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スキー コラム 2022年2月3日

1月&札幌大会総括&五輪展望(2月2日) 『めざすは北京冬季五輪の表彰台』

鳥人たちの賛歌 W杯スキージャンプ by 岩瀬 孝文
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小林陵侑に勝機はある

北京五輪の活躍が期待される小林陵侑

長くだらだらと降りていくランディングバーンで名高いビリンゲン(ドイツ)でのW杯は、少雪と雨風の荒れた天候に見舞われた。こうなると1本勝負が予想されるが、これと同様の状況になると俄然張り切り、勝利を収めるかつての葛西紀明(土屋ホーム)のことが思い出された。

疲労が癒えつつあった小林陵侑(土屋ホーム)は、ビリンゲンの猛烈な強風をものともせず、さらに威力を増したスピードジャンプを披露。145mを飛び抜けて6戦ぶりに優勝し、今シーズン7勝目を挙げた。さらに2試合目では、1本目128mから2本目に意地の152mを記録し、好位置といえる4位に入る。そうなると小林陵侑は五輪でも大活躍をみせて金メダル獲得との予想が出てくるが、それこそ一層、気を引き締めたい。何が起こるかわからないのが五輪なのである。

ソルトレイクシティとバンクーバーの金メダリストで北京五輪で通算7度目の五輪出場となるシモン・アマン(スイス)は、選手村内をにこやかに散策して歩く余裕があったりする。あるいはW杯で小林陵侑を追撃しているガイガー(ドイツ)には、既に女子ジャンプの下部大会で北京五輪のシャンツェを飛んだソチ五輪金メダリストのフォクト(ドイツ)から、アプローチの形状からサッツのテーブルの長さや角度、人工雪の滑り具合に加えて風向きやその強弱など極めて重要な情報が渡っていたりもする。これは実際に優位に働きそうである。
日本ではノルディック複合Bチームが、当地での大会で五輪の台を飛んでおり、それが最新の情報となっている。もちろん事前の公式トレーニングの数本で確認して、そこからノーマルヒル個人戦に始まり、混合団体そしてラージヒルとラージヒル団体へと流れて経験値が上がっていく。

今の小林陵侑に勝機はある。
金メダルを切望するのではなく、いつものように丁寧に、ここ一番の集中力で、どかんと、ぶっ飛びのジャンプをして表彰台を狙っていこうとのスタンスが望ましい。いわゆるメダル個数を誇示するのは、どうでもよいではないかと、伸び伸びと小林陵侑の勇躍をファンは後押ししていきたい。
五輪の現地には葛西監督がいて、一瞬アイコンタクトを送るだけで、彼のはやる心を抑えることができる。そのノリさんも自分で飛びたいのをぐっとこらえて賢明な指示を送り勝利へと導く。そういった葛西監督の手腕にも期待してみたい。

レジェンドたちの飛翔に魅せられた雪印メグミルク杯

雪印メグミルク杯で優勝した葛西紀明

雪印メグミルク杯の優勝インタビューで『帰ってきたぞー、もうすぐ50歳ですよ!』と葛西紀明選手が叫んだ。飛距離は138mと137m。すかさず下でさっと吹き上げてくる神風を呼び寄せるのだから、これはレジェンドというより往年の“カミカゼカサイ”そのもの。どこまでも限りなくやれることを証明した彼の姿を懐かしそう感じ入り、目を潤ませたファンは多かったに違いない。

同大会にはさらにもうひとり生ける伝説のジャンパーの姿があった。かつてジャンプ週間で3連勝し、最終のビショフスホーフェンでは湿雪でスピードが出ずに8位に甘んじながら、初のジャンプ週間総合優勝を成し遂げた船木和喜(FITスキー)だ。肩を怒らせる独特のシルエットによる低めな伸びは変わっておらず、1998 長野五輪で地元日本の重圧の中、緊張することなくいともさらりと飛んだあの金メダルジャンプを彷彿とさせていた。
大会後「相変わらず良い風で飛ばせてくれなくてね」とジョークをかませていたが、金メダリストたる偉大なジャンプを見せてくれた。

