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【ツール開幕直前!タデイ・ポガチャル徹底分析vol.7】自転車界のビッグカップル。ポガチャルを支えるウルシュカ・ジガート
サイクルロードレースレポート by 福光 俊介ポガチャルを支える婚約者のウルシュカ・ジガート
ツール・ド・フランス4度目の頂点を目指すタデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ・XRG)の強さと人柄に迫るコラムの7回目。現代の自転車ロードレースシーンにあって、最高にして最強の男の歩みを振り返っていく。今回はポガチャルと内外両面で支えるウルシュカ・ジガートについて触れてみる。ウィメンズプロトンのトップライダーとしても知られる彼女とポガチャルとの歩みとは果たして。
ウィメンズプロトンのトップライダー、ウルシュカ・ジガート
ポガチャルの活躍を語るうえで、欠かせないひとりの女性。ウルシュカ・ジガードは、スロベニアの首都リュブリャナから北東へ100kmほど先のスロヴェンスカ・ビストリツァの出身である。
彼女もウィメンズプロトンのトップ選手で、2020年シーズン以降UCIウィメンズワールドチームを渡り歩いている。現在はAGインシュランス・スーダル チームに所属。2026年シーズンまでの契約を結んでいる。ナショナルチャンピオンになること5回(ロードレース1回、個人タイムトライアル4回)、2025年シーズンはツール・ド・スイス・ウィメンで個人総合5位と活躍。本記をお読みいただく頃には、ジロ・デ・イタリア・ウィメンを走っていると思われる。
ポガチャルとは2021年9月に婚約。現在はモナコを拠点に活動していて、いつだって2人で行動をともにする。プライベートであればポガチャルが所有するポルシェで出かけ、トレーニングでは一緒にメニューをこなす。年に数回は高地トレーニングを実施していて、両人がトップシーンで活躍する要因となっている。
ジガードは自身もトップサイクル選手として活躍中
常にポガチャルが寄り添う
もはや一心同体である。パンデミックに世界中が揺れた2020年の春、当時の自己最高となるパワー数値を記録するほどハードなトレーニングを行っていたポガチャルにチームがストップをかけたとき、ウルシュカもトレーニングを止めた。それからはピクニックを楽しんだり、自宅で過ごしたりと、2人の時間を優先した(詳しくはvol.2参照)。
2021年4月にはウルシュカが母を亡くしているが、そのときアルデンヌクラシックを戦っていたポガチャルは帰国を選択。連覇の期待がかかっていたリエージュ~バストーニュ~リエージュへの出場を取りやめ、ウルシュカや家族に寄り添った。
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極め付きはパリ五輪である。ロードレースの優勝候補筆頭格に挙げられていたポガチャルだったが、直前に閉幕したツールを戦い終えると五輪欠場を表明。表向きの理由は「極度の疲労」としたが、実際はウルシュカのスロベニア代表からの落選が決定的な要因と言われている。この年、ロードレースでも個人タイムトライアルでも圧倒的な力で国内女王に就いたウルシュカだったが、その後まさかの五輪選考外に。自国の自転車ならびに五輪関係者への怒りをポガチャルは堂々と公言し、ならばと自身もパリで戦わない姿勢を貫いた。「バカンスに行けるから、まあ良いのだけれどね」とは、ポガチャルの恨み節。
いつかは入籍を
そんなふたりだけれど、ウルシュカによれば「性格は正反対」なのだとか。「タデイは目立ちたがりで、いつだって自然体。流れに身を任せるタイプだから、どんなことがあってもストレスを感じない」とする一方で、「私は神経質。何事も常にクリアになっていなければならないし、すぐに不安になってしまう」。その違いが良いバランスを生んでいるのだろう。
実のところ、ウルシュカはポガチャルがツールをはじめとするビッグレースで戦っているのを見るのが怖いという。特にダウンヒルは心臓に悪いといい、「下りが始まったら家のことをするようにしているの。テレビの音は聞こえているけど、見ないようにしている。ちょっとでも目にしたらパニックになってしまいそうで…」と。また、この数年でたびたび見られるようになった長距離逃げについても、「100km近く平気で逃げているけど、私には考えられない。さすがに異常だよね」と笑う。
ひとたびレースを離れれば、「トレーニングよりもプライベートを優先させることもある」というふたり。休日であれば、朝9時頃まで寝て、ゆっくりと朝食を摂り、気が向いたところで自転車に乗り、お気に入りのコーヒーショップへ。そして夜になれば、友人たちとディナーに出かける。ポガチャルが次々とタイトルを手にするようになり、外野が「ウルシュカ、気を付けて! お金と名声は人を変えるから」と警告してくることも増えた。だけど、「タデイはタデイ。出会ったときから何ひとつ変わっていない。強いて言うなら、スポーツカーを乗り回すようになったくらいかな(笑)」。ふたりの日々は、充実するばかりである。
最強ポガチャルを語るうえで彼女の存在は欠かせない
婚約関係にあるふたりは、いずれ入籍をするつもりでいる。「いつ結婚するの?とよく聞かれます。私としては、タデイを“夫”と呼べる日が夢なのです。ただ、そんなに焦ってはいなくて、いつかその日が来る…くらいで考えています。もう私たちは家族に変わりないですからね」。
ふたりはこのほど、自国スロベニアで出版された絵本の主人公にもなった。タイトルは「POGI PA PIKA」。エルフや巨人、ドラゴンが住むおとぎの国をふたりが自転車でめぐるストーリーで、年代を問わずサイクリングの楽しさを知ることのできる内容だという。その出来にはふたりとも大満足だそうで、「サイクリングに限らず、人生の目標に向かって自信をもって突き進むことを大切にしてほしい」とはポガチャル。サイクルロードレース界きってのパワーカップルは、おとぎ話を通じてインスピレーションを与えるまでになっている。
文:福光 俊介
福光 俊介
ふくみつしゅんすけ。サイクルライター、コラムニスト。幼少期に目にしたサイクルロードレースに魅せられ、2012年から執筆を開始。ロードのほか、シクロクロス、トラック、MTB、競輪など国内外のレースを幅広く取材する。ブログ「suke's cycling world」では、世界各国のレースやイベントを独自の視点で解説・分析を行う
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