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スキージャンプ界のレジェンド葛西紀明(土屋ホーム)が絶好調だ!
リレハンメルLHでの惜しい4位をはさみ、そこまでの5試合連続の上位安定の入賞。 ついにはノイシュタット(ドイツ)にて世界最年長となる第3位表彰台へと駆け上がった。
夏場にかけて恒例となった宮古島チームトレーニング合宿から手がけた熱心な筋力トレーニングと、故障しやすい膝や腰などの入念なカバーに加えて体重コントロールなど、葛西選手のその節制に対する心配りは、他の誰もが追いつけはしない。
それに裏付けられたアプローチの確かな踏み込みに、速やかなサッツ、空中で風を受ける柔軟な姿勢、技術あふれる着地まで、もはや完成されつくしたシルエットにある。
「同じ年のカサイが頑張って飛んでいるんだ、であれば少々つらい仕事だって、励みを持ってやっていける」
先シーズン3月、トロンハイムで乗車した葛西選手と同世代のタクシー運転手が、そう語りかけてきた。
たとえ、表彰台に上がらずとも、そのジャンプにかけるまっとうなスタンスは、国内のみならず欧州各国のジャンプファンの共感を呼んでいた。さらに海外チームの選手、コーチ、運営役員に至るまで敬意と称賛を持って迎えられてもいる。
そんな皆さんの夢と希望を背負って、葛西はどこまでも飛び続ける。
「負けたくないんですよ、どの選手にも、日本の後輩選手にさえも。表彰台にあがりたいですね、いつも」
と、人なつっこい笑顔を見せてくれる。
ここに魅かれ、導かれるファンも数多い。
加えて日本チームには今季2位表彰台を経験した竹内択(北野建設)とリレハンメルで3位表彰台に昇った伊東大貴(雪印メグミルク)がいる。
このように上位メンバーに3選手を送り込むジャパンだ。
「アプローチの踏み込みが以前よりも、しっかりとできるようになった」
と語る横川朝治チーフコーチだった。が、それだけではない、マテリアルに大いなる工夫がなされた。
これは五輪での秘策と言えるだけに、まだ明かされはしないが、それは格段に飛べる素晴らしき要素なのである。
さらに朗報と言えるのだろう岡部孝信(雪印メグミルク)が国内開幕戦の名寄大会優勝でW杯メンバー入りとなった。そして個性派長身選手の渡瀬雄太(雪印メグミルク)を加えた5人がジャンプ週間遠征メンバーだ。
さて、伝統のジャンプ週間にかける選手達として期待いっぱいなのは、ポーランド。
そのチーム力がとみに安定してきた。年長のストッフが若手選手をうまくリードする。それもいよいよ勇者マリシュの威光が前面に出てきた風でもある。
逆に開幕北欧シリーズから飛ばしていたスロベニアはトーンダウンの状況。ともすれば、最終戦の地元プラニツアの新設ラージヒル台にかけているのかとも思われるくらいに…。
強豪ドイツチームには大応援団を武器にした地の利がある。W杯初優勝を遂げた愛すべき札幌が大好きなフロイント、若手ベリンガーにベテラン人気選手シュミットの加入もうれしい。
名門オーストリアチームでは悠々のシュリーレンツァウアー、後輩たちの面倒見がよいコフラー、転倒のケガが癒えてきたモルゲンシュテルン、試合の駆け引きにたけるロイツルなどがどんと構える。
先の勝利を見据えたノルウェーチームは強者バーダルにヤコブセンがチームとファンネメルや新鋭の選手たちをリードする。
他の有力選手ではシモン・アマン(スイス)に復帰したヤンネ・アホネン(フィンランド)は、ともに持ち前の優れた技術で一発の力を秘める。
開幕戦オーベルスドルフ(ドイツ)は小高い丘の上にたたずむ厳かな台、2戦目のガルミッシュ・パルテンキルヘン(ドイツ)はバイエルン地方の高級保養地で南のアルペンバーンのそばにすっくと台が立ち、シャープこの上ないインスブルック(オーストリア)が3戦目、ラストはあの難敵だらだらアプローチのビショフスホーヘン(オーストリア)。 どのジャンプ台にも目のこえた、応援しようというファンでぎっしりと埋め尽くされる。
日本のチーム力は、いまや世界トップクラスにある。
狙うは、その名門インスブルックのベルグイーゼルシャンツェで迎える第3戦。強豪地元オーストリア勢を打ち破っての表彰台中央! しかもかつてここで優勝経験のあるレジェンド葛西紀明の勝利だ。これがいよいよ、現実のものとなってくる。
久々にわくわくするジャンプ週間だ。
〔写真3〕落ち着いたサッツから軽やかに飛び出してLH3位の伊東大貴(雪印メグミルク)
〔写真4〕惜しくも優勝を逃した竹内択(北野建設)、優勝シュリーレンツァウアー(オーストリア)、3位のべリンガー(ドイツ)
(クリックで写真拡大)
〔写真5〕リレハンメルLHで2位バーダル(ノルウェー)、優勝したフロイント(ドイツ)、3位の伊東大貴(雪印メグミルク)
〔写真6〕試合後には地元子供たちのリクエストにていねいに応えるシュリーレンツァウアー(オーストリア)
(クリックで写真拡大)
Photo & Text by 岩瀬孝文
岩瀬 孝文
ノルディックスキージャンプの取材撮影は28年以上、冬季五輪は連続5回、世界選手権は連続12回の現地入り取材。スキー月刊誌編集長を経て、2007札幌世界選手権では組織委員会でメディアフォトコーディネーターを務めた。 シーズンに数度J SPORTS FIS W杯スキージャンプに解説者として登場。『冬はスキー夏は野球』という雪国のアスリートモードにあり、甲子園の高校野球や大学野球をつぶさに現場取材にあたっている。
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