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黒黄と紫紺。毎年接戦を繰り広げる因縁の対決が今年も秩父宮で行われ、多くのラグビーファンが駆けつけた。
明治大学は春季大会を全勝で制し、今季もここまで無敗と、言わずもがな実力は折り紙つき。しかし、選手たちは「春と秋は全く別物」(SO古田京主将=医4・慶應)と、自分たちのラグビーを80分間続けることをテーマに臨んだ。
わずかに風が吹く中での試合開始。主導権を握ろうとする両チームの攻防の中で、最初にわずかな隙を突いたのは慶應義塾大学だった。
敵陣5mライン付近での相手ボールラインアウトで、相手のリフトを越えたボールをFL(フランカー)川合秀和(総3・國學院久我山)がキャッチ。そのままインゴールへと持ち込み、大事な先制点を奪う。
しかし、10分に迎えたファーストスクラムからマイボールをスチールされると、そこから明大の「重戦車」と称されるFW(フォワード)の猛攻を受ける。ゴール前までじりじりと詰め寄られ、最後は凌ぎきれずに失点。
追い上げられた慶大だが、すぐに反撃に出る。敵陣5mライン付近でマイボールラインアウトを獲得。確実にキープすると、ボールを受けたFL山本凱(経1・慶應)がグラウンディング。チャンスを生かし切り、リードを広げる。
その後の時間は、互いにペナルティを犯し、陣地を取っては取り返すことの繰り返しに。しかし、その中で30分、明大が慶大ディフェンスの一瞬の隙を突く。ショートパントを効果的に使われ、後ろから走りこんできた選手にトライを許した。
再び2点差に詰め寄られたが、38分に左サイドでのラインアウトから中央へ展開し、ゴール前へ。
最後は、ゴールポスト下でのラックからボールを持ち出した川合が、ラックの上を鮮やかにジャンプで飛び越えてトライ。21-12とリードを広げ、前半を終えた。
雨がぱらつき始めた中での後半。序盤は中央から攻撃を仕掛けながらも、互いにペナルティでマイボールをキープできない時間が続く。
9分には明大がアタックのテンポを上げてゴール前へ。ゴールラインの手前で、近場を突くプレーを継続されるが、慶大の低いタックルがプレッシャーを与え、ここはなんとか凌いで陣地を回復した。
しかし、後半最初のトライは明大。相手ボールスクラムから素早く展開され、最後は相手WTB(ウィング)にインゴールを割られる。
さらに28分、相手ボールを継続されると、左サイドへのカットパスに対応が間に合わず失点。残り少ない時間となる中で、この日初めて明大にリードを許す。
3点差を追いかける慶大に残された時間は約10分。「自分たちのアタックやディフェンスをすればできる」(古田)と逆転を虎視眈々と狙っていた。
終了も近づく中で光ったのは、慶大のブレイクダウンでのプレッシャーだった。相手のミスを誘発すると、敵陣5mライン付近でマイボールスクラムを獲得。
このスクラムでマイボールをキープすると、NO8(ナンバーエイト)山中侃(商4・慶應)が直接自分で持ち出してショートサイドへ。
それに反応した相手FWを1人はがすと、さらに待ち構えていた相手ディフェンスに掴まれながらも、楕円球をインゴールへ叩きつけた。山中の値千金のトライで慶大は逆転に成功し、秩父宮が湧いた。
残りのわずかな時間も、マイボールを継続させ相手にボールを渡さず。最後は古田がタッチへ蹴りだして、ノーサイド。伝統の一戦は、慶大に軍配が上がった。
前半はセットプレーで苦しんだ。特にスクラムでは明大が誇る重量級FWを前になすすべなく、マイボールも簡単に奪われてしまった。しかし、ブレイクダウンでは慶大のプレッシャーが勝り、明大のペナルティを次々と誘発。
マイボールを失っても、流れを完全に相手に渡すことはなかった。また、後半に投入されたHO(フッカー)安田裕貴(政3・慶應)、PR(プロップ)大山祥平(経2・慶應)の両フロントローがスクラムでの流れを変えた。
疲れが溜まってきた終盤に最大限の力を発揮し、ターンオーバーを許さず。最後の逆転トライにも結びつける大きな役割を果たした。 ビッグゲームと位置付けたうちの1戦を勝ちきり、チームとしての完成度も徐々に高まってきた。そして次に控えるのは、いよいよ早慶戦。
対抗戦においては、ここ7年間勝利がない相手だが、今春の招待試合では31-29で接戦をものにしている。しかし、もちろんライバルを侮ることはできない。
この日、帝京大学を相手に初黒星を喫したものの、慶大と同じく4勝1敗。FW、BK(バックス)共に経験豊富な選手が揃い、多彩なアタックを仕掛けてくる。また、ディフェンス面でも穴は少なく、簡単にトライを奪うことは難しそうだ。
だが、この日のような粘り強い戦いができれば、8年ぶりの早慶戦勝利も見えてくるだろう。黒黄軍団のその眼には、赤黒の壁を打ち破る瞬間がもうはっきりと見えている。
文:重川航太朗/写真:川下侑美、田中壱規(慶應スポーツ)
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慶應義塾大学文化団体連盟所属の公認サークル。通称ケイスポ。全40ある体育会の取材から記事の執筆、年7回の新聞製作まで全て学生の手で行う塾内唯一のスポーツ新聞サークル。部員数約50名、35年の歴史を持つ。»慶應スポーツWebサイト
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