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サイクルロードレース コラム 2026年5月30日

スーパーアシスト、クスが最難関を制しグランツールでステージ全勝利。エースのヴィンゲゴーは総合優勝に王手!|ジロ・デ・イタリア2026 レースレポート:第19ステージ

サイクルロードレースレポート by 山口 和幸
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ジロ・デ・イタリア

セップ・クスがタッポーネ(クイーンステージ)を制す

第109回ジロ・デ・イタリアは2026年5月29日、フェルトレ〜アッレゲ(ピアニディペッツェ)間の151kmで第19ステージが行われ、チーム ヴィスマ・リースアバイクセップ・クス(米国)が2位に13秒差をつけて初優勝。総合成績ではチームメートのヨナス・ヴィンゲゴーハンセン(デンマーク)が総合2位フェリックス・ガル(オーストリア、デカトロン・CMA CGM チーム)やジャイ・ヒンドレー(オーストラリア、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ)の反撃を許さず首位を守った。

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チッコーネが山岳賞獲りに動きを見せた!

針のような岩山が屹立するドロミテ山塊を横断する、登り下りだけのコース。クイーンステージと呼ばれる2026年ジロ・デ・イタリアの最難関区間がやってきた。平坦部分はスタートして50kmほどしかない。獲得標高は約5000mで、しかも最後の100kmに集中している。58.7km地点にパッソ・ドゥラン(最大勾配14%)、72.9km地点にコイ(最大勾配19%)、82.0km地点にフォルチェッラ・スタウランツァ(最大勾配10%)、そして今大会最高峰のチーマ・コッピに指定された標高2233mのパッソ・ジャウ(最大勾配14%)が101.6km地点、パッソ・ファルツァレーゴ(最大勾配10%)が122.2km地点で連続登坂を息つく暇もなく駆け抜け、その後、ピアニディペッツェのゴールまで最後の5kmが続く。

最後の5kmは勾配がほぼ10%前後で推移し、中腹で最大15%に達する。狭く曲がりくねった道は、8つのヘアピンカーブといくつかのハーフターンを繋ぎながら登っていく。最後の1kmは勾配値11%だ。

岩山がくっきりと浮かび上がるほどの快晴、気温は穏やかな24度。2日前に区間優勝したEFエデュケーション・イージーポストのミケル・ヴァルグレン(デンマーク)ら2選手が不出走で、154選手がスタートしてペースはすぐに上がった。25km地点で集団は一体となって前進。ポイント賞2位のジョナタン・ナルバエス(エクアドル、UAEチームエミレーツ・XRG)は、チームの声明によると前日にチームバスのステップでケガをしたようで、この日はスタートしたもののレース序盤で棄権してしまった。

ジロ・デ・イタリア

この日はクイーンステージ、戦いの舞台は恐ろしきドロミテ山地

38km地点でピナレロ・Q36.5プロサイクリング チームのクリス・ハーパー(オーストラリア)ら5選手が抜け出す。44km地点で11選手が追いついてきた。レース開始1時間後の平均速度は46.700kmだった。

58.7km地点の最初の山岳賞ポイント、パッソ・ドゥランで積極的な走りを見せたのがリドル・トレックのジュリオ・チッコーネ(イタリア)だ。スタート時点で山岳賞は214点のヴィンゲゴーがトップ、チッコーネは133点でこれに続いていた。しかしこの日は山岳の連続で、最初のパッソ・ドゥランで1位通過なら40点、パッソ・ジャウでは1位通過50点と大量得点が設定されていた。

山岳賞の逆転を狙ったチッコーネは、ヤルディ・ファンデルリー(オランダ、EFエデュケーション・イージーポスト)、エイネル・ルビオ(コロンビア、モビスター チーム)、ダミアーノ・カルーゾ(イタリア、バーレーン・ヴィクトリアス)、ジュリオ・ペリツァーリ(イタリア、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ)、クス、ハーパー、アルベルト・ベッティオル(イタリア、XDS・アスタナ チーム)、そして他の逃げ集団の選手を率いてこの登りを通過。69km地点で第1集団は26選手となり、マリア・ローザ集団は2分10秒遅れとなった。

