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モーター スポーツ コラム 2025年6月14日

【ル・マン直前プレビュー】J・バトン、V・ロッシに優勝のチャンスあり?トヨタは予選で苦戦

モータースポーツコラム by 辻野 ヒロシ
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12号車 CADILLAC HERTZ TEAM JOTA

ポールを獲得した12号車 CADILLAC HERTZ TEAM JOTA

2025年6月14日(土)〜15日(日)に「第93回ル・マン24時間レース」が開催。フランスの現地時間6月14日(土)午後4時に14社の自動車ブランドによる62台参加のレースがいよいよスタートを切ります。今回はその直前レースプレビューをお届けしましょう。

今年はル・マンの予選方式が変わりました。まず6月11日(水)に「予選」が実施され、HYPERCARクラスでは上位15台が「ハイパーポール1」に進出。そこから上位10台に絞られ「ハイパーポール2」でポールポジションを争う方式です。LMP2とLMGT3はHYPERCARとは別のセグメントで行われることになり、ル・マンのハイパーポール予選で度々見られたクラス間の速度差やアタックのタイミングによるトラフィックの問題が解消されました。

新しい予選方式で見事にHYPERCARクラスの1-2となったのがキャデラックです。テストデーでは上位に名を連ねず、今季はまだ一度も表彰台がないキャデラックのフロントロー独占は驚きました。今年のキャデラックはチームの運営を米国のチップガナッシからFIA WECのポルシェのプライベーターとして活躍したチーム・ジョタに変更。新体制で挑むル・マンとなりましたが、まずは予選で最高の結果を見せました。

2番手スタートのキャデラック38号車には元F1ワールドチャンピオンのジェンソン・バトンが乗ります。この視界良好なポジションからのスタートはバトンにとって夢のル・マン総合優勝に期待が膨らみます。チームメイトのアール・バンバーは元ル・マンウイナーであり、セバスチャン・ブルデーも複数回の表彰台はもちろんクラス優勝の経験者。このチームはビッグネーム揃いです。日本のレース文化に慣れていないとタイトル獲得は難しいと言われたSUPER GTでも成功したバトンですから、きっとル・マンでもその花が開くのではないかと期待しています。

「TS020」をモチーフにした赤と白のカラーリングの7号車

「TS020」をモチーフにした赤と白のカラーリングの7号車

一方、日本期待のトヨタは7号車(コンウェイ/小林/デフリース)が予選でアタックして逆転できるタイミングを逃し、予選16位で敗退。テストデーをトップタイムで終えた8号車(ブエミ/ハートレー/平川)はハイパーポール2まで勝ち上がりポールポジションを狙いますが、コースアウトを喫してしまいノータイムで10位という結果になりました。フロントローからは遠い、隊列中段からのスタートになってしまったのは痛い。スタート直後に発生しやすい多重クラッシュに警戒せねばなりません。

テストデーを前にBoP(性能調整)では優遇を受けているだけに、日本のトヨタには頑張って欲しいですね。HYPERCARクラスではトヨタ、フェラーリ、ポルシェに加え、アルピーヌ、BMWも戦闘力の高さを見せています。

長い24時間のレースを考えれば予選の順位なんて関係がない。現在のル・マンではそれは当たっているようで当たっていないというのが現実です。レースの中で幸運が何度も巡ってくるわけではないので、早い段階で主導権を握る立場にならなければ、常にリスクを背負わなければならないレースになってしまいます。

ただ、ブロンズドライバー(ジェントルマンドライバーなど)が乗らなければならない「LMGT3」クラスではドライバーの頑張り次第と幸運の積み重ねで上位進出を狙える可能性はあります。木村武史が乗るケッセルレーシングのフェラーリ296GT3は予選15位でハイパーポール進出はなりませんでしたが、佐藤万璃音が乗るユナイテッドオートスポーツのマクラーレン720Sは予選をギリギリの12位で通過してハイパーポール進出。勝ち上がってクラス7位のポジションを確保しました。

「LMGT3」クラスは各車種の勢力図が入り乱れあう大混戦状態で、どこが優勢かというのが分かりづらいです。そんな中、2輪レースファンで最近FIA WECも見ているよという方には朗報。ズバリ、元2輪の世界王者、バレンティーノ・ロッシが乗る46号車のBMW M4 GT3は充分に勝つチャンスがあります。

驚異的な速さを披露した元2輪の世界王者バレンティーノ・ロッシ

驚異的な速さを披露した元2輪の世界王者バレンティーノ・ロッシ

46号車はテストデーでトップタイムをマーク。さらにブロンズドライバーのアハマド・アルハーティが予選でトップタイムをマークし、ハイパーポールに進出。ハイパーポール1ではプラチナドライバーのケルビン・バン・デル・リンデがトップでハイパーポール2へ。そして、ハイパーポール2ではシルバードライバーのバレンティーノ・ロッシがアタックするもポールは逃して3位でしたが、同じセッションを走ったリヒャルト・リエツ(ポルシェ)、マキシム・マルタン(メルセデス/元チームメイト)ら凄腕プラチナGTドライバーたちよりも速いタイムをマークしました。これは驚愕ですよ。近年は2輪から転向してここまでやれた人はなかなか居ませんからね。

とにかく46号車のBMWは3人ともが速いのです。ブロンズドライバーではトップのアルハーティから最後尾まで1周で5秒くらいの差ができていますから、バン・デル・リンデに加えてロッシがプラチナドライバー並みの速さで走れるのは大きなアドバンテージです。

これはHYPERCARで元F1ワールドチャンピオンのバトンが、LMGT3で元MotoGPワールドチャンピオンのロッシが、ル・マンで同時に勝つシーンが見られるかもしれませんね。昔こういった選手が好きでモータースポーツを見ていたなぁっていうファンの方も今年はめちゃくちゃチャンスなので、ぜひ注目して24時間楽しんでくださいね。

文:辻野ヒロシ

辻野 ヒロシ

辻野 ヒロシ

1976年 鈴鹿市出身。アメリカ留学後、ラジオDJとして2002年より京都、大阪、名古屋などで活動。並行して2004年から鈴鹿サーキットで場内実況のレースアナウンサーに。
以後、テレビ中継のアナウンサーやリポーターとしても活動し、現在は鈴鹿サーキットの7割以上のレースイベントで実況、MCを行う。ジャーナリストとしてもWEB媒体を中心に執筆。海外のF1グランプリやマカオF3など海外取材も行っている。

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