人気ランキング
コラム一覧
サーブを打つ水町泰杜
この男なら、いつかは打つだろうと思っていた。2024年春からビーチバレーボールへ本格的に身を投じ、インドアとの二刀流をトップレベルで実現させている水町 泰杜(トヨタ自動車/ウルフドッグス名古屋)が、そのサーブを公式戦の場で披露したのは今年6月20日のことだった。
舞台は『碧南緑地ビーチコート』(愛知)。この日は『ビーチバレージャパン JVA第40回全日本ビーチバレーボール選手権大会 男子』の愛知県予選が行われていた。水町は今季ペアを組む黒澤孝太(トヨタ自動車)と出場し、計2試合を戦う。
東京グレートベアーズ 2026-27 プレシーズンマッチ
-
東京グレートベアーズ vs. サントリーサンバーズ大阪(08/22)
8月22日(土)午後2:10 J SPORTSオンデマンドでLIVE配信
-
東京グレートベアーズ vs. サントリーサンバーズ大阪(08/23)
8月23日(日)午後0:10 J SPORTSオンデマンドでLIVE配信
いずれも相手は県内の高校生たち10代のペアであり、ジャパンビーチバレーボールツアー2026において、その時点で大会2連勝を飾っていた水町/黒澤組の立場からすれば、いわば『勝って当然』。「負けてちゃダメですよね」とは、大会後の水町の言葉だ。実際、試合は初戦の準決勝、そして続く決勝と大差をつけて制している。その決勝だった。
スカイサーブを打つ水町
第1セットの17-7の場面で水町はエンドラインに立つと、その場でくるりと背中をコート側に向けるようにしてサーブの構えに入る。そして、右手を下から振り上げるようにして、ボールを遥か上空へ放った。
スカイサーブ。れっきとしたビーチバレーボールの技の1つであり、国内シーンではドイツ籍選手のマーティン・カウファーが高い頻度で用いることでお馴染みだ。そのスカイサーブを、水町が試合で繰り出した。だが、ボールはアウトに。第2セットも11-2から再度トライしたが、ここでもうまく相手コートに収まらず、思わず水町は笑い飛ばした。「全然、練習どおりにいかんやんけ!」と。
マーティンのスカイサーブ
聞くに、その1ヵ月ほど前に参加した公認大会の『WaveR杯』で実戦初披露をしていたとか。「練習でも5本打って3、4本は入っていたので、『こんな感じね』と思っていたんです。ですが、今日は全然入らなかった。本番に弱いので…。鍛え直さないと」と水町は嘆いた。
インドアでもボールを高く打ち上げることで相手のレシーブを揺さぶる、いわゆる『天井サーブ』があるが、ビーチバレーの場合はそこに風の要素が加わる。いっそう難易度が上がるというわけで、それはレシーバーにとっても、そして打ち手にとっても同じことが言えることらしい。水町は解説する。
「難しいですよ。ただ高く上に打つだけだったらいけます。ですが、風の有無や高さによって風の強弱も違ってくるので。上空で風がどんな吹き方をしているかは、実際に打ってみないことには分からないので、それが難しいんです」
『飛び道具』という見方もできるスカイサーブをなぜ、この日繰り出したのか。1つは、その日が雨天で、さらに風も吹いていたからだった。
愛知県予選に勝ち、全日本選手権に出場する水町ペア
「けっこう風が強い印象だったので。その分、サーブを工夫して打っていこう、とは青木晋平コーチ(トヨタ自動車)からも言われていたので、色々と挑戦していこうと思っていました」と水町。そしてもう1つ、そこには彼なりのビーチバレーに取り組む上での“楽しませ方”があった。
「純粋にスカイサーブを打ってみたかった思いがありましたし、この天候でも見に来てくださった方々がいましたから。それに試合数も今日は決して多くなかったので。そこで、マーティン選手のように、ではないですが見ている方々に楽しんでもらえるような、魅了するプレーができればと思ったんです。入らんかったけど!」
水町といえば学生時代から力強いサーブを武器の1つとしており、インドアの『大同生命SVリーグ』でも2025-26シーズンではサーブ効果率15.0%で『トップサーバー』に輝いている。なお、サーブ得点「65」もシーズンにおける堂々のリーグトップの数字だった。
IGアリーナでのサントリー戦
際立つのは、そのシチュエーションだ。『IGアリーナ』(愛知)を会場に、およそ1万4,000人の観客が詰めかけたレギュラーシーズン第11節のGAME2(2026年1月18日)では、第4セットの26-25からサービスエースを一閃。
強敵・サントリーサンバーズ大阪を相手にセットカウントをタイに戻す一撃を放ち、試合後にWD名古屋のヴァレリオ・バルドヴィン監督も「毎回、彼にサービスエースを望むわけではありませんが、紛れもなく私たちにとってのビッグウェポン(強力な武器)。重要な場面で決めきってくれますね」と称賛している。
また第15節のGAME2(同3月1日)でも、ここでは九州でのホームゲーム初開催となった「HAPPINESS ARENA」(長崎)で、同様に第4セットの24-20からサービスエースを決めてフルセットに持ち込んだ。
アリーナを沸かせる水町のサーブ
圧倒的な勝負強さを宿した水町のサーブは、それだけでも見るものを沸かせる。プレーの場を砂の上に移しても、それは変わらない。現時点の成功率は一旦置いておくとして、水町自身が抱くスカイサーブに対する向き合い方はこうだ。
「やはり打った瞬間に、『うわぁ』と声が上がるじゃないですか。ビーチバレーボールでは、そういう体験も見ている人たちにとって大事だと思っています。楽しんでもらうといいますか。まぁ、なかなかそう実戦で打てるわけではないですけどね。まだまだ試合では競り合う場面も多いですから」
スカイサーブで見る者を沸かせたこの日、水町は『ビーチバレージャパン JVA第40回全日本ビーチバレーボール選手権大会 男子』の出場権を獲得した。日本一を決める夏の風物詩は、8月14日(金)~16日(日)に、『藤沢市鵠沼海岸』(神奈川)で行われる。昨年は黒澤とのペアで準優勝の成績を収めた水町は目を輝かせた。
「大会は全チームにとって一発勝負のトーナメントです。全国各地から出場して、勝ち上がっていく感覚はインターハイみたいで、とても好きなので。昨年も『明日もまた試合ができる』のが嬉しくて、『次も試合ができるように』という思いで臨んでいました。今年もノーシードからなので、どんな山に入るかわからないですけれど、とりあえず楽しみながら、できることをやっていきたいです」
SVリーグを代表するビッグサーバーが『日本のビーチバレーボール発祥の地』でどのような姿を披露するか。ひょっとしてスカイサーブも…?注目だ。
文:坂口功将/写真:坂口功将、WOLFDOGS NAGOYA
坂口 功将
スポーツライター。1988年生まれ、兵庫県西宮市育ち。
「月刊バレーボール」編集部(日本文化出版)で8年間勤めたのち、2023年末に独立。主にバレーボールを取材・執筆し、小学生から大学生、国内外のクラブリーグ、そしてナショナルチームと幅広いカテゴリーを扱う。雑誌、ウェブメディアへの寄稿のほか、バレーボール関連の配信番組への出演やイタリア・セリエAの解説も務める。
あわせて読みたい
J SPORTS IDを登録すれば、
すべての記事が読み放題
ジャンル一覧
J SPORTSで
バレーボールを応援しよう!


