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冬季五輪が終幕。
日本選手団が続々と帰国していますね。
マスメディアで報じられた競技を終えた選手のコメントを見聞きしたとき、やはりそうだったのかと思ったことがありました。
「無事に生きて帰ってこれてよかった。生きるか死ぬかの戦いでした」
これはスノーボード・ハーフパイプの平野歩夢選手のコメントだ。このコメントを聞き、彼がどれほどの覚悟で滑っていたのかを改めて感じた。
レジャーではなくて競技として世界のトップを目指すアスリートたちには、大きなケガだけではなくて、命に関わるリスクがある。平野選手は、オリンピック直前にケガしていて出場が危ぶまれていたという。コメントの合間に笑顔を見せてはいたけれど、ケガが完治していない状況、そのリスクを頭から消して競技に向かっていたとコメントしていた。
ダウンヒル競技では150キロぐらいまで速度が上がっていると聞いた。また前述のハーフパイプでは速度だけではなく、回転が決まるどうかで危うい場面が発生することもある。
そんなシーンをテレビ観戦していて、思い出したことがある。日本を代表するレーシングドライバーの一人、高橋健二さん(2005年逝去)が現役当時に言っていたことが忘れられない。
当時、健二さんは東京の自宅から鈴鹿サーキットまで、自らハンドルを握り移動していた。
その時、行き道で名古屋を過ぎて木曽川を渡る橋の上でいつもお願いすることがあったという。
「レースが終わって、生きてこの橋を渡って帰らせてくれ」
そういつも願っていたのだとお酒の席でぽつりと語ってくれた。
速さを競うモータースポーツと速さと技を競うウインタースポーツ。共に蛮勇を競うものではないのはあたり前だ。しかし、勝つためにはリスクを背負わなくてはならない時もある。健二さんの現役時代と比べ、現在のモータースポーツの安全性は競技の場も車両も進歩を遂げ、高くなっている。しかし、危険が全くないとは言えない。自分のスキルを超えてしまったり、状況がいきなり変わってしまったりした瞬間にアクシデントが起こる。モータースポーツでは、予期せぬアクシデントに巻き込まれることがあるのだ。
レーシングドライバーでなくとも、人は「速さ」に対する本能的な憧れを抱いているものだ。そして、「速さ」を擬似的に体験させてくれるモータースポーツ観戦の魅力は、多くのファンを楽しませてくれる。
本来、危険を伴う行為をいかに安全に成し遂げるか。その挑戦には人間の理知と知性、そしてそれらを行動に結実させる能力が高いレベルで凝縮されていなければならない。我々が観ることができているモータースポーツイベントのバックグラウンドには、こうした高いレベルの能力があることは忘れてはならない。
文:高橋 二朗
高橋 二朗
日本モータースポーツ記者会。 Autosport誌(英)日本特約ライターでもあり、国内外で精力的に取材活動をするモータースポーツジャーナリストの第一人者。1983年からルマン24時間レースを取材。1989年にはインディー500マイルレースで東洋人としては初めてピットリポートを現地から衛星生中継した。J SPORTSで放送のSUPER GTのピットレポーターおよび、GTトークバラエティ「GTV」のメインMCをつとめる。
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