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サイクルロードレース コラム 2026年5月31日

5度目の独走で、ヴィンゲゴーがジロを完全制覇。自身初のジロ総合優勝と、史上8人目の3大ツール全制覇に王手をかける|ジロ・デ・イタリア2026 レースレポート:第20ステージ

サイクルロードレースレポート by 宮本 あさか
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ジロ・デ・イタリア

第20ステージを制し、区間5勝のヴィンゲゴー

着実に、揺るぎなく。完全無欠の3週間。大会最後の山頂フィニッシュへ、ヨナス・ヴィンゲゴーハンセンは独りでたどり着いた。5度目のステージ勝利を悠々と楽しみ、2026年ジロ・デ・イタリア総合優勝をほぼ手中に収めた。ばら色の栄光を全身にまとい、永遠の都ローマへ凱旋を果たす。

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「なんだか少し信じられないような気持ちだった。もちろん……何が起こったのかはっきりと自覚はしていたけど、それでも僕にとっては、ものすごく大きな瞬間だった」(ヴィンゲゴー)

最後の激闘へ、鎮魂の思いを乗せて

50年前のフリウリ大地震犠牲者への黙祷で、今大会最後の山岳ステージは、静かに幕を開けた。

スタート直後には、温かく、どこか懐かしい風景も見られた。狙っていた初日マリア・ローザどころか──ピンクジャージのスポンサーはフリウリ=ヴェネツィア・ジュリア州だ──、ステージ勝利もマリア・チクラミーノも獲れなかったけれど、この日のために全力で走り続けてきた地元選手ジョナタン・ミランが、走行中に立ち止まり、沿道の家族や友達の熱烈な歓迎を受けた。

序盤のアタック合戦はどこか控えめだった。前日の激闘と、その後の長い移動の疲労を引きずり、その上いつもより早い時間に出発したせいかもしれない。季節外れの暑さに襲われ、体調管理に苦しめられた日々も、いよいよ終わりに近づいていた。

ジロ・デ・イタリア

果敢に飛び出した5選手

それでもスタートから10kmほどで、果敢に5選手が飛び出した。さらに5kmほど先で、さらに3人が後を追いかけ始める。ただ、いつしか2人に数を減らした後発組は、実に55kmもの長い追走を余儀なくされた。ようやく7人がひとつの逃げ集団にまとまったのは、スタートから70km付近。中間ポイントの直前だった。

3週間の成果、それぞれの勲章

多くの逃げ屋にとっては、仕上げの日。ただ後発組で必死に先頭に合流したマヌエーレ・タロッツィは、「中間ポイント賞」を確定することはできなかった。大会初日から繰り返し逃げてきた27歳は、ここで2位以内に入りさえすれば、最終表彰台を決められていた。しかしスプリントを仕掛けられ、3位通過に泣いた。最終日の中間ポイントを終えるまで、いまだ安心はできない。

5度の大逃げを試みた末に、第19ステージで山岳賞首位に立ったジュリオ・チッコーネは、この日はプロトン内に留まることを選んだ。もちろん展開次第では、山岳賞2位につけていたヴィンゲゴーに、再度逆転される危険性もあった。

チッコーネにとってありがたいことに、マリア・ローザは無理に青ジャージを独占しようとはしなかった。フィニッシュまで50km以上も残して、ど派手な独走態勢に持ち込むような真似もしなかった。最終盤に2回登場した1級ピアンカヴァッロの、1回目の登坂時は、ヴィスマは淡々と一定リズムを刻むだけだった。

途中で逃げから2人脱落してきたのも好都合だった。山頂直前でプロトン先頭に躍り出ると、チッコーネは6位通過で4ポイントを収集。これにてヴィンゲゴーに対するリードは51、残すポイントは50。最後の山を待たずして、マリア・アッズーラ争いに決着がついた。今大会4日目に生まれて初めてマリア・ローザに袖を通した31歳が、2019年大会に続き、人生2度目のジロ山岳賞を確定させた。

