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武藤ゆらぎ(東海大学)
アクセル全開の東海大学は強かった。
しかし立正大学もカムバックの意志を80分間表現した。
関東大学リーグ戦1部で5連覇を狙う東海大。
今季開幕戦では29季ぶり昇格の東洋大学に敗戦を喫したものの、9月24日土曜日の立正大戦(埼玉・熊谷)では、「リーグ戦の雄」の実力を示した。
スカイブルー軍団は、東洋大戦から先発2人を変えてきた。
千葉・幕張総合高出身のLO椎名耀二、そして東海大大阪仰星高の主将として花園優勝を経験したルーキーFL薄田周希だ。
東海大が見せた気迫は、怒濤の開始6連続トライに表れていた。
攻撃方法は対照的で、かつ徹底的だった。東海大はボールキープ。立正大はハイパント攻撃だ。
立正大は序盤にミスが多く、東海大のボール保持率は相対的に高まった。自陣から攻撃権を保持し、猛攻を続けた。
躍動したキーマンは、大学屈指のスピードスターである司令塔10番、武藤ゆらぎだ。
清水麻貴(東海大学)
171センチ75キロの21歳は、前半3分、ミスマッチを制して突破し、SH清水麻貴の先制トライをアシスト。
かたや立正大はミスが続き、エスケープしきれずモールで2トライ目を献上すると、敵陣ゴール前では痛恨のノット・ストレート。
守備で反則をする悪循環から、前半15分には相手WTB岡村優太に3トライ目を獲られた。
そして東海大は前半19分、武藤ゆらぎが的確なキックパスから4本目。5本目(同24分)も武藤のロングゲインが足掛かりだった。
決定的な6本目はFLレキマ・ナミサラ。強い足腰で粘り、豪快にグラウンディングした。
立正大はラインアウトなどセットプレーで劣勢気味となり、勝負のハイパント攻撃でも再獲得できず。防戦一方となった。
ただ立正大はまったく勝負を諦めておらず、逆襲の機会を虎視眈々と窺っていた。
潮目が変わったのは前半30分。
42点リードとなった東海大がボール保持をやめ、自陣から蹴り返した直後からだった。
立正大はSH中森隆太が4本目のボックスキックを蹴り上げる。これを東海大がノックオン。
ラグビー 関東大学リーグ戦2022
【ハイライト動画】立正大学 vs. 東海大学
直後のスクラムで勝負は避け、南アフリカ出身のNO8ユアン・ウィルソンが単騎で突進。序盤にジャッカルもあったFB大野和馬がパスを受け、左隅に初トライを決めた。
さらに立正大はスクラムで挽回。
フロントローにPR小川耕三朗、HO陣内源斗主将、PR金子元紀を据えた布陣で、前半終了前に美しいスクラム・ターンオーバー。
前半ラストワンプレーではスクラムから、CTBキニ・ヴェイタタが相手4人を巻き込むキャリー。相手が余った順目を警戒したところで、逆目のラックライドをSH高森が突き、殊勲の2トライ目を上げた。
ビハインドを28点差(14-42)に縮めた立正大の勢いは止まらない。
東海大がラインアウトでノット・ストレート。ここから逆襲に転じた。最後は後半10分、守備も堅調なCTB小熊丞の内返しから、CTBキニ・ヴェイタタが右中間へ。
SO吉永崚の難しいゴールキックも鮮やかに決まり、ついに21点差(21-42)。
立正大は失6連続トライからの見事な3連続トライ。スクラムの修正力、得点機での集中力、そして不屈のチームスピリット。数多くの美点を示した。
ここからスコアは20分動かなかった。
東海大はラックでのサイドエントリーなどで攻撃フェーズが伸びず。取り急いでミスをする場面も見られた。
一方の立正大はLO八木崇太、FL田中卓也がダブルタックルで押し込むなど、フィジカルバトルでも互角に戦う。東海大FLナミサラのノックオンを誘うSH中森の好タックルもあった。
後半31分、東海大は途中出場組のゲインからWTB岡村優太がトライを決めるが、後半だけのスコアは7-5で立正大。
途中出場組のフロントロー、糸魚川宗也、三浦類、堰見悠吾が入ったスクラムも強力だった。
しかし東海大はラスト、自陣ゴール前に攻め込まれながら、FB谷口宜顕などバックスも堅陣構築に貢献して失点を許さない。途中出場の竹田怜央は相手NO8ウィルソンを一撃で止めた。
さすがリーグ戦王者という戦いぶりだったが、しかし80分間圧倒する戦いは、次戦以降に持ち越しとなった。
第2週を終えた関東大学リーグ戦は混戦模様だ。
昨季トップ3は、東海大(昨季1位)と日本大(昨季2位)が1勝1敗、大東大(昨季3位)が2敗。波乱ともいえる展開であり今後が見逃せない。
2敗となった立正大は10月1日(土)、神奈川・小田原市城山陸上競技場で、同じく2敗の関東学院大学と初勝利を懸けてぶつかる。
東海大は翌2日(日)、同じく神奈川・小田原で、開幕2連勝の法政大と激突する。
文:多羅 正崇
多羅 正崇
スポーツジャーナリスト。法政二高-法政大学でラグビー部に所属し、大学1年時にスタンドオフとしてU19日本代表候補に選出。法政大学大学院日本文学専攻卒。「Number」「ジェイ・スポーツ」「ラグビーマガジン」等に記事を寄稿.。スポーツにおけるハラスメントゼロを目的とした一般社団法人「スポーツハラスメントZERO協会」で理事を務める。
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