長野冬季五輪金メダリスト船木和喜

晴天で絶好のスキー日和、雪がたくさん残る札幌大倉山だったが、もし今年1月に札幌W杯が行われていれば…と想像を巡らせてしまった。
日本のエース小林陵侑が2度目のジャンプ週間総合優勝というビッグなタイトルを引き下げて凱旋帰国、それをリアル・レジェンド葛西紀明監督(兼選手)がにこやかに迎え入れる。大会では前回の札幌W杯で敗れたクラフト(オーストリア)とライエ(ドイツ)を軽く一蹴、見事に札幌で3連勝を飾る。そのFIS公式記者会見で3人揃い、中央で胸を張って発言する小林陵侑というシーンが目に浮かぶ。その席で、ややシニカルな微笑みこそ見せるが輝きのイエロービブも晴れやかに、勝者として真摯に受け答えに終始。さらには五輪への豊かな感情を吐露しながら目を細めて。
札幌W杯3連戦はそうあるべきであった!
そして国枠で出場した葛西紀明選手が世界中の度肝を抜く、慣れ親しんだ大倉山で一桁入りから、ついには表彰台へ昇りつめて…など、実に夢のあることが起きるかもしれかなったのだから。

日本選手の躍進が大いに楽しみな北京五輪

海外勢に目を移すと、ドイツは五輪枠においてガイガーやアイゼンビヒラーとライエなど男子5人と女子5人を発表、これは日本と同様に堅実な選手配分だ。
進境著しい注目のスロベニアは、プレフツ長兄ペテルをリーダーに、弟セネ・プレフツ、ラニセク、ザイチ、コスらの若手選手の伸びが顕著。この背景には2023プラニツァ世界選手権の開催に向けた強化予算の増大が大きく寄与してきたと言えそうだ。
強豪ノルウェーは、ジャンプ週間後に一呼吸おきながら、グラネル、リンビク、ヨハンソン、フォルファン、タンデの5人でチームを固めている。そして団体戦におけるメダル獲得に集中する。
またオーストリアは、クラフトの一発がある。上昇する若手ヘールが重圧なく飛べるかどうか、そこは個性派フェットナーの経験が生きてきそうでもある。

日本選手の躍進が大いに楽しみな北京五輪。
ところが表彰台と金メダルは、船木選手を観るとよく分るが20個から30個くらいの運がなければまったく掴めない。だから、何がなんでも金メダルと選手たちを追い詰めていく言動よりは、つねに温かさの気持ちで見守りながら声援を続けたい。それが真のジャンプファンの姿勢だ。

有力選手が欧州遠征のまま帰国せずに五輪へ直行、その間に国内試合が連戦で行われていた。コンチネンタル杯代表の二階堂連(NSC札幌)、渡部陸太(東京美装)さらには2007札幌世界選手権銅メダリスト栃本翔平(雪印メグミルク)、あと一歩でW杯に手が届きそうな岩佐勇研(東京美装)などが気迫を込めて優勝を争っていた。

雪印メグミルク杯 4位二階堂蓮 5位栃本翔平 6位渡部陸太(左から)

これで五輪後、W杯後半戦を迎えて昇格や入れ替えをみて、新たなチームメイクと対外戦略が見えてきそうだ。世界に誇れる日本チームはそのもの強豪なのである。

文・岩瀬 孝文

岩瀬 孝文

ノルディックスキージャンプの取材撮影は28年以上、冬季五輪は連続5回、世界選手権は連続12回の現地入り取材。スキー月刊誌編集長を経て、2007札幌世界選手権では組織委員会でメディアフォトコーディネーターを務めた。 シーズンに数度J SPORTS FIS W杯スキージャンプに解説者として登場。『冬はスキー夏は野球』という雪国のアスリートモードにあり、甲子園の高校野球や大学野球をつぶさに現場取材にあたっている。

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