チッコーネとルビオが70km地点でアタック。72.9km地点のコイはチッコーネ、ルビオの順で通過。ファンデルリーら残りの追走選手は30秒遅れとなった。82.0km地点のフォルチェッラ・スタウランツァもチッコーネがルビオに先行して山岳を通過。続いてハーパーが12秒遅れで追いかけ、83km地点でハーパーがチッコーネとルビオの先頭集団に加わる。95km地点でマリア・ローザ集団は2分00秒差と大逆転を許さない展開でレースをコントロールした。

チーマ・コッピのパッソ・ジャウではチッコーネがルビオ、チームメートのデレク・ジー=ウェスト(カナダ)、クス、ペリッツァーリらを抑えてチーマ・コッピ特別賞を獲得。マリア・ローザを擁するメイン集団は2分30秒遅れ。残り40km地点(111km地点)で先頭は8選手、マリア・ローザのメイン集団は2分55秒遅れ。残り35km地点(116km地点)で2分50秒遅れ。

ジロ・デ・イタリア

単独アタックで先行するチッコーネ

22.2km地点のファルツァレーゴ峠でチッコーネはルビオに先着されたが、すでに大量の山岳賞ポイントを獲得し、山岳賞には執着を見せていないヴィンゲゴーを累計で逆転していた。123km地点でチッコーネが単独アタックを試みた。141km地点(残り10km)でチッコーネは7人の追走集団に1分00秒の差をつけてリード。メイン集団は2分40秒遅れていて、8選手によるステージ優勝争いが本格化した。

149km地点でクスはチッコーネに追いつき、追い抜く。ラスト1km地点のフラム・ルージュ(赤い逆三角形の旗)を過ぎると、クスは独走でフィニッシュラインへ。最後はクスが4時間28分33秒(平均速度33.736km)でステージ優勝。ジーが13秒遅れ、チッコーネ36秒遅れ。後方から追い上げてきたガルとヴィンゲゴーが39秒遅れで一緒にゴール、ヒンドレーは43秒遅れ、カルーゾは1分06秒遅れだった。

最大のモチベーションはヴィンゲゴーを助けること

「ステージ優勝は第一の目標ではなかった。最大の目標はヨナス・ヴィンゲゴーがマリア・ローザを獲得するのを手助けすること。それでも先日、逃げ集団に入るチャンスが与えられると示唆された時、その機会を逃すわけにはいかないと思っていた」とクス。

すでにツール・ド・フランス1勝、ブエルタ・ア・エスパーニャ2勝を果たしているクスは、この日の勝利で3大グランツールすべてにおいてステージ優勝を果たした118人目の選手となった。ヴィンゲゴーも第7ステージの勝利で、同じくグランツールすべてでステージ優勝を達成していた。この記録を達成した米国選手としては、タイラー・ファラーに続く2人目の快挙だ。

「ずっと夢見てきたことだけど、年々難しくなっている。自分は成長し、強くなっていると思うけど他の選手たちも同じ。ジュリオ・チッコーネに追いつく自信はまったくなかった。彼が1分のリードを奪った時は、少し気が落ちた」

見えないほど先行したチッコーネに近づけるようにクスはできる限り速く登ることに集中しようとした。得意とする急勾配の登りだ。ゴールラインの500m手前で母が応援してくれると分かっていた。母と家族全員に感謝の気持ちを伝えたいとペダルを踏む。年に数週間しか会えない家族のためにクスは全力で勝利を目指した。

ジロ・デ・イタリア

とても苦しんだが、後悔なくフィニッシュしたかった

「正直、チッコーネに追いつけるとは思っていなかった。最高の脚力があったのに、レース展開にとても苛立った。彼についていくべきだったし、テクニカルな下り坂だと知っていたのに。ステージ優勝のチャンスを無駄にしてしまったと思ったけど、気持ちを切り替えた。最後の登りは脚力の試練になるだろうと思っていた。中腹で彼を見た時、追いつけることに気づき、再び優勝争いに加われると思った。最後の1kmはかなり深く攻めた。もう作戦どころではなく、おそらく見栄えはよくなかったでしょう。とても苦しんだが、後悔なくフィニッシュしたかったんだ」

2026ジロ・デ・イタリアでの最大の任務は、ヴィンゲゴーを助けることだ。ライダーとして、それがクスにとって最大のモチベーションであり、最高の力を発揮できる源だった。アシスト役を務めることは、ライダーとしての自分自身の最高の姿だと信じている。ヴィンゲゴーはこの日39秒遅れで無事にゴールして総合1位を守りきったが、すぐにクスに駆け寄ってとても喜んでいたシーンは、ヴィンゲゴーの人柄をよく表している。

