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矢野雅哉(カープ)
9月1日の東京ヤクルト戦で矢野雅哉がランニングホームランを記録しました。カープ2点リードで迎えた6回。2死2・3塁の場面で矢野が放った飛球は背走するセンターのグラブに当たり、フェンス際まで転がる間に一気に本塁まで走り、最後はヘッドスライディングで、自身野球人生初となるランニング本塁打となりました。
前日に今季1号本塁打を放った矢野は、2試合連続本塁打で自己最多の年間2号に並びましたが、この本塁打は球団8888号となる記念すべきもので、現役時代に自身も球団6666号を記録している新井貴浩監督も「何か持っている」と今季ブレイクした25歳を讃えました。
俊足を飛ばして2塁、3塁を回るたびにスタンドの歓声が大きくなっていくランニングホームランは、年間でも1本か2本、見られるかどうかというものですが、これまでカープ、そしてマツダスタジアムに関するこのエキサイティングなプレーを振り返ってみましょう。
カープ選手のランニングホームランは2013年の丸佳浩以来、11年ぶりの記録となります。8月2日に神宮球場で行われた東京ヤクルト戦。10-4と大量リードで迎えた5回表、1死走者なしから背番号63が放った一打は、右中間をフェンス直撃した打球が大きく弾んで外野を転々とする間に一気に本塁まで達するランニング本塁打となりました。
当時高卒6年目のシーズンだった丸は、最終的に自己最多の140試合に出場して、いずれもチームトップとなる打率.273、14本塁打、58打点をマーク。29盗塁で初タイトルとなる盗塁王に輝き、不動のレギュラーの座を固めたシーズンとなりました。
マツダスタジアムでのカープ選手のランニング本塁打はその1年前、2012年に天谷宗一郎が記録しています。8月25日の阪神戦、6-3と3点リードで迎えた7回裏、2死2塁の場面で天谷が放った打球は左中間へ。前目に守っていたレフト金本知憲の頭上を超えてフェンスまで到達する間に、快足を飛ばしてホームベースに滑り込みました。
当時は、旧市民球場から大幅に広くなったマツダスタジアムで、赤松真人とともに快速の外野手として新球場の象徴的存在だった天谷ですが、この日はカープとしては珍しいオールドユニフォームを着用した試合で、1975年の初優勝時のスタイルでのスタジアム初の快挙達成となりました。
カープ以外の選手では、2017年に上本崇司の実兄である阪神・上本博紀が記録。投手は中田廉で、レフト松山竜平が打球を追ってフェンスに激突し、クッションボールが大きくセンター方向へ転がる間のものでした。オープン戦では2020年に福岡ソフトバンクの周東佑京がコロナ禍に入った無人のスタンドで、自慢の俊足を飛ばしてダイヤモンドを一周しています。
そしてもう1本、今となってはある意味、感慨深いランニングホームランがありました。2018年11月に行われた日米野球で、侍ジャパンの代表として出場していた当時、埼玉西武所属の秋山翔吾が、MLB選抜を相手にレフト線を抜けるランニング本塁打を放っています。
この試合は、当時ロサンゼルス・ドジャースに所属していた前田健太の凱旋試合として話題となっており、大瀬良大地との先発対決が実現しました。
秋山のランニング本塁打は2点ビハインドの8回で、投手はコリン・マキュー(当時アストロズ)、レフトのファン・ソト(当時ナショナルズ)のダイビングも届かず、打球がフェンスまで到達する間に激走。ダイヤモンドを1周してホームベースを駆け抜けた秋山を出迎えたのは、4年後にチームメイトになる菊池涼介でした。
野球の数あるプレーの中でも、もっともスリリングなものであるランニングホームラン。俊足の選手が多いカープなら、もっと見たいプレーと言えるでしょう。
文:大久保泰伸
大久保泰伸
フリーライター、編集者。1969年広島市生まれ、現在は神奈川県在住。出版社勤務を経て、20世紀の終わり頃に独立。別冊宝島野球シリーズの執筆、編集や広島などのOBの著書の編集協力などを行い、同社のプロ野球選手名鑑は創刊時から現在まで関わる。記者活動は2009年にベースボール・タイムズ紙の広島担当でスタートし、15年から野球専門サイトのフルカウントで広島、18年からはDeNA担当も兼務した。
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