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【ツール・ド・フランス2022 レースレポート:第16ステージ】亡き弟との夢が成就 40km独走のユーゴ・ウル「10年かかったけど、僕は勝ったよ!」
ツール・ド・フランス by 福光 俊介頂上ではヨルゲンソンたちと20秒差だったウルだが、下りで加速。対照的に、ヨルゲンソンは左コーナーでタイヤを滑らせ落車してしまった。すぐに戦列には戻ったけれど、ウルとの差は広がる一方だし、やっぱりウッズが後ろについている。イスラエル・プレミアテックの日であることは、フィニッシュが近づくにつれてはっきりとしてきた。
「テクニカルなセクションでタイム差を広げることができていたみたいだね。タイム差が1分と聞かされた時に、これはいけると思ったよ。1つ怖かったのが脚の痙攣。そうはならないでくれと祈りながらペダルを踏んでいたんだ」(ウル)
今大会3度目の正直。第9ステージでは132km逃げていたし、第13ステージでは147km逃げて勝利まであと一歩に迫った。優勝を逃したときは悔しさよりも満足感が先を行ったけど、もう一度トライしてみようと思っていた。そしてそれが実った。十分なリードを確保して、フォアのフィニッシュ地点へ。大観衆と歓声を独り占めした。
ユーゴ・ウル
「最後の下りからフィニッシュまでは怖くて後ろを振り向けなかった。ただただ、全力で踏み続けただけだったよ。ヨルゲンソンが落車したことを把握していなかったから、追いつかれるかもしれないという思いでひたすら逃げ続けたよ」(ウル)
ここに至るまでの時間は長かった。もともとはカナダ・ケベック州の大学を卒業したら、警察官になるつもりだった。ツール・ド・フランスは子供のころからテレビで観ていたけど、自分が走るものだとは考えもしなかった。でも、「なんとなく走り続けたくて」ロードレースを続けた。地元で走ってキャリアを終えようと思っていた頃に、チームが事実上の解散。それを機にヨーロッパへ渡ることにした。
その矢先、弟が事故に遭った。ランニング中に飲酒運転の車にはねられたのだ。
「アージェードゥーゼール ラモンディアール(当時)のチームキャンプを終えて、いったん帰国していた時だった。ランニングに出た弟が帰ってこなくて、心配で近所を探していたら、道で倒れていたんだ。忘れもしないよ」(ウル)
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