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今季のW杯は、スウェーデン・イドレで予定されていたラスト2戦が新型コロナウイルスの影響でキャンセルになるという予想外の幕切れに。やむを得ない事情ながら、秋田たざわ湖大会DMの中止もあり全10戦でフィニッシュ。不完全燃焼に終わった選手も少なくなかったと考えられ、モヤモヤの残るかたちとなった。 ただ、こればかりは誰も攻めることができない。モーグルに限らず、地球上のすべてのスポーツイベントが、通常のフォーマットで開催できる環境に戻ることを祈るばかりである。
総合優勝は3シーズン連続でこの2名に。女子の3連覇はハナ・カーニー以来だ
レースはキャンセルも、表彰式を開催。男女優勝者が顔を揃える
イドレは新たなW杯会場であり、現地では万全の受け入れ体制を整えていた。大会の中止が決まったのは、すでに選手たちが現場入りしていた大会前日のこと。レースは行われなかったが、第10戦MOが予定されていた3月13日に年間の表彰式だけは開催された。ここには、モーグル総合王者のペリーヌ・ラフォン(FRA)、ミカエル・キングズベリー(CAN)が登場。両者はオーバーオール(フリースタイル全体のポイントランキング)でもトップとなり、それぞれ2つのクリスタルグローブを手にした。 キングズベリーは10戦中7勝、ラフォンは8勝。そのハイレベルなパフォーマンス、どのレースでも同じ滑りを再現する抜群の安定性は他の選手の追随を許さない。とくにラフォンはこれまで取りこぼしが度々あったが、今季はそれを最小限に抑えており、ますます際立った存在になったと言っていいだろう。キングズベリーは27歳になり、徐々に衰えてもおかしくない年齢だが、そうした気配はまったく見られない。
女子ルーキー・オブ・ザ・イヤーに輝いた川村の可能性は無限大!
シーズン後半にはとてもルーキーとは思えない余裕が感じられた川村(写真:Daisuke Mizorogi)
また、今季のルーキー・オブ・ザ・イヤーも決まり、女子はW杯デビュー1年目で総合7位に入った川村あんりが選ばれた(日本チームは急遽、帰国が決まり表彰式には不参加)。
開幕戦でW杯初出場にして2位という鮮烈デビューを飾った彼女は、その後も全戦で決勝に進出し、快挙がビギナーズラックでないことを証明。シーズンを通じていろいろなコースが舞台となるなか、この結果はその対応力の高さのあらわれともいえる。どのレースも楽しみながら滑っている様子が伺われ、メンタルの強さも大きな武器になりそうだ。なお、川村は今季の全日本選手権MOでも優勝しており、ランキングも日本の女子選手最高位。15歳にして、日本女子のエースとなったことになる。まだエアの難度など発展途上の部分があるが、逆の見方をすればそれだけ伸びしろがあるということ。2年後の北京五輪までにどこまで成長するのだろうか?
ここで、川村あんりのプロフィールを改めて確認しておこう。生年月日は2004年10月15日。日本チームのヤンネ・ラハテラコーチが金メダルを獲得したソルトレイクシティ五輪のときはまだ生まれていない。かつてモーグルのナショナルチーム選手といえば、北海道や長野など雪国出身者がほとんどだったが、彼女は今季欠場中の原大智と同じ東京都出身だ(東久留米市)。3歳でスキーを始め、4歳からコブ斜面への挑戦をスタート。シーズン中は湯沢に通い、モーグルのトレーニングを積んでいった。これも原と同じパターンだが、実は2人は同じチーム(チームジョックス)で一緒に練習した先輩後輩の関係でもある。川村が原に続く東京出身の五輪メダリストになる……ということも大いに有り得るだろう。
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