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ナルバエス29歳、エクアドルのナンバーワンに。アクシデントで目標修正したチームの期待に応える|ジロ・デ・イタリア2026
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チーム全員でつかんだ、3勝目とマリア・ローザ。ヴィンゲゴーがついに総合首位に躍り出る|ジロ・デ・イタリア2026 レースレポート:第14ステージ
サイクルロードレースレポート by 宮本 あさかマリア・ローザを纏ったヴィンゲゴー
6人の献身が、ピンクに変わった。チームメイトたちが完璧に計画を遂行し、ヨナス・ヴィンゲゴーハンセンがステージ3勝目と念願のマリア・ローザを射止めた。デンマーク人として史上初めて3つすべてのグランツールで総合リーダージャージに袖を通し、史上8人目の全3大ツール総合制覇へ向けて、確実な一歩を踏み出した。
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「マリア・ローザは自転車競技の中でも特別なジャージのひとつだから、本当に嬉しい。子どもたちの憧れをかきたてるジャージだし、僕もずっと夢に見てきた。本当にスペシャルな出来事だ」(ヴィンゲゴー)
大会前からヴィスマ・リースアバイクとヴィンゲゴーは、綿密な勝利計画を立ててきたという。まずは第7ステージのブロックハウスで勝利すること。チーム一丸となって目標を達成した。第9ステージは動く予定ではなかった。展開が味方し、2勝目を挙げた。
今大会最初の「5つ星」難関山頂ステージにも、黄色い隊列は完全に狙いを定めてきた。数日前から西ヨーロッパをヒートドーム現象が襲い、季節外れの暑さが5月末のプロトンを苦しめようとも、ヴィスマの足並みが乱れることはなかった。
パレード走行中からすでにチーム全員で最前列に陣取った。スタートフラッグが振り下ろされると同時に、黙々とリズムを刻み始めた。1人、また1人と飛び出していく選手たちなど、ほとんど気に留めなかった。スタート直後に始まる1級山岳に向かって、ただ自分たちの理想とするペースを貫いた。
「僕らが立てた計画は、まさしくチームのみんなが実行した作業そのもの。最初の上りではペースを維持し、そこからどんどんスピードを上げていくというものだった」(ヴィンゲゴー)
それでもヴィスマの制御をかいくぐり、最終的には23人の逃げができあがる。モビスターが4人、UAEチームエミレーツ・XRGが3人を送り込み、グランツール区間勝利経験者が9人も名を連ねた大きなグループは、メインプロトンから最大4分弱のリードを奪った。
入り乱れる思惑──逃げ集団の副賞ジャージ争奪戦
美しいアオスタ渓谷で逃げ集団の副賞ジャージ争奪戦
ヴィスマ全員が、ただヴィンゲゴーのマリア・ローザ獲りのためだけにペダルを回した一方で、逃げ集団内では複数の思惑が交錯していた。
たとえば1つ目の山を下った先の中間ポイントでは、すでに今大会区間3勝を誇るジョナタン・ナルバエスが先頭通過をさらった。初日からマリア・チクラミーノを着るポール・マニエの同僚、ジャンマルコ・ガロフォリが必死に邪魔を入れてきたが、軽々と振り払った。ナルバエスはこの時点でマニエを1ポイント上回り、ステージの終わりには、望み通りにポイント賞ジャージを受け取った。
1週間前からヴィンゲゴーが着ているマリア・アッズーラを巡っては、複数の選手が争奪戦に加わった。なにしろステージ上には、全部で5つの山岳が待ち構えていた。
ヤルディ・ファンデルリーは早めに飛び出す作戦で、1つ目からこつこつ収集に励んだ。区間1勝のイゴール・アリエタもあちこちでポイントを重ねた。ジロとツールで山岳ジャージを持ち帰ってきたジュリオ・チッコーネは、3つ目と4つ目の山頂で、真のクライマーとしての爆発力を見せつけた。
結局は区間を制したヴィンゲゴーが、またしても大量に山岳ポイントを積み上げ、通算161ポイントで青いジャージを守ることになる。ただこの日だけで62ポイントを獲得したファンデルリーが、チッコーネを2ポイント差で抑え、トータル77ポイントの2位に浮上。翌第15ステージでは……たとえ「ヴィンゲゴーの代理」であろうとも、プロ入り3年目にして初めて、ステージレースの副賞ジャージ姿でスタートラインに並ぶ。
もちろん今大会通してアグレッシブな走りを貫くモビスターは、ブエルタ総合表彰台2回のエンリク・マスとエイネル・ルビオを中心に果敢にステージ優勝を目指した。総合順位のジャンプアップを目論むヤン・ヒルトやダビ・デラクルスは、逃げ切りの可能性に全力を注いだ。
チーム総合首位を争うレッドブル・ボーラ・ハンスグローエからはアレクサンドル・ウラソフが、チーム創設以来初のグランツールに挑むユニベット・ローズ・ロケッツからはワウト・プールスが、最後まで必死に食い下がった。
そして第9ステージでも長時間逃げた果てに、残り1.7kmで希望が潰えたチッコーネは、この日も最後の1人となってあがき続けた。しかしラスト5.2km、無情にも逃げは終了した。ヴィスマが引き連れてきた総合上位勢に、先頭を譲り渡した。
6人のリレー──ヴィスマのアシストたちの完璧なる献身
チーム一丸となってヴィンゲゴーのためだけに走っていた
「本当に感動的だった。チームメイトたちは1日中、力強く、しかもモチベーション高く仕事をしてくれた。彼らの走りを誇りに思うし、恩返しができて嬉しい」(ヴィンゲゴー)