またチッコーネの山頂スプリントの勢いを利用して、イゴール・アリエタは前方へと飛び出した。土砂降りの雨の中で、第5ステージを勝ち取った若者は、山を下った先のレッドブルkmポイントを首位通過。気づけば総合でも同賞トップに踊り出た。いまだに3選手に逆転の可能性があるが……マリア・チクラミーノ争いを繰り広げていたジョナタン・ナルバエスが前日にリタイアし、とうとう4人になってしまったUAEチームエミレーツ・XRGは、「ローマ表彰台」の希望をつないだ。

絶対的なマリア・ローザ、最初から最後まで敵なし

マリア・ローザ争いにも、美しく終止符が打たれた。なによりヴィスマとヴィンゲゴーがそれを望んだ。ティモ・キーリッヒがステージ序盤のコントロールを担った。最大5分まで許した逃げとの差をティム・レックスが着々と縮め、1回目の登坂途中から作業を引き継いだヴィクトル・カンペナールツは、メイン集団を小さく削っていった。

ジロ・デ・イタリア

ヴィスマが序盤のコントロールを担った

「再び勝負に出ようと決めていた。最後の山岳ステージだったし、今日ですべてが決まる。だからステージに全力を注いだ」(ヴィンゲゴー)

少しだけひやりとする場面があった。1回目のピアンカヴァッロ登坂中に、前輪に違和感を覚え、ヴィンゲゴーが一瞬脚を止めたのだ。発射台体制も完璧とは言えなかった。2回目の登坂に入ると、バルト・レメンが先頭牽引に乗り出す。一方で前日のクイーンステージで大逃げに挑み、ツール、ブエルタに続き3つすべてのグランツールで区間勝利を手にしたセップ・クスが、早い段階で力尽きた。大会を通して「最終発射台」を務めてきたダヴィデ・ピガンゾーリもまた、作業に入る前に、後方へと落ちていく。

「セップは調子がベストではなかった。ダヴィデに関しては、今日はそもそも仕事をせずに、新人賞を狙うために自由に動く予定だった。代わりにバルトが素晴らしい仕事をしてくれた。正直に言うと、もう少し遅くアタックする予定だったんだ。でも、少し予定を変更して、僕が早めに仕掛けた」(ヴィンゲゴー)

ジロ・デ・イタリア

ラスト11km、ヴィンゲゴーが動いた

フィニッシュまで約11km。ピンク色のジャージが、メイン集団から飛び立った。フェリックス・ガルだけがほんの少し反応したが、いつも通り深追いはしなかった。依然として2選手が前を逃げていたが、残り10kmのアーチの下で回収し、素早く振り払った。あとは幾度も繰り返してきたように、孤独に、山頂を目指すだけだった。3週間通してライバルは皆無だった。ジロ最後の週末に王者の足元をすくいにやってくる「魔物」には、付け入る隙さえ与えなかった。

「ジロをヘトヘトの状態で抜け出すようであれば、ツールに向けて好ましい準備とは言えなかっただろう。でも、今の僕は、むしろジロを良い感触で終えることができている。大会全体を通して大きく成長できたとも感じている」(ヴィンゲゴー)

山頂ではもはや急ぐ必要はなかった。これまでの4度の勝ちは、フィニッシュラインギリギリまでペダルを全力で踏んだが、5勝目の今回は、バイクカメラの前でガッツポーズする余裕すらあった。それでもヴィンゲゴーは区間2位以下に新たに1分15秒差を押し付け、総合のリードは5分22秒へと開いた。

王者の影で、それぞれの戦い

今年のジロには1級山頂フィニッシュが5回組み込まれ、その5回すべてが、ヴィンゲゴーの独走勝利で幕を閉じた。そして5回とも、ガルは区間2位で終わった。また今ステージを含みジャイ・ヒンドレーが区間3位に4回入り、この動かしがたい順列は、そのまま2026年ジロの総合表彰台に反映された。