「チーム ヴィスマ・リースアバイクの内部に懐疑的な人は常にいるもので、2023年に3人の異なる選手で3つのグランツールすべてを制覇した後では、同じように成し遂げるのは難しいだろうと人々が考えていたのは理解できる。でも私たちはまだうまくやっている。私たちにとって、流れとは自転車を走らせることで、考えすぎないこと。それによって、私のようなアシスト選手にチャンスが生まれる。私たちは常に教科書通りの戦術でレースをするわけではないけど、優秀で献身的な選手がいっぱいいるんだ」(クス)

往年のジロ・デ・イタリアのビデオを見るのが好きだというクス。この日は最難関ステージで、その優勝者には伝説の名選手であるパンターニ賞が与えられたが、「彼がここでも優勝したことを知らなかった。私は自転車競技の歴史家ではないけど、6000mの登りと200kmを超える山岳ステージなんてスゴい。今日はそれほどではないけどが、素晴らしいフィニッシュだった」と笑顔を見せた。

ジロ・デ・イタリア

山岳賞トップになったチッコーネ

チッコーネは果敢に攻めたが、最後はクスとジーに追い抜かれた。しかしチッコーネは山岳賞ポイントを大量に獲得。第4ステージでマリア・ローザを着用して以来、チッコーネが目標としていた山岳賞のマリア・アッズーラをヴィンゲゴーから引き継いだ。

チッコーネがジロ・デ・イタリアの山岳賞で首位に立ったのは、2019年に最終的な山岳賞を獲得して以来のことだった。

ポガチャルに匹敵するヴィンゲゴーの横綱ぶり

ヴィンゲゴーは総合2位ガルと、新たに3位に浮上したヒンドレーとのタイム差をそのままで維持することができて満足していた。

過去10年間で19ステージを終えた時点で、総合首位が2位に4分以上の差をつけたのはわずか2人。2024年にタデイ・ポガチャルがダニエル・マルティネスに7分42秒差、そして今回のヴィンゲゴーがガルに4分03秒差をつけている。

「セップ・クスはいつもみんなのために自分を犠牲にし、見返りを求めない。彼になにかお返しできるのは本当にうれしい。彼は私のグランツールでの勝利すべてに立ち会ってくれた。彼にチャンスが巡ってきたことをとてもうれしく思う」とヴィンゲゴー。

ジロ・デ・イタリア

勝利を分かち合うヴィンゲゴーとクス

「ジロ・デ・イタリアの序盤でその可能性について話していた。私にとってチーム ヴィスマ・リースアバイクはまさに夢のチームだ。全員が最高のコンディションで、私のため、そして今日はセップがステージ優勝するために全力を尽くしてくれた。今日の勝利は、これまでのジロ・デ・イタリアにおけるトップ3に入るハイライトだ。これでチームは5ステージ優勝、マリア・ローザも4分のアドバンテージで獲得した。明日の大きな目標はマリア・ローザを守ることだ。その後、他になにができるか見てみよう。ダヴィデ・ピガンゾーリ(イタリア)がヤングライダー賞のマリア・ビアンカを獲得できたら最高だ。彼は今日1分半もタイムを縮めたからね」

最終日前日の第20ステージは最後の山岳区間。ヴィンゲゴーが4分のアドバンテージを守れば初の総合優勝はほぼ確実になる。ヤングライダー賞のみが大混戦で、大会前半に大活躍したアフォンソ・エウラリオ(ポルトガル、バーレーン・ヴィクトリアス)とピガンゾーリとの差は1分03秒。こちらも要チェックとなるステージだ。

文:山口和幸

山口 和幸

ツール・ド・フランス取材歴30年超のスポーツジャーナリスト。自転車をはじめ、卓球・陸上・ボート競技などを追い、東京中日スポーツ、ダイヤモンド・オンライン、LINEニュース、Pressportsなどで執筆。日本国内で行われる自転車の国際大会では広報を歴任。著書に『シマノ~世界を制した自転車パーツ~堺の町工場が世界標準となるまで』(光文社)、講談社現代新書『ツール・ド・フランス』。青山学院大学文学部フランス文学科卒。

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