ヴィスマはメイン集団の先頭を走り続けた。全長133kmのステージを、文字通り最初から最後まで。アシスト6人全員が、それぞれの持ち場で全力を尽くした。
まずはティモ・キーリッヒが、集団に統制を敷いた。次はティム・レックスが、最後の1滴まで力を絞り尽くし、逃げとのタイム差を3分〜3分半に留めおいた。残り45kmからはバルト・レメンがスピードを一段上げ、残り16.5km、最後の山に入ると、ヴィクトル・カンペナールツが本格的にメイン集団をふるいにかけていった。
残り10kmを切ると、セップ・クスが前を引く番だった。長らく山岳「最終」アシストとしてチームをグランツール総合7勝に導き、2023年ブエルタでは自ら頂点に立ったピュアクライマーの加速で、マリア・ローザ姿で長らく奮闘してきたアフォンソ・エウラリオもついに脱落していった。
経験豊富なウィルコ・ケルデルマンを大会5日目に失ったヴィスマだが、今季加入のダヴィデ・ピガンゾーリが、重要な任務をここまで完璧に果たしてきた。残り6.7kmでクスの後を継ぐと、すでに一桁にまで数を減らしていたライバルたちを、高速で痛めつけた。さらにはヴィンゲゴーを、勝利へと解き放った。まさに山岳「発射台」のごとく。
「彼が牽引している間に、ライバルのほぼ全員が引き離された。おかげで僕はもうアタックする必要などないくらいだった。本当にありがたかった」(ヴィンゲゴー)
一撃、二つの栄冠──ヴィンゲゴーが3勝目とマリア・ローザへ
ヴィンゲゴーが仕上げに入る時が来た。ピラの山頂まで残り4.5km。ただ一発の加速で十分だった。すべてを後方へと置き去りにし、ピンク色の栄光へと独り突き進んだ。
ヴィンゲゴーの加速に誰もついてこれなかった
「攻撃は常に多少なりとも即興的なもの。今回は終盤の勾配がきつくなったところで攻めようと考えていた。最後まで全力で走り続けた。厳しい上りだったし、なにより暑かった。こんな日は、最後には、誰もが限界に達しているものだ」(ヴィンゲゴー)
3度の独走で、3度のステージ優勝。グランツール1大会での区間3勝は、昨秋のブエルタに続き自身2度目で、グランツールの区間通算勝利は12に伸ばした。また1勝目は「ジロ区間初勝利」で、2勝目は「キャリア50勝目」でそれぞれに特別な味わいがしたが、この3勝目は「マリア・ローザ」の喜びが重なった。
2022年ツールは第11ステージで、2023年ツールは第6ステージでマイヨ・ジョーヌをまとい、2025年ブエルタでは第1週に2度手放した挙句、大会10日目に完全にマイヨ・ロホを掌握したヴィンゲゴーにとっては、ちょっぴり遅めのマリア・ローザ着用でもある。
「おそらく今回の勝利は、ずっと僕の記憶に残るものになるだろう」(ヴィンゲゴー)
全3大ツールのリーダージャージを1日でも着た経験のある選手は、100年を超える自転車史の中でも、ヴィンゲゴー以前にはわずか26人しか存在しない。現役ではただプリモシュ・ログリッチとリチャル・カラパスだけだ!
山の順列はヴィンゲゴー、ガル、ヒンドレー
ヴィンゲゴーは総合首位に立つとともに、総合2位以下に対して早くも2分26秒ものアドバンテージを築いた。
2位にはエウラリオが踏みとどまった。9日間楽しんできたマリア・ローザは手放したが、翌日からは純白のジャージを守る戦いに切り替える。新人賞のリードは1分56秒だ。
フェリックス・ガルは、ヴィンゲゴーが独走勝利を果たした第7ステージ、第9ステージに続く3度目の2位に入り、今ジロのナンバー2クライマーであることを改めて証明した。
この日もガルは敵の加速に素早く反応した。ただ瞬時に「ヨナスを追いかけるのはリスクが大きすぎる」と判断。自分のリズムで上るほうを選んだ。最終的にはヴィンゲゴーから49秒遅れて、単独区間2位でフィニッシュ。自身初めての「総合表彰台乗り」を現実目標に掲げる28歳は、それ以外の総合ライバル全員に確実にタイム差を押し付け──特に第10ステージの平地TTで総合逆転を許したテイメン・アレンスマンを、改めて逆転し──2分50秒遅れの総合3位につける。
全てのジロ区間優勝で独走、圧倒している
区間上位3人はブロックハウスと完全に同じ顔ぶれだった。つまりジャイ・ヒンドレーが、58秒差のステージ3位に駆け込んだ。1週目の終わりに体調を崩し、タイムを失っていた後輩ジュリオ・ペリツァーリが、最後まで2022年ジロ総合覇者のために力を貸した成果だった。ヒンドレーは総合4位アレンスマン(3分03秒差)に次ぐ5位(3分43秒差)に、ペリツァーリも6位(4分22秒差)に順位を上げた。
すべてが予定通りに進めば、大会3週目を、ヴィンゲゴーはピンクジャージとともに迎える。2週目の最終日にチクラミーノは交代するかもしれないが、ミラノで繰り広げられる平地ステージは、総合順位には一切の影響を及ぼさないはずだ。
「まだジロの決着はついてない。最終週にはまだ厳しい山岳ステージが3つ残っているし、誰にでも調子の悪い日は訪れる。集中し続けなきゃならない。この素晴らしいジャージのために、戦い続けなければならない。そして、このジャージでローマにたどり着けたら……僕にとっては夢のようなことなんだ」(ヴィンゲゴー)
文:宮本あさか
宮本 あさか
みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。
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