たとえ同じ結果に至ろうとも、その過程は決して単純ではなかった。ヴィンゲゴーが飛び出していった背後では、誰もが自分の居場所を守るために戦った。前ステージ終了時点で、総合3位と4位の差はわずか29秒。総合2位と3位、総合4位と5位の差も、それぞれおおよそ1分前後。1人でも調子を崩せば、順位は簡単に入れ替わる。

中でも総合3位ヒンドレーと総合5位デレク・ジー=ウェストが、猛烈な前進を続けた。ひとり2番手を走っていた総合2位ガルにさえ、途中で追いついた。勾配が最も厳しい残り9km付近で振り払った総合4位テイメン・アレンスマンを、完全に突き離すためだった。

幸いにもアレンスマンには、エガン・ベルナルがついていた。2019年ツール総合覇者にして2021年マリア・ローザの大チャンピオンは、チームメイトを背負い、粘り強く前を追った。決して離されず、決して諦めず。「その先に勾配が緩む場所があることは分かっていた。だから怖くはなかった」(アレンスマン)との言葉通り、残り2.5km、ネットカンパニー・イネオスの2人はとうとう前を行くライバルをとらえた。しかもアレンスマン曰く「本日のMVP」ベルナルは、フィニッシュ手前ギリギリまでエースを支えた。

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同時に戻ってきたガル、ヒンドレー、ジー

最終的には山頂スプリントでガルが2位に入り、同タイムでヒンドレーとジーが続いた。アレンスマンは3人からわずか4秒を失っただけで、総合4位として大会最後の山岳ステージを抜け出した。4年前のジロ王者ヒンドレーを除く3人は、それぞれにグランツール総合で自己最高位を更新。特に第2ステージの落車に巻き込まれ、あの日早くも1分を失ったジーは、「最後まで総合争いに加われたことを心から嬉しく思う」と晴れやかな気持ちで最終日を迎える。

「ステージ前は緊張したし、少し不安もあった。でもレースが一旦始まった後は、すごく気分が良かったし、これで終わりだと思うと本当にホッとした。3週間で僕らチームが成し遂げたことを本当に誇りに思う」(ガル)

全長14.5kmの山道では、白いジャージの奪い合いも繰り広げられた。9日間マリア・ローザを守った後、大会最終週はマリア・ビアンカ姿で奮闘し続けたアフォンソ・エウラリオに、連日ヴィンゲゴーのために力を尽くしてきたピガンゾーリが、ついに真正面から戦いを挑んだのだ。

ひとりで奮闘したピガンゾーリに対して、エウラリオの側には常に頼もしい大先輩の姿があった。2021年ジロ総合2位の大ベテラン、ダミアーノ・カルーゾは、可愛い後輩を「心配するな。ずっと一緒にいるから。一緒に戦おう」と励まし、常に適度なペースを刻み、時にピガンゾーリが加速すると、すかさず後輪に張り付き攻撃を握りつぶした。

ジロ・デ・イタリア

ヤングライダー賞を守り切ったエウラリオ

ラスト2km、エウラリオは自らの脚でライバルを振り切った。人生2度目のグランツールで、純白のジャージと総合6位という素晴らしい成果を手に入れた。今季限りで引退予定の38歳カルーゾは、人生最後のジロを総合9位で締めくくる。

永遠に終わらないトロフィーを、永遠の都で

ブルガリアから走り出した旅が、5月最後の日曜日、大団円で幕を閉じる。誰もがローマでは幸せな最終日を期待している。美しい周回フィニッシュと、華やかな表彰台。ヴィンゲゴーのジロ・デ・イタリア初優勝を、史上8人目にして現役唯一の3大ツール全制覇を、全世界のファンが心から祝福できるように。

「ローマではどんな気持ちを抱くのか、想像も付かない。でも、ホッとするというよりも、純粋な喜びを抱くと思う。これまでパリには2回、マドリードには……半回、勝者として入場したけれど、いつだって特別な感動を覚えてきた。明日もきっと特別な気分を抱くのだろう」(ヴィンゲゴー)

文:宮本あさか

宮本あさか

宮本 あさか

みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。

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