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北半球王者ウェールズの多彩な攻撃と、ジョージアの強力スクラムが観客の興奮を呼ぶ好ゲームだった。9月23日、豊田スタジアム(愛知県)には、3万5545人の観客が集った。午後7時15分、ウェールズのキックオフ。FLマムカ・ゴルゴゼが落球し、ウェールズボールのスクラムとなる。4大会目の出場となるベテランのミスがラグビーワールドカップ(RWC)という大舞台のプレシャーを感じさせた。これで攻め込んだウェールズは、2分、CTBジョナサン・デーヴィスが先制トライをあげる。
このトライは、スクラムから生まれた。ジョージア陣深くの左中間スクラムから、強力スクラムのジョージアをがっちり受け止め、NO8ジョシュ・ナンディが右へボールを持ち出す。ナンデイからパスを受けたSHガレス・デーヴィスは、ディフェンスラインに接近しながら、3人で一斉に走り込んできたWTBジョシュ・アダムス、CTBハドリー・パークスの前を通して、ジョナサン・デーヴィスに素早いロングパスを送った。2人飛ばしのパスである。これでジョージアのディフェンスにぽっかり穴が空き、デーヴィスが易々とインゴールに駆け込んだ。SOダン・ビガーが正面のゴールを外したのもRWCの緊張感かもしれない。6分、ビガーが名誉挽回のPGを加えて、8-0とウェールズがリードする。
ウェールズの2つ目のトライは、ラインアウトからのサインプレーだった。ハーフウェイライン付近左のラインアウトをキャッチしたウェールズは、右オープンに展開。SHガレス・デーヴィスからSOダン・ビガーにパスが渡り、ビガーは左(内側)に走り込んできたWTBジョシュ・アダムスにパス。あっという間に抜け出したアダムスからボールはFLジャスティン・ティプリックへ。このトライとゴールで15-0とする。続く18分、まったく同じサインプレーからトライを追加して、ウェールズが、22-0とリードを広げた。ジョージアは、ラインアウト最後尾のディフェンダーの動きが遅く、ディフェンスラインに穴ができる。ここを2回連続で突いた得点だった。
前半30分過ぎからは、ようやくジョージアが攻め込んだが、これをしのいだウェールズは、39分、FBリアム・ウィリアムズがトライ。ボーナス点を獲得する4トライ目をあげ、29-0とした。ウェールズのヘッドコーチ、ウォーレン・ガットランドは、「みんなよく走った。いい形のトライがあり、(4トライ以上の)ボーナスポイントも取れてよかった」と選手たちを称賛。ジョージアの強みのフィジカルを抑え、攻守に精度高くプレーした北半球王者が支配した前半だった。
しかし、「後半はやや雑になってしまった」とガットランドヘッドコーチが言う通り、整った攻めができなくなる。一方、ジョージアは意地を見せた。後半2分、ゴール前のラインアウトからモールを押し込み、HOシャルヴァ・マムカシヴィリがトライ。20歳のSOテド・アブジャンダゼがゴールを決めて、29-7。その後のゴールラインを背負ってのピンチは、WTBミリアン・モデバゼのインターセプト、交代出場のPRレヴァン・チラチャバのジャッカル(タックルで倒した選手からボールをもぎ取るプレー)で防ぎ、スタンドを沸かせた。24分にはウェールズの交代出場のSHトマス・ウィリアムズにトライを追加されたが、あきらめずに攻め、28分にはスクラムを押し込んで反則を誘い、PKからの速攻でチラチャバがトライ。スタジアムは大歓声に包まれた。「後半、ジョージアらしいファイティングスピリットを見せられたことを誇りに思う」と、ジョージアのミルトン・ヘイグヘッドコーチ。何度突き放されても食らいつくジョージアに多くの観客が胸を打たれたことだろう。
プレーヤー・オブ・ザ・マッチは、両鼻から出血しながら奮闘したウェールズLOジェイク・ボールが受賞した。ジョージアは、6日後の9月29日、熊谷ラグビー場でウルグアイと対戦。ウェールズは、同じく29日、オーストラリアとの大一番を迎える。
【ハイライト】ウェールズ vs. ジョージア ラグビーワールドカップ2019 プールD
村上 晃一
ラグビージャーナリスト。京都府立鴨沂高校→大阪体育大学。現役時代のポジションは、CTB/FB。86年度、西日本学生代表として東西対抗に出場。87年4月ベースボール・マガジン社入社、ラグビーマガジン編集部に勤務。90年6月より97年2月まで同誌編集長。出版局を経て98年6月退社し、フリーランスの編集者、記者として活動。
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