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ラグビーは激しいコリジョンをともなうフットボールだ。体をぶつけ合う接点のバトルの形勢が、その後のプレーを大きく左右する。そんな競技の核心ともいえるパートを制圧した東海大が、10トライを挙げる猛攻で同志社大に完勝し、夏合宿初戦で好スタートを切った。
ゲーム序盤は同志社大の意欲的な姿勢が光った。開始1分、自陣から積極的にボールを動かして中盤付近でペナルティを獲得すると、CTB嘉納一千がすかさずクイックタップで速攻を仕掛ける。防御裏へのチップキックをみずからキャッチし、WTB山本希へとつないで早々に先制トライを奪った。
しかし東海大は動じなかった。7分、相手の反則からタッチキックでゴール前へ攻め込むと、ラインアウトモールを押し切ってすぐに追いつく。その後もFW戦を中心にコンタクト局面で厳しくプレッシャーをかけ、主導権を掌握。17分にはゴール前ラインアウト起点のアタックからFLレキマ・ナサミラが豪快に相手ディフェンスを突き抜け、12-5と勝ち越した。
同志社大も22分、ラインアウトからテンポよく順目を攻めて相手防御を崩し、FB大森広太郎があざやかなステップでタックラーをかわして右中間にフィニッシュ。12-12のイーブンに戻したが、東海大はここからがたくましかった。自陣ゴール前でのピンチを粘り強いディフェンスでしのぎ切って陣地を押し戻すと、35分に流れるような連続攻撃でBKがアウトサイドを崩し、WTB中川湧眞が勝ち越しのトライを挙げる。38分にはターンオーバーからの切り返しでCTB近藤翔那が左スミに押さえ、24-12とリードを広げて前半を終えた。
そして迎えた後半。勝負は立ち上がりの10分あまりで一気に決した。
まずは41分、東海大が長い連続攻撃を仕留め切ってFLナサミラがこの日2本目のトライをマークすると、続くキックオフから縦横にボールをつないで前進し、最後はキックパスを受けたWTB中川がノーホイッスルでインゴールに飛び込む。さらに48分SH清水麻貴、50分WTB中川、53分にはキャプテンのCTB伊藤峻祐と、立て続けにトライを奪取。13分間で29点を挙げる怒涛のラッシュを見せ、スコアはまたたく間に53-12まで広がった。
その後、同志社大も56分にペナルティ奪取からのクイックリスタートでWTB山本がトライを返したが、流れを大きく変えるには至らない。ラスト20分は点差が開いたことに加え疲れもあって互いにエラーが重なり、膠着した展開に。トライは68分に東海大が追加した1本にとどまり、58-19の最終スコアでフルタイムとなった。
久々の実戦だけにイージーミスや連係の乱れも散見された東海大だが、勢いに乗ってたたみかけた時の破壊力と、外のスペースへスピーディーにボールを運ぶスキルは、今季のチームの可能性を示すものだった。3トライを挙げたWTB中川や中盤で攻守に存在感を発揮したCTB近藤ら2年生BKの活躍は、昨季から大きくメンバーが入れ替わったチームにとって大きな収穫だろう。CTB伊藤主将が「今季の武器にしたい」と語るディフェンスも、序盤こそやや不安定なところがあったものの時間が進むにつれて噛み合うようになり、今後への可能性を感じさせた。
一方、10トライを許すビックスコアで完敗を喫した同志社大。東海大の強靭なボールキャリーにタックルを外されるシーンが多く、攻撃のテンポを遅らせられなかったことが、大量失点の要因となった。後半立ち上がりの時間帯はパニックに陥ったような状況で、相手が勢いづいたところで流れを断ち切るようなゲームの組み立てをできなかった点も、大きな反省材料だろう。
ただ今回はフィジカル面の差を突きつけられる結果となったが、前半に奪った2本のトライには、「きつい場面で厳しい選択をして動き勝つ」という今季の目指すスタイルの一端が垣間見えた。切り返しのスピードや早いリズムで攻めた時の動きのキレにも、ここまでの取り組みの成果は浮かんだ。まだ道半ばの8月。この先の巻き返しを期待したい。
文:直江 光信
直江 光信
スポーツライター。1975年熊本市生まれ。熊本高校→早稲田大学卒。熊本高校でラグビーを始め、3年時には花園に出場した。著書に「早稲田ラグビー 進化への闘争」(講談社)。現在、ラグビーマガジンを中心にフリーランスの記者として活動している。
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