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メジャーリーグに限らず、マイナーリーグや独立リーグを含む米国のプロ野球の各球団は、毎日、毎晩と言っていいほど頻繁に、本拠地球場で何らかのイベントを行っている。
ボブル・ヘッド人形をはじめとするグッズ類の配布だけではなく、国歌斉唱や始球式も完全にイベント化しており、入れ代わり立ち代わり、多種多彩な人々が招かれてはそのイベントの中心となる。
その中でも最近、特に目立つのが軍人を称えるイベントだ。
いわゆる「9・11(ナイン・イレブン=同時多発テロ)」以来、そういうイベントが増えた。
いや、「増えた」などという表現が控え目に聞こえるほど、国歌斉唱や始球式並みにほぼ毎日、日常的に行われるようになった。
戦場から帰ってきた軍人が招かれることもあれば、ハリケーン被害の救済活動に当たった軍人、第二次世界大戦やベトナム戦争などを経験したOBから現役の軍人まで、新旧様々な年代の軍人やその家族が野球場に招待され、メジャーリーグの観客の前で称えられている。
いつだったか、イラクやアフガニスタンで活躍した爆弾処理班の女性兵士と軍用犬が招待されたミーガン・レヴィー(ケイト・マーラ主演の「Megan Leavey」で映画化された)という女性兵士がヤンキースタジアムに招待されたこともあったが、メジャーリーグではそういうイベントがどの球場でも頻繁に行われている。
かつてはレヴィー元伍長のように「ニュース性の高い物語を持った軍人」だけが招かれていたが、今では「観客の中におられる軍人の皆様、立ち上がってください。彼らに拍手を送りましょう」という場内アナウンスが行われるようになった。
たまたま観客として試合を見に来ていた新旧様々な世代の軍人も、野球関係者の気持ちとして称えられるようになったのだ。
それは「Our Heroes=我らが英雄」に対するTribute(賛辞)であると同時に、彼らをRecognize(認識)する大事なイベントとなっている。
メジャーリーグの球場にいるすべての人々が、それらのイベントを通じて自然と「戦争や災害時に、誰が国民のために働いているのか?」と認識するのだ。
そういうイベントが行われると、選手たちも参加してこう言う。
「我々野球選手はファンから応援されるものだが、本当に応援されるべきは、彼らのような本当の英雄なんだ」
去年、ヒューストンでハリケーン被害があった時も同じだった。
被災地の救援活動に従事した軍人たちが、ハリケーン被害で中止になっていた試合が再開された日に招かれて、観客から拍手を送られた。彼らは「リアルタイム」で救援活動を行ったばかりであり、その労を労われて野球場に招かれたのだ。
メジャーリーグはその際、被災地に多額の寄付金をしたことを発表したが、同時に救済活動に関わったすべての人々にはっきりと、感謝の意を表したわけだ。
考えてみれば、メジャーリーグのTribute(賛辞)とRecognize(認識)のイベントは、軍人に対してだけではなく、警察や消防、学校の先生や様々な慈善事業に従事する人々に対しても行われている。
メジャーリーグ30球団×公式戦162試合=計4,860試合が行われる間、日常的に「世の中を支える人々」への感謝が溢れている。
不思議なもので、そういう光景を毎日、目にしていると、米国人でもないのに米国の軍人や警察や消防、あるいは学校の先生や慈善活動を行う人々に対して感謝の気持ちが芽生えてくる。
メジャーリーグの試合前のイベントと言えば、大統領や芸能人が登場して始球式だの国歌斉唱だのを行うものだという印象もあるが、それらはほんの一部に過ぎない。
心が和む派手な始球式や国歌斉唱はエンターテイメント(娯楽)としては大事だけれど、それらは社会的には重要なことではない。メジャーリーグは社会に貢献している人々へ「感謝の意」を表することで、社会貢献をすることが重要だと考えているのだと思う。
日本でも台風や地震の被害に遭った人々が大勢いると聞く。
それらの自然災害が起これば、必ず自衛隊をはじめ、大勢の人々が救援活動を行うことになると思う。それらの人々が国歌斉唱や始球式のように日常的に、プロ野球の試合前のイベントなどでTribute(賛辞)され、一般の人々に広くRecognize(認識)されていれば素晴らしいことだと思う。
もしも、まだそういったイベントが日常的に行われていなければ、いつの日か、プロ野球という「娯楽」の真っ只中で、社会に貢献している人々が、毎日のようにTribute(賛辞)とRecognize(認識)されればいいのになと、心から思う。
ナガオ勝司
1965年京都生まれ。東京、長野、アメリカ合衆国アイオワ州、ロードアイランド州を経て、2005年よりイリノイ州に在住。訳書に米球界ステロイド暴露本「禁断の肉体改造」(ホゼ・カンセコ著 ベースボールマガジン社刊)がある。「BBWAA(全米野球記者協会)」会員
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