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ラグビーワールドカップ開幕戦でロシア代表に勝って、好スタートを切ったラグビー日本代表。
9月28日(土)、予選プール2戦目は小笠山総合運動公園エコパスタジアムに、大会直前までニュージーランド代表を押さえて、世界ランキング首位に立っていたアイルランド代表を迎えた。
日本は南アフリカに勝利した「ブライトンの奇跡」から4年。ジェイミー・ジョセフHC(ヘッドコーチ)体制下でも、ワールドカップでの「奇跡」の再現を狙った。
「信念を持ってやってきた」とジョセフHCや、ゲームキャプテンFL(フランカー)ピーター・ラブスカフニと、チーム全員が同じ思いでこの試合に臨んだ「ブレイブブロッサムズ」(勇敢な桜の戦士たち)は、その名にふさわしい戦いを見せる。
日本は前半、自陣奥でタッチに蹴るところは蹴って、それ以外は「ボールキープする」戦略で臨んだ。前半5分、SO(スタンドオフ)田村優がPG(ペナルティゴール)を狙ったが外れて、先制のチャンスを逃す。
13分、今度はアイルランドが日本ゴール前まで攻め入ると、この日ジョナサン・セクストンに代わって先発したSOジャック・カーティーが右前方へクロスキック。CTB(センター)ギャリー・リングローズが押さえて、0-5と先制する。
引き続きワイドのアタックで冴えを見せる日本も、17分にSO田村のPGで3点を返し3-5とする。
だが20分、アイルランドは再び反撃し、相手ゴール前でSOカーティが前方へのショートパントから、FBロブ・カーニーがねじ込みトライ。SOカーティのゴールも成功して、3-12とリードを広げられてしまう。
前半の20分で早くも2トライを奪われた日本だったが、それでも5万人近いファンの後押しもあり、焦りは感じられなかった。
ボールを継続してアタックし、敵陣でペナルティを得ると、33分、39分とSO田村がPGを決めて、9-12と3点差まで追い上げたところで前半を折り返す。
後半、よりボールをキープすることにシフトした日本は、ボールを持つ時間が増えたが、13分のSO田村のPGは決まらず、3点差のまま試合が進む。
その後、アイルランドは再び激しいアタックを仕掛けてくるが、「タックルしたらすぐに立ち上がって、またラインに戻るようにした」(FLラブスカフニ)というディフェンスが機能し、追加点を与えなかった。
徐々に日本のペースになってきた18分、敵陣でのマイボールスクラムからアタックを仕掛けて、CTB中村亮土がゲインし、後半途中から入ったSH(スクラムハーフ)田中史朗、CTB中村、ラファエレ ティモシーへとつなぐ。
最後は試合当日、WTB(ウィング)ウィリアム・トゥポウのケガの影響でリザーブ入りしたWTB福岡堅樹がトライ。SO田村のゴールも成功し、日本がついに16-12と逆転に成功する。
31分にはSO田村がPGを追加し、19-12とリードを7点に広げる。その後もトライはならなかったが、WTB福岡がインターセプトからビッグゲインを見せるなど、チャンスを作るなど最後まで相手に得点を許さず、そのまま19-12のままノーサイド。
日本はアイルランドと10回目の戦い(お互いテストマッチとしては認める試合は8回目)で、初めて白星を挙げた。
プレイヤー・オブ・ザ・マッチにはセットプレーの安定や、タックル、グラバーキックなどで見せ場を作ったHO(フッカー)堀江翔太が選出された。
この試合の結果で世界ランキングを過去最高の8位へと上げた日本は、ロシア戦に続いての連勝で総勝ち点を「9」として、プールAで首位に立った。
アイルランドは最後のプレーでタッチに出し、7点差での敗戦によりボーナスポイント「1」を死守して総勝ち点を「6」とし、2位につけた。
アイルランドのジョー・シュミットHCは、「最初の20分で私たちは止まってしまった。その後、日本に流れが行き、勝つことができなかった」。
「拮抗した展開で、プレッシャーをかけながらも、最終的に後半は日本にボールを持たせてしまった」と落ち着いた口ぶりではあったが、落胆の色を隠せなかった。
日本のジョセフHCは、「私達が今日見た光景というのは、5万人近い多くの方がスタジアムに訪れ、たくさんの方がジャパンのジャージを着てくれました。本当にコーチとして、選手たちを誇りに思いますし、この国を代表してうれしく思います」。
「結果に鳥肌が立っています。選手たちを誇りに思う。ずっと長い間プランを持って練習も行ってきた。アイルランドは6~7日かもしれないが、長い時間私たちはこの試合のことを考えてきた」。
「とにかく注意深く、慎重に、そして過信せずにいこうと思った。信念を持ってやりたかったゲームプランを遂行できた。コーチングスタッフ全員をずっと信頼してきた。まだ、2試合あるが今夜だけは選手たちを喜びに浸らせたい」と話した。
そして、「コーチがリーダーグループをつくりあげてきた。今夜のように、十分自信を持ってプレーを実行し、何が何でも結果を出してきたということで、そういうリーダーを育ててきました」。
「チームの文化をそうやって形成してきたことが大きいと思います。それぞれのメンバーがチームのために貢献するという文化を作ってきたことが、(勝った)要因ではないかと思います」と続けた。
ゲームキャプテンを務めたFLラブスカフニも「23人以上の人たちが協力してくれてこの結果につながったと思います。チーム全員を誇りに思う」とまっすぐ前を向いて語った。
「ブレイブブロッサムズ」の名を再び世界に轟かせた日本は、開幕2連勝で決勝トーナメント進出に大きな弾みをつけた。
10月5日(土)の予選プール3戦目は、豊田スタジアムでサモア代表と対戦し、3連勝を狙う。一方、アイルランドは10月3日(木)、神戸市御崎公園球技場で対戦するロシア代表戦で立て直しを図る。
文:斉藤健仁
【ハイライト映像】日本vs.アイルランド ラグビーワールドカップ
(c) Rugby World Cup Limited 2019
斉藤 健仁
スポーツライター。1975年生まれ、千葉県柏市育ち。ラグビーと欧州サッカーを中心に取材・執筆。エディー・ジャパン全試合を現地で取材!ラグビー専門WEBマガジン「Rugby Japan 365」「高校生スポーツ」の記者も務める。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。「エディー・ジョーンズ 4年間の軌跡」(ベースボール・マガジン社)、「ラグビー日本代表1301日間の回顧録」(カンゼン)など著書多数。≫Twitterアカウント
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