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笑うマイヨ・ジョーヌの思考回路「勝ちにトライする動きができなかったら失望する」|ツール・ド・フランス 2022
ツール・ド・フランス by 宮本 あさか他の選手が苦悶の表情を浮かべる中、うっすらと笑うポガチャル
笑うマイヨ・ジョーヌ
「本当は自分としては、明日マイヨ・ジョーヌを獲りたかったんだけど……なんとなく流れで勝ちに行っちゃった!」
第6ステージの勝利で早々と黄色に着替えたタデイ・ポガチャルは、記者会見でひどくいたずらっぽく語った。
「少なくともマイヨ・ブラン姿で区間を勝ってくれてよかった」と、すでに正式な受賞者が純白のジャージをまとってシャンゼリゼを走ることを諦めているらしい新人賞スポンサーの、複雑な胸の内を知ってか知らずか。まるで生まれて初めて勝利を手にした少年のように、フィニッシュラインでは大はしゃぎのウィニングポーズさえ披露した。
翌日のラ・シュペル・プランシュ・デ・ベル・フィーユでは、フィニッシュぎりぎりでヨナス・ヴィンゲゴーを抜き去ると、今度は黄色いジャージで人差し指を突き上げた。
「ずっと前からここでの勝利を狙っていた。それに今日はスペシャルな1日なんだ。がん研究のための基金を立ち上げ、特別限定シューズを履いて臨んだ。だからこうして勝利を手に入れられたことを誇りに思うし、なによりマイヨ・ジョーヌ姿で勝てたなんて完璧さ」
こう代表インタビューで1回、各国テレビ局・ラジオ局用のミックスゾーンで最低5回、さらには記者会見で1回、ポガチャルは同じセリフを真摯に繰り返した。また「ヨナスはすごく強かったから、僕は追いつくために全力を出さなきゃならなかった」と、おそらく1年前も渡り合ったライバルに敬意を表するコメントを付け足すことも忘れなかった。
生まれて初めてのグランツールだった2019年ブエルタ・ア・エスパーニャでは、いまだ会見慣れしていなかったせいか、ほとんど「はい」か「いいえ」でしか答えられなかったというのに。もしくは、ぽかん、としたまま黙り込んでしまったり。今でもたしかに決して饒舌なほうではない。それでも、わずか3年で、23歳の青年はチャンピオンとしての品格と責任感を身につけた。
ちなみにポガチャルがツールを制した過去2年間は、コロナバブルにすっぽり覆われていたせいで、代表インタビュー(区間勝者と全ジャージ着用者)と記者会見(区間勝者とマイヨ・ジョーヌのみ)のみ解放されていた。つまり強者たちにとって、フィニッシュ後に束縛される時間は倍以上も増えた。
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