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投球数100球以下での完投勝利を、殿堂入り投手にあやかって「Maddux=マダックス」と呼ぶ。
ブレーブス黄金期のエースとして有名なグレッグ・マダックスは、いわゆるPower PitcherではなくControl Pitcherと呼ばれ、それゆえに球数の少ない投手だった。
1997年7月のヤンキース戦では3安打無四球、わずか84球で完封勝利を収めている。
所要時間は2時間9分だった。
だが実は、現役時代の彼は「制球力より球の動き」ときっぱり言う人だった。
「コントロール云々と言ってくれるのは嬉しいが、たとえば試合で100球投げて、全部狙ったところに投げられる投手なんていやしない。ブルペン(投球練習)ならできるかも知れないが、試合となると僕だってできない。
大事なのは多少、Location=制球を乱しても、打者がしっかりとは捉えられないような球の動き=Movementなんだ」マダックスがそう言ったのは彼の晩年、生涯通算で4度獲得するサイヤング賞を初めて手にした古巣カブスに戻っていた2005年のことだ。
そんなピッチングが5月3日、カブスの本拠地リグリー・フィールドで再現された。
首位カージナルスを相手に4安打(すべて単打)無四球、わずか81球の完封劇ー。
演じたのはカブスのカイル・ヘンドリクス。所要時間は2時間28分だった。
ヘンドリクスは2016年にカブスが108年ぶりのワールドシリーズ優勝を果たした時のナ・リーグ最優秀防御率(2.13)投手である。
マダックス同様、2シーム・ファストボール(シンカー)とチェンジアップ、そして制球力を武器にしていることで、「マダックスの再来」と呼ばれた男だ。
「ちょっとブルペン・セッション(=投球練習)みたいな感じだったね」
と試合後のヘンドリクス。シカゴの地元テレビ局はこの日、ニュース番組のスポーツコーナーで何度となく、名門ダートマス大出身の29歳右腕のインタビュー画像を流し続けた。
「相手が早いカウントで積極的に打って来たので(各打者の)最初の2球に良い投球をすると、さらに積極的になったので、それをアドバンテージにした」
63球がストライクだったから、ストライク率は8割弱(77.8%)だ。
9イニング中8イニングが投球数10球以下。打席毎の平均投球数は2.7球だった。
「良い投球ができたのは確かだけれど、正直に言うとちょっと幸運だったね」
ヘンドリクスがそう言ったのは、試合における投球が打者なしでは成立しなからだろう。
狙ったところに思い通りの球を投げても抑えられるとは限らない。
狙ったところに思ったような球が投げられなくても打たれるとは限らない。
81球目は、内角を狙った2シーム・ファストボールが真ん中寄り高めに行ってしまった球を相手が打ち上げて二飛になった。
最後の1球はマダックスが言う通り、球の動き=Movementがあったのだ。
公式サイトによると、完投の球数が公式に記録され始めたのは最近のことらしく、最少記録は同じカブスのジョン・リーバー(彼もまた、球を動かすタイプの投手だった)が2001年5月のレッズ戦で1安打1四球の完封劇を演じた時の78球らしい。
ヘンドリクスの記録はそのリストの中では8位タイということになっている。
ちなみに非公式な最少記録は、Baseball Almanacによると1944年8月にマダックスが全盛期にプレーしたアトランタの前身ボストン・ブレーブスのチャールズ(通称レッド)・バレットが、シンシナティ・レッズ戦で達成した58球ということになっている。
9回2安打無四球というから、打者29人の各1打席辺り平均2球しか投じなかった勘定になる。所要時間は1時間15分だったらしい。
記録の信頼度はともかく、そのバレットが残したコメント(記録達成直後ではないと思われる)が、「マダックス」達成後のヘンドリクスのそれと、何となく共通しているのが面白い。
「I’d rather be lucky than good.(私はグッドであることよりも、幸運でありたい)」。
ナガオ勝司
1965年京都生まれ。東京、長野、アメリカ合衆国アイオワ州、ロードアイランド州を経て、2005年よりイリノイ州に在住。訳書に米球界ステロイド暴露本「禁断の肉体改造」(ホゼ・カンセコ著 ベースボールマガジン社刊)がある。「BBWAA(全米野球記者協会)」会員
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