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「悔しいです。勝てた試合だったので」。何度もジャッカルで試合の流れを変えた姫野和樹の言葉にすべてが凝縮されていた。10月29日、国立競技場には65,188人という同競技場観客動員記録の大観衆が集った。その多くが姫野と同じ気持ちだっただろう。同時に誇らしさも感じる戦いでもあった。
三笠宮彬子女王殿下の両国選手への激励、男声合唱団コール・ファーマーの両国国歌斉唱が試合の格を高めた。ニュージーランド代表オールブラックス(NZ)のハカ(ウォークライ)をハーフウェイラインに整列して見据える日本代表。中央の坂手淳史キャプテン、リーチ マイケルは笑みをたたえていた。両チームが対峙するハカでスタジアムのボルテージは一気に上がった。
午後2時55分、SO山沢拓也のキックオフ。フィールド中央深くに蹴り上げられたボールを確保したNZに日本のWTBシオサイア・フィフィタ、リーチが突き刺さる。序盤のNZは日本の前に出てくるディフェンスの背後にキックを多用した。前半5分、日本が切り返し、NO8テビタ・タタフが大きく前進。SH流大につなぎ22mラインを越えるも、NZのSOリッチー・モウンガが激しくタックル。チャンスを逸する。両チームの激しいコンタクト合戦を観客は固唾をのんで見守った。
先にトライをとったのはNZだった。前半11分、日本陣10mライン付近のラインアウトからの攻撃でLOブロディー・レタリックがインゴールまで走り切る。日本にとっては、ゴールラインを背負ったスクラムでトライを防いだ直後だけに、もったいない失点だった。前半19分、日本も山沢のPGで、3-7と差を詰める。日本のディフェンスはよく機能していたが、前半26分、スクラムからの連続攻撃でCTBブレンドン・エノーにトライを奪われる。タックルには入っていたが受け身になってオフロードパスを連続で決められてしまったものだ。スコアは、3-14。
流 大
32分にはラインアウトからサインプレーで、WTBセヴ・リースにトライを許し、3-21と引き離された。その後のキックオフからもボールを繋がれ、自陣深く入られてしまう。そのまま失点していたら勝敗の興味は薄らいだかもしれない。たが、姫野が値千金のジャッカルでボールを取り返す。ここから攻め、右タッチライン際でCTBディラン・ライリーがショートパントを蹴り込むと、NZのFBスティーブン・ペロフェタが処理をミスする。転々としたボールをFB山中亮平と山沢が追い、最後は山沢が足でドリブルしながらトライをあげた。38分にはCTBディラン・ライリーが左タッチライン際を抜け出し、サポートした流につないで連続トライ。山沢がゴールを決めて、17-21と4点差で折り返した。
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